【外為マーケットビュー】
動画配信期間:2023/5/26~2023/6/9
目次
0:00 前回収録(5/19)以降の振り返り:ドル強い、ドル/円140円台乗せ
1:18 植田日銀総裁がYCCについて語るも…市場の反応は限定的
3:28 米2年・10年・30年長期金利:ドル強い背景は「米金利の上昇」、米地銀経営破たんで金利低下するも…事実上の金融緩和となり米景気を刺激してしまう
6:28 米金利上昇のもう一つの背景は「英国」、ただし現局面での英長期金利の上昇はポンドのネガティブ要因
7:30 英10年債利回り トラス前政権時に急騰した4.6%台に接近
8:26 英30年債利回り 一段の金利上昇に警戒
8:48 ポンド/ドル日足 ダイバージェンス&ライン割れ、1.18ドルレベルで下げ止まらない場合は注意
10:04 ドルインデックス日足 100.8割れでドル一段安を予想するも、見事にリバウンド
11:23 本日(5/26)は米4月PCEデフレーターに注意
11:58 FRB内部でのパウエル議長のリーダーシップが失われている恐れ
12:53 米PCEデフレーター以外では、米5月ミシガン大学消費者態度指数・確報値の「期待インフレ率」にも注目
月曜から金曜までの毎営業日、外為市場に長年携わってきた5人のコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。

志摩力男 氏
慶應義塾経済学部卒。1988年ー1995年ゴールドマン・サックス、2006-2008年ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダーを歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。独立した後も、世界各地の有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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ドル円相場では円安・ドル高が進みやすいと言えます
その場合、日米長期金利差の縮小と米国および世界経済悪化観測を受けたリスク回避傾向の高まりが重なる形で、円が急速に巻き戻される局面へと転じることが予想される。来年にかけては、140円台まで円安が進んだドル円レートが、一気に110円~120円まで巻き戻される、という劇的な展開も想定しておく必要があるのではないか。
実際、年初からのドル円レートの推移は、米国10年国債利回りの推移と連動していた(図表1)。日本銀行のイールドカーブ・コントロールのもとで、日本の10年国債利回りの変化幅はかなり小さいことから、米国10年国債利回りの水準が日米間での10年国債利回り格差を決めることになる。
1ドル139円台まで進んだドル円レートは、足元で138円台前半まで戻している。再度円安傾向が強まる可能性は残るとしても、概ね140円前後が円安のピークとなる可能性を見ておきたい。仮にさらに円安が進むとしても、140円台前半のレンジまで見ておけば十分なのではないかと思われる。
日米金利差の変化(観測)は、しばしばドル円レートを動かす大きな要因となってきた。しかし、どのゾーンの金利差が大きな影響を及ぼすのかは、常に変化する。近年は短期金利差よりも長期金利差の方が、ドル円レートへの影響力が大きかった印象である。
なぜ、米国10年国債利回りとドル円レートの関係が突然崩れたのか、その理由は明らかでない。冒頭で述べたように、為替を動かす主な要因は、前触れもなく突然入れ替わるのである。
ドル円レートは150円まで進むとの見方もあるが、そこまで円安が進むためには、図表1、図表2で示唆される2年国債利回り、10年国債利回りが4%半ば近くまで上昇することが必要となる。それは4月のピークを1%近くも上回る水準だ。既に米国の景気悪化観測、来年の利下げ観測が市場に織り込まれる中、予想外の物価高を確認しても、その水準まで利回りが上昇する可能性は低いのではないか。
ところが、4月下旬に米国10年国債利回りが一時3.5%まで急激に上昇した時期を境に、米国10年国債利回りとドル円レートの関係は薄れていく。先行きの経済の悪化観測、来年の利下げ観測などを背景に、米国10年国債利回りは3.5%から再び3%程度まで下落した。それ以前の関係が維持されていれば、ドル円レートは130円程度にまで戻っているはずだが、実際には139円まで円安が進んだのである。
利上げは、基本的には景気の強さを示し、金利面での投資魅力拡大につながりやすくなるため、一般的に為替市場では「利上げ=通貨高」のシナリオが意識されやすくなります。ドル円相場では円安・ドル高が進みやすいと言えます。
しかし、今回は景気拡大の持続性に一抹の不安もある中で、インフレ退治を理由に大胆な米利上げが実施されるようだと、米景気への先行き懸念が台頭する可能性も否定できず、それがドル円相場の波乱要因になるかもしれません。米利上げの幅やペースがどのように進むかが、為替(ドル円)相場の行方を決定付けるポイントの1つになりそうです。
この期間(15年12月~18年12月)のドル円相場(月末終値ベース)は、1ドル=120円台から円高・ドル安が進行し16年には100円前後まで円高が進む場面もありました。利上げを停止した時点でも109円台で開始時点よりも円高水準になりました。
他方、その後のドル円レートは、米国2年国債利回りとの関係を強めたように見える。この点から、この先どの程度円安が進む余地があるかは、当面の金融政策の影響を大きく受ける2年国債利回りなど、より短い利回りの動向に左右される、と推察できる(図表2)。
米国の利回りとの関係で見る限り、ドル円レート150円は容易に見えてこないのである。
仮に2年国債利回りが4月のピークである3.4%程度まで上昇するとしても、図表2で示唆されるドル円レートは140円強である。
最後に、過去の直近2度の米利上げ局面(2004年6月~06年6月と15年12月~18年12月)におけるドル円相場はどうなったのか見ておきましょう。
この期間のドル円相場(月末終値ベース)は2004年6月の1ドル=108円台から一時は102円台まで円高・ドル安が進みましたが、その後は緩やかにドル買いが優勢となり、05年11月には120円近辺まで円安・ドル高が進む場面もありました。利上げが打ち止めとなった06年6月は114円台でした。この期間は一般的な為替のセオリーとされる「利上げ=通貨高」の関係が成り立ったと言えます。
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