
海外市場では、米10年債利回りが一時4.3667%前後と2007年11月以来の高水準を記録すると円売り・ドル買いが優勢となった。アジア時間の高値147.89円を上抜けて一時147.92円と日通し高値を更新した。ユーロドルは一時1.0718ドルと日通し高値を更新したが、買い戻しはあくまでポジション調整の域を出ず長続きしなかった。
本日のドル円も底堅さを維持し、148円をうかがう局面があるかもしれないが、本日米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利並びに経済・金利見通し(ドットチャートを含む)の公表などを控えていることで、値動きは限られたものになるか。
昨日、ユーロドルが1.0700ドル台を上抜けたように、FOMCを前にドル円も目先の短期的なストップロスをつけ、148円台を狙いにいく場面もありそうだ。しかしながら、FOMCの経済・金利見通しが6月時点と比較し、どの程度変化があるのか、またパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が会見でどのような見解を示すのかが、今回は非常に読みにくいこともあり、一方的に為替市場が動くのは考えにくい。仮に148円を突破した場合でも、為替介入警戒感や、22日の日銀政策決定会合を控え、昨年11月に付けた148.40円台までドルを持ち上げるのも難しく、小幅な上昇に留まると予想する。
本日から大きなイベント(中銀の各国政策決定会合)が続くことで、アジア時間に敢えて大きなリスクを取る地合いにはなりにくいだろう。しかしながら、本日は中国が1年物と5年以上物の最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を発表することには注目したい。8月は1年物LPRを引き下げたが、住宅ローン金利の目安である5年超LPRが据え置かれ、市場は失望感から株が軟調に動き、リスク回避に敏感なオセアニア通貨が弱含んだ。人民元取引の基準値公表とほぼ同時刻に発表され、香港・中国株式市場が寄り付く直前ということもあり、LPR発表から中国株式市場が始まる数十分の間は中国をめぐる値動きが、円を含め多くの通貨に影響を与えることになりそうだ。
なお、本日は本邦から8月の貿易統計が発表される。8月は資源価格の高騰もあり、7月よりも赤字幅が大幅に拡大する予想となっている。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通し148円窺う局面もFOMC待ちで値動きは限られるか 中国LPRに要注目
3月の欧米金融不安を受けて、市場は、アメリカの中央銀行は早期に利上げを停止し、今年後半には利下げに転換することを織り込んできました。仮に、米景気減速リスクへの対応や米金融システムの安定を目指すだけならば、アメリカの中央銀行は早期に利下げすると考えます。
5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定内容や4月の米雇用統計などから、ドル円の見通しを考えてみましょう。結論からいえば、当面のドル円は、円安方向の戻りを試すと予想します。4月最終週から続いた日銀会合、FOMC、米雇用統計という大きなイベントを通過して、ドル円の予想変動率が低下すると想定するためです。日米政策金利差が約5%もあるなか、ドル円の予想変動率が下がれば、金利の高いドルが強くなる要因になるでしょう。
7月の米FOMCの決定内容やパウエル議長の記者会見は、市場にとってサプライズなしと考えます。次回の9月FOMCまでには、2回の雇用統計やCPIを確認することができます。米中央銀行と市場の見通しにずれがあれば、8月後半の米ジャクソンホール会議などで米中銀高官が講演することで、市場との溝を埋めることができるでしょう。アメリカの中央銀行は、柔軟な金融政策運営を実施する余地を確保したといえます 。
ただし、アメリカの1年先の想定政策金利は、3.5%程度まで下がっています。 アメリカの中央銀行メンバー全員が3月に示した2024年末の政策金利見通しのレンジの下限は、3.4%です。市場は、米景気悪化の可能性を織り込んでおり、米金利が下がる余地は小さくなっていると考えます。
一方で、日銀が市場予想通り、現状維持を決定すれば、円金利は低下して、円安圧力になると考えます。今年1月の日銀金融政策決定会合以降、長めの円金利は、政策修正がなければ低下するというパターンを繰り返してきたためです。
ドル円相場にとって次の大きなイベントは、28日の日銀金融政策決定会合であり、市場コンセンサスは現状維持とみられます。よって、日銀が10年金利目標などの微修正に動けば、サプライズであり、円金利が上昇して、円高要因になるとみられます。
日銀が大規模緩和を修正する前提は、米国景気の堅調さや世界の金融市場の安定だと考えます。よって、円金利が上昇する際には、米国金利も上昇しやすいと予想します。日銀が大規模緩和の修正に動くことは、日米金利差からみて、ドル安円高要因になるとは限りません。
WTI原油価格が昨日のNY原油先物市場では一時92ドル33セントまで買われ、昨年11月以来の高水準を付けました。北海ブレント先物も一時は95ドルに接近しています。カルガリーで開催中の「世界石油会議」で、サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は、世界の原油価格を左右する重要な要因の1つである中国需要について、「まだ最終判断はつかない」と述べていました。「OPECプラス」は現在の減産体制を今年12月まで継続することを決め、これが相場を下支えしていることは間違いありませんが、中国景気がいまひとつの状況でも上昇傾向を見せています。ただ、シティグループは原油相場については、「減産を続けるサウジとロシア両国以外からの供給増加によって上昇の勢いは弱まる」との見方を示しています。(ブルームバーグ)原油価格の高止まりは、輸入依存度の高い日本にとっては貿易赤字の拡大に直結することから、「円安要因」と見られています。
2023年8月以降のドル円は、上旬に141円台まで円高に動きましたが、月後半には一時147円台をつけて、円安方向の戻りを試しています。市場参加者は、昨年10月につけた151円台を意識しているでしょう。
市場の利上げ織り込みは、FRB高官の発言に沿ったものです。ジェファーソンFRB理事は5月31日に、「次回会合で利上げを見送ることにより、FOMCはより多くのデータを見てから追加引き締めの程度について決定できるだろう」と発言しました。
今後半年程度でみれば、ドル安円高に転換すると予想しています。市場は、来年1-3月にアメリカの中央銀行が利下げに転換すると想定しています。その場合、日米の政策金利差の縮小が見込まれるため、投機筋が円売りドル買いのポジションの利益確定(円買いドル売り)に動いて、ドル安円高に方向が変わるでしょう。
4月の米CPIコア(除く食料品・エネルギー)の前月比は+0.4%、前年比+5.5%と市場予想通りでした。前年比の上昇率は、3月の+5.6%から小幅縮小したものの、2%インフレ目標を大幅に上回っており高いです。
欧米の中央銀行が7月会合で0.25%利上げを実施するとの見方が大勢である一方で、7月28日の日銀金融政策決定会合の市場予想は定まっていません。日銀が金融政策を判断する材料を考えると、日銀がどう動くかは不透明です。
6月14日のアメリカの中央銀行会合の焦点は、利上げの有無だけではありません。アメリカの中央銀行は、6月の会合で、経済、物価、政策金利の見通しを改定します。市場は、米中央銀行メンバーの政策金利予想の分布が、どう変わるかに注目しているでしょう。
FRBの4月融資担当者調査によれば、米銀の企業向けの貸出態度は、1月調査よりも厳しくなっていました。今後、企業の設備投資姿勢などが慎重化して、米国景気が今年後半に減速するリスクが意識されます。米国景気の下振れリスクや米金融システムの安定を重視すれば、市場が利下げを織り込むのは妥当にみえます。
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