執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
執筆日時 2023年3月17日 16時30分
割と近い水準に各々抵抗帯、突破できれば上値広がる
3月13日週のユーロ/円とポンド/円は急落
信用収縮懸念が重しになりました。米シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻のほか、金融大手のクレディ・スイスの経営不安などが嫌気されて為替相場では欧州通貨売り・円買いが強まりました。ユーロ/円は144.959円を頭に139.116円まで下落し、ポンド/円も164.129円をトップに158.557円まで値を下げました。ただ、スイス国立銀行がクレディ・スイスへ最大500億スイスフラン(約7兆円)を貸出すとしたほか、ECBが0.5%利上げを実施すると、市場のリスク回避ムードが和らぎ売り一巡後は下げ渋りました。(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。

外為どっとコム総合研究所のTEAMハロンズ(@TeamHallons) が、平日21時より配信するFXライブ番組
FX ライブ配信、欧米金融不安は「沈静化」or「小康状態」、ECBリアルタイム取引&解説 (2023年3月16日)- YouTube
ユーロ、利上げの道筋はファンダメンタルズへ
ECB理事会直前に信用収縮問題で、ECBの利上げ幅が0.25%に留まるとの見方が強まっていたものの、理事会では当初の見通し通り主要政策金利を0.5%利上げしました。会見に臨んだラガルドECB総裁は「インフレとの戦いへのコミットメントは緩めていない」として、インフレ抑制に注力する姿勢を改めて示しました。もっとも、声明文では「5月以降はファンダメンタルズ次第」としていた2月理事会での発言内容に沿って、12月・2月にはあった次回会合に向けた利上げのガイダンスの文言が削除されました。利上げの道筋を巡っては、より今後の経済指標の結果への着目度が高まったことになります。3月21日(火)の3月ZEW景況感調査、3月23日(木)のユーロ圏3月消費者信頼感・速報値、3月24日(金)のユーロ3月製造業・サービス業PMI速報値などを確認しながら、5月会合に向けた引き締めペースを織り込んでいくことになるでしょう。ただ、一連のシステム不安が完全に払しょくされていないため、好調なファンダメンタルズへの反応は控えめとなりそうで、上値は抑制されやすいと考えます。
英中銀、利上げ停止観測強まるか注目
3月23日(木)英中銀金融政策委員会(MPC)の結果が公表されます。ハント英財務相は15日に予算演説を行い、英経済は今年マイナス成長に陥るものの、リセッション入りは回避できるとの見通しを示しました。また、インフレ見通しについても今年末予想を2.9%と、昨年10-12月期の10.7%から大きく下方修正しています。経済見通しの改善で、英中銀は大幅利上げを回避できる可能性が出始めてきた様子で、今回のMPCでは0.25%利上げ見通しが優勢になっています。経済見通しが改善される中でポンドは底堅さが増しそうです。ただ、インフレ見通しの低さを受けて、利上げサイクル停止を強調する声明文が出てくるようなら、単純に”停止”の部分に反応する形で短期的に下押し圧力が高まる可能性はあります。そうした場面では押し目買いが有効かもしれません。また、3月22日(水)の2月消費者物価指数(CPI)が、翌日の英中銀イベントに対してタカ派ムードを高めるのか、それともハト派ムードを強めるのかも注目されます。
ユーロ/円、節目は142.30円付近
ユーロ/円は、短期上昇チャネルの下限を割り込み、139.116円まで下げ幅を広げたものの、同水準からはチャネルの下限付近まで戻しています。日足一目均衡表・転換線と同基準線が推移する142.30円付近を突破できるかどうかが目先、注目されそうです。ここを抜けられれば、144.000円程度までの買い戻しが期待される一方、突破に失敗すれば139.000円割れトライの雰囲気を高めるのではないでしょうか。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:139.000-144.000
ポンド/円、163.300円突破が短期の見る方向見る分かれ目
ポンド/円は、一目雲の下限で踏み止まった形となっており、158円台での底堅さを確かめた感じで、目先は戻りを試す展開が見通せます。200日移動平均線や2月28日高値(166.003円)から3月16日安値(158.557円)の下落幅の61.8%戻し水準である163.300円付近が抵抗帯となりそうで、ここを抜けきれるかどうかがポンド/円上昇の分岐点になりそうです。
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:160.000-166.000
3/20 週のイベント
3/20(月) 16:00 ドイツ 2月生産者物価指数(PPI)
3/20(月) - ユーロ ラガルドECB総裁、議会証言
3/21(火) 19:00 ドイツ 3月ZEW景況感調査
3/21(火) 19:00 ユーロ 3月ZEW景況感調査
3/21(火) 19:00 ユーロ 1月建設支出
3/21(火) 21:30 ユーロ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、発言
3/22(水) 16:00 イギリス 2月消費者物価指数(CPI)
3/22(水) 17:45 ユーロ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、発言
3/23(木)- 3/24(金) EU首脳会議
3/23(木) 21:00 イギリス イングランド銀行(BOE、英中央銀行)金利発表
3/23(木) 24:00 ユーロ 3月消費者信頼感(速報値)
3/24(金) 9:01 イギリス 3月GFK消費者信頼感調査
3/24(金) 16:00 イギリス 2月小売売上高
3/24(金) 18:00 ユーロ 3月製造業購買担当者景気指数(PMI、速報値)
3/24(金) 18:00 ユーロ 3月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、速報値)
3/24(金) 18:30 イギリス 3月製造業購買担当者景気指数(PMI、速報値)
3/24(金) 18:30 イギリス 3月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、速報値)
一言コメント
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今週の為替予想 ポンド 円
基本的な考え方は、・ファンダメンタルズ面では、日英金利差は、更に拡大する可能性が高く、この点ではポンド買いが示唆されますが、ただ、英国の景気が、はっきりとスタフグレーション状態を示す場合は注意しましょう。・テクニカル面では、ポンドドルのモメンタムは買い、ドル円は売りとなっていることで、ポンド円自体は中立的で、大きな方向感とならない可能性があることは注意しましょう。
ポンド円の本日のサポレジ予想をいたします。このポンド円のサポレジ予想がお役に立てれば幸いです。
これをユーロ/円、英ポンド/円に当てはめると、2023年の予想レンジはユーロ/円は135~155円。英ポンド/円は、2022年9月に財政赤字への懸念による「トラス・ショック」が起こったように乱高下のリスクもあることから、150~180円で想定したい。
2022年のポンド円相場は、円安が下値を支えるも、英国の政治や経済の問題、英中銀のインフレ対応が出遅れ気味となったことで、高値圏を維持するも上下に荒れた展開に終始しました。
年初はNY株が史上高値を更新するなどリスクオン・ムードでスタートしましたが、突然ともいえるロシアのウクライナ侵攻が、大きなショックを巻き起こし、西側先進諸国がロシアに対する経済制裁を次々と実施しました。結果、大口の資源供給国であるロシアからの供給が滞るとの見方で原油や天然ガス価格が高騰、英国でも物価上昇が顕著となったことで、英中銀が利上げを継続的に実施しました。ただ、英中銀の利上げによって、英経済がスタフグレーションに陥るとの見方が強く、ポンド円相場は150.98まで一時売りに押されました。しかし、その後3月にFOMCがゼロ金利政策を解除し、2018年12月以来の利上げスタンスに突入したことを受けて、ドル円相場が130円台まで急上昇し、ポンド円も168.44まで上昇しました。その後、英統一選挙で保守党が大幅に議席を失ったことで、155.59まで下落しました。また安倍首相の襲撃事件を受けて、一時的なリスクオフの動きもあって、夏場は揉み合い気味の展開に留まりました。
3月23日(木)英中銀金融政策委員会(MPC)の結果が公表されます。ハント英財務相は15日に予算演説を行い、英経済は今年マイナス成長に陥るものの、リセッション入りは回避できるとの見通しを示しました。また、インフレ見通しについても今年末予想を2.9%と、昨年10-12月期の10.7%から大きく下方修正しています。経済見通しの改善で、英中銀は大幅利上げを回避できる可能性が出始めてきた様子で、今回のMPCでは0.25%利上げ見通しが優勢になっています。経済見通しが改善される中でポンドは底堅さが増しそうです。ただ、インフレ見通しの低さを受けて、利上げサイクル停止を強調する声明文が出てくるようなら、単純に”停止”の部分に反応する形で短期的に下押し圧力が高まる可能性はあります。そうした場面では押し目買いが有効かもしれません。また、3月22日(水)の2月消費者物価指数(CPI)が、翌日の英中銀イベントに対してタカ派ムードを高めるのか、それともハト派ムードを強めるのかも注目されます。
ユーロ/円は、短期上昇チャネルの下限を割り込み、139.116円まで下げ幅を広げたものの、同水準からはチャネルの下限付近まで戻しています。日足一目均衡表・転換線と同基準線が推移する142.30円付近を突破できるかどうかが目先、注目されそうです。ここを抜けられれば、144.000円程度までの買い戻しが期待される一方、突破に失敗すれば139.000円割れトライの雰囲気を高めるのではないでしょうか。
ポンド/円の取引を始める前にまだ気になることがあるんだよね…。
リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2022年は、米国の中間選挙を始め、欧州や日本の選挙、中国の共産党大会など大きなイベントがありましたが、2023年は材料の少ない年となりそうです。ウクライナ情勢を除くと、英国に関しては、特別なことはありませんが、今年は政治で相場が荒れたこともあって、スナク政権の景気対策と英中銀のインフレ退治が功を奏すのかが大きな焦点となります。また、スタージョ・ン・スコットランド首相が、2023年10月に、スコットランド独立を問う2度目の住民投票を実施すると表明していましたが、イギリスの最高裁判所が、「北部スコットランドの自治政府がイギリス政府の同意を得ずに独立の是非を問う住民投票は実施できない」との判断を下しており、実施は難しくなっています。ただ、スタージョン首相は「スコットランドの人々が意思を表明できる民主的な別の手段を見つけなければならない」と述べていて、引き続き独立の道を模索する考えを示しています。2023年は難しいとしても、一応この問題が度々市場の話題となる可能性は残っていることは注意しておきましょう。 その他これは余談ですが、一部に年後半に、「ブレグジットの再投票」が実施されるとの噂が出ているようです。信憑性は薄いと思いますが、EUに復帰を望む声が残っているようで、もしこれが実現身を帯びて来るようなことがあれば、またポンド相場が大波乱となることは、留意しておきましょう。
ポンド/円は、一目雲の下限で踏み止まった形となっており、158円台での底堅さを確かめた感じで、目先は戻りを試す展開が見通せます。200日移動平均線や2月28日高値(166.003円)から3月16日安値(158.557円)の下落幅の61.8%戻し水準である163.300円付近が抵抗帯となりそうで、ここを抜けきれるかどうかがポンド/円上昇の分岐点になりそうです。
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クロス円は、2023年も基本的には米ドル/円の影響が大きい展開が続くと考えている。その米ドル/円は、12月1日付けのレポート「2023年の米ドル/円を予想する」で書いたように、歴史的な米ドル高・円安が終わっても、一方で米金利低下が当面は限られることから、米ドル安・円高も130円を大きく割れる可能性は低いと考えられる。
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それでは、最後にポンド円の月足を見てみましょう。118.85や116.85の安値から195.89まで上昇も、これをトップに再度124.85や126.52で下値を支えている展開です。総じてこの195.89を高値(B)として、118.85-116.85と163.09-156.76(A)で形成した右肩と124.85-126.52と156.62-158.23(C)で形成した左肩での一種のH&Sの形と見えます。
それでは、ポンドドルとドル円の想定レンジから作成したマトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)を見てみましょう。 ポンドドルの想定レンジを1.1300~1.2800、ドル円を126.00~140.00としましたので、これから算出されたポンド円相場の最大想定レンジは144.64から176.64となります。ただ、少し広すぎることもあって、150.61から170.22が適当水準とします。
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