執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
目次
執筆日時 2023年9月1日 14時40分
次なる方向性指し示すか、チャートはダブルトップ示唆
8月28日週の米ドル/円は高値圏で不安定
米ジャクソンホール会議を無難に通過して、これまで通り米金利高、円安方向にバイアスが傾き、米ドル/円は147.366円まで年初来高値を更新しました。その後発表された米経済指標がことごとく市場予想を下回るさえない結果となったため、上昇一巡後は145.239円ばまで押し戻されました。(各レート水準は執筆時点のもの)
FX ライブ配信、ドル円調整局目?それとも年初来高値更新か (2023年8月31日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
米イベントは決定打にならず
米国の引き締めの道筋について、マーケットでは9月はスキップを大方織り込んでいるものの、11月・12月は流動的で、今後の経済指標次第の状況です。米ドル/円も、これまでの「日米金融政策の方向性の違い」の延長線上から直近の高値圏へ戻しているものの、もう一段上方向を試すには材料不足の面も否めません。9月6日に発表されるISM非製造業景況指数が、足許の不安を後退させて米ドル/円上昇の手掛かりとなるのか、それとも米経済の先行きが警戒されて米ドル/円の重しとなるのか注視されます。
また、経済指標の発表が少ないため、今年の投票権を有するFOMC参加者の中で、ハト派寄りとされるハーカー米フィラデルフィア連銀総裁やウィリアムズ米NY連銀総裁が、金融政策の見通しについてどのような認識を示すのかにも注目が集まりそうです。もっとも、次なる方向性を探る決定打にはなりづらそうで、引き続き中国の政策動向や本邦政府の円安けん制姿勢などが絡んで、米ドル/円は方向性が定まりづらいかもしれません。
米ドル/円、三角保ち合いからダブルトップへ
チャート形状を見ると、強気の三角保ち合いから、支持線割れでダブルトップが意識され始めています。145.00円付近の21日移動平均線で踏み止まれるか注目されます。このレベルを下回ってくれば、143.000円付近まで視線が下がりそうです。上方向の水平ラインが146.750円付近に引けそうで、この水準を超えてきたらレンジブレイクとして買いでついていくのも一考でしょう。ただ、やはりダマシも警戒されるため、本格的な買いは147.366円の直近高値を越えたところからかもしれません。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:142.500-147.500
9/4 週のイベント:
9/5(火) 8:30 日本 7月全世帯家計調査・消費支出
9/5(火) 23:00 米国 7月製造業新規受注
9/6(水) 10:30 日本 高田日銀審議員、発言
9/6(水) 21:30 米国 コリンズ米ボストン連銀総裁、発言
9/6(水) 22:45 米国 8月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、改定値)
9/6(水) 22:45 米国 8月総合購買担当者景気指数(PMI、改定値)
9/6(水) 23:00 米国 8月ISM非製造業景況指数(総合)
9/6(水) 27:00 米国 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
9/6(水) 28:00 米国 ローガン米ダラス連銀総裁、発言
9/7(木) 8:50 日本 対外対内証券売買契約等の状況
9/7(木) 10:30 日本 中川日銀審議員、発言
9/7(木) 21:30 米国 4-6月期四半期非農業部門労働生産性・改定値
9/7(木) 21:30 米国 新規失業保険申請件数
9/7(木) 23:00 米国 ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、発言
9/7(木) 27:30 米国 ウィリアムズ米NY連銀総裁、発言
9/7(木) 27:45 米国 ボスティック米アトランタ連銀、発言
9/8(金) 8:30 日本 7月毎月勤労統計調査-現金給与総額
9/8(金) 8:50 日本 4-6月期四半期実質国内総生産(GDP、改定値)
9/8(金) 23:00 米国 7月卸売売上高
一言コメント
バスケットワールドカップが大盛り上がり。バスケットは良く知りませんが、盛り上がることは大切です。ところで、バスケット漫画と言えば、「ス〇ムダ〇ク」のイメージが強いと言う方も多いでしょう。私もその一人です。学生時代には毎週、雑誌を知り合いと読みまわしていました。懐かしいですね。
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来週の為替予想 米ドル 円
以上のような「日本株買い・円売り」といった組み合わせを前提にすると、先週日本株の下落が広がる中で円の買い戻しが発生した可能性があります。こうした中で先週7日(金)、それまでの小動きを米ドル下放れたことも後押しする形で、米金利や金利差からかい離した米ドル安・円高が広がったということではないでしょうか。
この米ドル/円の急落は、日経平均株価の下落と関係があると考えています。(図表3参照)。日経平均はこのところ大きく上昇してきましたが、7月に入り最初の営業日となった先週3日(月)に上昇一巡となると、その後は続落となりました。このような株安の動きが、米金利や金利差からかい離した米ドル安・円高に影響した可能性はあるでしょう。
来週のドル・円相場はドル高一服となりそうだ。ジャクソンホール会合を通過し、期待感から買われたドルが調整する可能性がある。一方で、米国の金利上昇が続く可能性もあり、じり高の展開も想定される。円安が進行し、対ドルで年初来安値を更新する動きとなった場合には、為替介入への警戒感が高まる。
ドル円相場については、時間の経過とともに緩やかなドル安・円高が進むという弊社の基本的な見方に変わりはありません。ただ、米国では昨年3月からの利上げで、インフレは最悪期を脱したものの、労働市場は堅調で、個人消費も底堅い状況です。そのため、米金融政策の見通しを幾分タカ派方向に修正し、各期末のドル円の予想着地水準もドル高・円安方向に修正しましたが、引き続き年度末にかけては緩やかなドル安・円高の動きを見込んでいます。
海外の投資家は、日本株を購入する上で、為替相場で円相場が下落することに伴う為替損失を回避(ヘッジ)するために円売り取引を並行して展開する可能性があります。実際、海外投資家の代表的な存在であるヘッジファンドの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、5月に入ってから売り越しが急増しました(図表4参照)。これは、まさに海外投資家の日本株投資に伴う為替リスク・ヘッジの円売りの影響が一因だった可能性があるでしょう。
米国の引き締めの道筋について、マーケットでは9月はスキップを大方織り込んでいるものの、11月・12月は流動的で、今後の経済指標次第の状況です。米ドル/円も、これまでの「日米金融政策の方向性の違い」の延長線上から直近の高値圏へ戻しているものの、もう一段上方向を試すには材料不足の面も否めません。9月6日に発表されるISM非製造業景況指数が、足許の不安を後退させて米ドル/円上昇の手掛かりとなるのか、それとも米経済の先行きが警戒されて米ドル/円の重しとなるのか注視されます。また、経済指標の発表が少ないため、今年の投票権を有するFOMC参加者の中で、ハト派寄りとされるハーカー米フィラデルフィア連銀総裁やウィリアムズ米NY連銀総裁が、金融政策の見通しについてどのような認識を示すのかにも注目が集まりそうです。もっとも、次なる方向性を探る決定打にはなりづらそうで、引き続き中国の政策動向や本邦政府の円安けん制姿勢などが絡んで、米ドル/円は方向性が定まりづらいかもしれません。
なお、足元では、日銀と米欧中央銀行の金融政策について、方向性の違いが改めて意識され、主要通貨に対し円の減価が進行しています。ドル円も、ここ数日で144円台を回復してきており、市場では政府・日銀によるドル売り・円買い介入への警戒も強まっています。ただ、輸入物価の大幅低下などで、昨年のような「悪い円安」の声はあまり聞かれず、よほど急激な円安とならない限り、円買い介入の可能性は低いように思われます。
この7日(金)には注目の米雇用統計が発表され、結果は強弱さまざまなものでした。この雇用統計以外でも、先週発表された米経済指標はおおむね予想より強い結果が多く、雇用統計の結果も受けて、7月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ再開はほぼ確定との見方となりました。この結果、先週前半を通じ、米金利は上昇傾向が続きました。そのため、上述のような金曜日の米ドル急落は、米金利からかい離の目立つものでした(図表2参照)。
チャート形状を見ると、強気の三角保ち合いから、支持線割れでダブルトップが意識され始めています。145.00円付近の21日移動平均線で踏み止まれるか注目されます。このレベルを下回ってくれば、143.000円付近まで視線が下がりそうです。上方向の水平ラインが146.750円付近に引けそうで、この水準を超えてきたらレンジブレイクとして買いでついていくのも一考でしょう。ただ、やはりダマシも警戒されるため、本格的な買いは147.366円の直近高値を越えたところからかもしれません。
●米利上げ継続の見方に変更しドル円の見通しもドル高・円安方向に修正、年末は140円を予想。●日銀は7月にYCC調整との見方は不変、日米長期金利は年末から年始にかけ、低下する見通し。●各期末の予想着地水準はドル高方向に修正も、この先緩やかなドル安・円高が進む見方を維持。
予想する通貨ペアは、米ドル円や豪ドル円をはじめとする主要通貨のほかに、トルコリラ円やメキシコペソ円といった新興国の通貨も予想します。
その結果、1990年以来32年ぶりに1ドル150円を突破したワン!
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