そごう・西武の売却については?
仮にヨドバシHDが西武池袋本店にヨドバシカメラを出店できたにしても、次は西武渋谷店やそごう横浜店の案件が待ち受ける。渋谷は若者の街という性格が強く、東急百貨店本店の閉店に見られるように百貨店離れが顕著だ。しかし、残る西武渋谷店の主要フロアに家電量販店を出店したからと、すぐにお客が付くかどうかはわからない。
セブン&アイ・ホールディングスが売却を発表した百貨店そごう・西武は、広島市中心部にそごう広島店(中区)を構える。広島店の今後に言及はなく、どうなるのか関心が集まる。専門家には「店は残るが姿は変わる」との見方が目立つ。
ヨドバシHDがそごう・西武を買収する以上、各百貨店の主要フロアに家電量販店、残りはヨドバシと親和性があるテナントを集積する方向でいくと思う。「ヨドバシ百貨店」となると、そごう・西武が抱える外商客を繋ぎ止めるのは難しく、新富裕層と呼ばれる新たな客層へのアプローチも滞る。百貨店事業が崩壊する可能性もあるのだ。
そごう・西武の売却に関して言えば、当初2月1日だった譲渡契約の実行日を既に1度延期している。目下、「3月中」の完了を目指して各方面の関係者と交渉を続けているものの、事態は好転するどころかより混沌としてきている。
ヨドバシカメラは本流を貫くことしかできないだろうし、同店のターゲットも洗練されたテナントや商品を望んでいるわけではない。なおさら、そごう・西武の地方店では、主要フロアを家電量販店に押さえられると、百貨店向けのブランドは撤退していくと思われる。だが、ヨドバシ博多を見れば、新たに残りのフロアを埋めるだけのテナントが集まるとは考えにくい。百貨店の再生と従業員の雇用が継続されることに暗雲が漂う。
そうした影響も多少はあったようで、池袋本店がそごう・西武の旗艦店であることから、当事者の間で売場構成などの調整が難航しているという。確かにそごう・西武側とすれば、池袋本店は売上高が全国百貨店で第3位(1540億円/2021年度)を誇る優良店だから、できれば百貨店のまま維持したいところ。1〜2階で展開するルイ・ヴィトンやエルメス、ティファニーをはじめ、ブランド化粧品なども顧客がついているので、現在地に売場を残したい意向が強いはず。上層階に移るくらいなら、撤退はやむ無しとなるだろう。
そんな状況下で、ヨドバシHDが地方百貨店の立地で新たに顧客を生み出し維持していくことができるかと言えば、全く不透明である。そごう・西武の売却問題は落とし所は簡単に答えが出るはずもなく、これから難局が待ち受けていると言っても過言ではない。
そごう・西武は2020年2月期から3年連続で純損益が赤字で「一般論として拠点閉鎖や従業員解雇が必要。しがらみのないファンドが着手する可能性はある」と指摘。同時に「セブンも雇用維持を第一に交渉したはずで、ヨドバシ側での従業員受け入れも検討されているのではないか」との見方を示した。
中でも落としどころが見付からず、契約実行の最大のネックとなっているのが、そごう・西武の旗艦店である西武池袋本店の改装案だ。
そごう・西武の売却については?
西武池袋本店は今後、フォートレスが「ビジネスパートナー」と称して手を組むヨドバシホールディングス(HD)傘下のヨドバシカメラが不動産を取得し、「最高立地」で独自にビジネスを展開する予定だ(『【スクープ】セブン&アイのそごう・西武「売却スキーム」判明!ヨドバシ入居の調整難航で株式譲渡延期か』参照)。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)が傘下の百貨店、そごう・西武を米ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却すると発表して2ヶ月が過ぎたが、俄に雲行きが怪しくなってきた。セブン&アイは1月24日、両百貨店の売却を2月から3月中に延期すると発表したが、その後も状況に対する進展はない。
セブン&アイ・ホールディングスの株主総会は井阪隆一社長の続投で決着したが、傘下の百貨店、そごう・西武の売却問題は懸案として残る。当初2月1日を予定した売却時期は2度の先延ばしを経て「無期限延期」が発表され、実施の目途が立たない。家電量販店大手のヨドバシホールディングスが主力の西武池袋本店に出店する計画などを巡って調整が難航し、一部では「仕切り直すべきだ」という声すら上がっている。
もっとも、セブン&アイ側が売却の俎上にあげたのは、そごう・西武の全店舗だ。さらに従業員の雇用をどうするかの問題もある。ヨドバシHDが最初に池袋本店に触手を伸ばしたのは立地の魅力があるからだが、池袋本店にこだわり過ぎて他店が蚊帳の外にあるようでは調整をさらに難しくしてしまう。
そごう横浜店は都市高速を挟んだ海側に立地し、JR横浜駅とは直結してない。西武池袋本店のような客動線が見えづらいのだ。また、駅の西側にはヨドバシ・マルチメディア横浜がある。そごう横浜店にヨドバシカメラが出店すれば1エリア2館体制となり、棲み分けをどうするかの問題も浮上する。仮に低層階に家電量販店、上層階にテナントを配置した複合店舗にした場合、駅に直結していないことが集客面で不利にならないのかが懸念される。
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