育休社員同僚に手当 企業に助成へ
「育休中の業務の引き継ぎ相手を探すより、育休を取得しないで自分がそのまま働いた方が楽だと思っていました。でも『育休職場応援手当』の導入が決まり、業務の引き継ぎを同僚に依頼しやすくなりました」 「育休取得者に対して、より心置きなく仕事を休んでほしいという気持ちになります」 など前向きなコメントがたくさん集まりました。
でも産む側への支援だけに偏ると、支える側は「自分たちのことも考えてよ」と思うのが自然ですし、それによって育休取得者への風当たりが強くなったりしたら本末転倒です。
育休を取ることに負い目を感じるママと、業務の穴埋めに不平等さを感じてしまう周りの同僚たち。 そんな育休にまつわる職場のモヤモヤに光を当てたのが、今年の春にネットニュースを賑わせた三井住友海上火災保険の「育休取得者の同僚に最大10万円を給付する」という『育休職場応援手当(祝い金)』制度です。
「現代の女性の産後うつが大問題だと感じた舩曵は、男性がもっと育児をしなくてはいけないと強く思ったそうです。そこで出された号令が“男性社員は子供が1歳になるまでに1ヶ月連続して育休を取ること。それは大変な時期である産後の早い段階で取るべし”というものでした」
――三井住友海上火災保険の『育休職場応援手当(祝い金)』より前の2021年、男性社員の1ヶ月育休取得を義務付けたことから伺います。これは舩曵真一郎社長のトップダウンから生まれたそうですね。
弊社の産前産後休暇は計16週、約3.7カ月なので、育休を取得しない女性社員の同僚も3カ月以上の高い方の金額での支給の対象になります。
育休を取る側も、サポートする側も、心地よく働くためにできること。その課題に向き合った同社の人事部主席スペシャリスト(主席HRストラテジスト)・丸山剛弘さんにお話を伺いました。
また、女性社員でも「キャリアの断絶を防ぐために、産休が明けたらすぐに職場復帰したい」と希望する人はいるので、育休取得日数がゼロの場合は同僚への手当が減額されるとなると、早期復帰への意欲がそがれてしまう問題もあります。
企業の子育て支援策というと、どうしても育児中の社員への支援を手厚くするという発想になりがちです。
「出産予定日の2ヶ月前に“育休の計画書”というものを職場で作って業務を明確化しました。誰に分担するか、後回しにできるものはあるか…などを話し合う職場ミーティングをルールにしたんです。 すると、実は不要だけどやっていたことも浮き彫りに。育休取得者が出るたび、業務の棚卸ができるという思わぬプラスの効果がありました。 また、いつ誰が欠けても職場がまわるように手順書やマニュアルの整備にも力を注いでいます。絶対に1ヶ月休まなきゃいけないと決まれば、人も組織も成長することを実感しました」
男性社員の育休取得を推進すること、育休を長期で取得する女性社員が気兼ねなく休めること、育休を取らずに復帰したい女性にも、その同僚にも不利益がないこと。
制度について社員の方々にインタビューしたところ「『育休職場応援手当』は、私が不在の間に負担をかけてしまう同僚に向けて、金銭的に感謝の気持ちを示せる有り難い制度です。申し訳なさや罪悪感が一切無くなるということは当然ありませんが、職場への見返りが何も無いよりも、気持ちの負担は軽減されました。もともと産育休に協力的な職場ですが、取得する側としては、産休に入るまでの引き継ぎ作業を一層しっかり取り組もうと改めて思いました」
男性社員からも「安心して育休を取れる」との声を聞いています。職場をまとめる管理職からは、「同僚に手当が支給されることで、『自分も積極的に協力しよう』というモチベーションが生まれ、チームワークも強化されるのでは」との期待の声も聞かれました。
3カ月なら男性社員も手が届きやすいので、現状より長く育休を取得するケースが増えることも期待できますしね。
三井住友海上火災保険は4月から、育休を取得した社員の同僚に最大10万円の一時金「育休職場応援手当」の支給を始める。職場全体で育休が快く受け入れられる環境を整備し、少子化対策に貢献する狙いがある。
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