一躍エコ化の先陣を切った北欧ボルボ
PHEVやBEVといった充電を行うモデルをボルボはリチャージと呼ぶ。40/60/90の全シリーズにリチャージモデルを配備済みだ。
既にボルボはラインナップを見直し、ICE(内燃機関)のみの搭載車を廃止。販売全車がPHEV(プラグインハイブリッド)または48Vハイブリッドとなっている。
クルマの未来は電気自動車。化石資源の枯渇問題もあるが、現在一番取り沙汰されているのは地球温暖化であり、大気中の二酸化炭素量の中立化(カーボンニュートラル)や製造から廃棄/再利用までの環境負荷の評価(LCA:ライフサイクルアセスメント)の視点からも電動化は不可避だ。 そこは十分に理解していても3月2日のボルボ本社の発表には驚かされた。あと10年足らずで全モデルをBEV化するというのだ。EVメーカー・テスラの2020年における全世界の販売台数が約55万台、ボルボは約66万台。ボルボの販売力や生産規模を考慮するなら全車EVというのも納得できるのだが、今後のEVの車種増加やインフラ整備を思えば、必ず目論見通りに行く保証はない。 ボルボでは今秋にも日本向けの純電動車第一弾としてBEV・C40の導入を予定している。海外ではすでに純電池駆動のXC40リチャージ ピュアエレクトリック(EV)を販売しているが、クラスやカテゴリーを見ればC40はXC40EVの4ドアクーペ仕様のようだ。ちなみにXC40EVのWLTP総合モードでの航続距離は418km。長距離用途向けには余裕はないが、EVの現状では標準的である。また、XC40EVも導入が予定され、来年以降も年に1モデル以上のBEVを導入し、2025年までにBEVの販売比率を35%以上にするとのこと。 C40の販売計画についてはオンライン契約のみで、最初に導入される100台は新しい契約形態となる3か月経過後解約自由のサブスクリプション契約に限定される。生産現場の状況を考慮しても、PHEVも含めた内燃機車からの緩やかな移行は当然。短期間での解約が可能なサブスク契約の設定などを考えても、現状でBEVと内燃機車の完全代替が可能とは考えていないのだろう。付け加えるなら、補助金を期待しない限り実用ベースで車両価格に対するコスパが低すぎるのも問題だろう。 EV時代の本格到来においては航続距離などの走行性能も課題のひとつだが、もうひとつ見逃せないのは充電インフラである。電力は最も進んだ生活インフラだが、多くの内燃機車がEVと代替すれば、現在の発電量では賄えない可能性が高い。例えば、リーフ+のバッテリー容量は2人世帯1名在宅での消費電力約8日分。1日分の世帯消費電力で走れるのは約57km(WLTC総合)。XC40EVで同様に計算すると約41km(WLTP総合)になる。発電量の大幅増加が見込めなければ電力インフラが破綻してしまう。さらに急速充電スタンドについても車載バッテリー容量の増加と充電時間短縮化が進めば、さらなる高出力化は必須。充電時間の短縮には急速充電器とバッテリーの両面から技術的ブレークスルーも必要だろう。 車両単体での性能向上については短期間での進歩も可能だろうが、急速充電インフラやEV用電力の確保には電力行政も関わり、そう簡単に解決するとは思えない。海外では法的にEV推進を行う機運が高まっているが、皮肉な見方をすれば内燃機車へのペナルティ(課税)も透けて見えてくる。 ボルボにとって10年以内は現実的でも、世界のEV標準化にはもっと長い時間が必要だろう。
そのための戦略も非常に明確で、例えばボルボでは、2040年までにクライメイトニュートラルを実現すると宣言している。クルマのみならず、工場や企業の取り組みなど全ての面で、環境負荷を与えないカーボンフリー企業を実現させるという長期ビジョンだ。
欧州各国を筆頭に、脱ガソリン車の流れが加速している。そんな中、ボルボが2030年までにBEV(内燃機関を搭載しないバッテリーEV)のみのメーカーになると宣言し、初のEV専用車「C40」をお披露目した。
中国の浙江吉利控股集団が親会社の自動車メーカー、ボルボは今年7月、2019年以降の新型車をすべて電気自動車やハイブリッド車などの電動車にすると発表した。
2019年以降に導入する新型車は全て電動化(EV・PHEV・マイルドHV)させると発表。一躍エコ化の先陣を切った北欧ボルボ。日本でもボルボ・カー・ジャパンが待望の新型ステーションワゴン「V60」にディーゼルを設定しないと発表した。現状、輸入車に関してはドイツ、フランス勢ともにパワーと燃費に優れたディーゼルが人気という日本市場で、いち早く決断を下した理由は何か。前編「『ライバルをおとしめない』 絶好調ボルボ社長の戦略」に続き、同社の木村隆之社長を直撃した。
同様の目標を掲げる企業はもちろん他にもあるが、SDGs(持続可能な開発目標)の国際ランキングで常に上位に位置する環境大国スウェーデンのボルボは、やはり徹底している。冒頭の電動化シフト宣言もここにつながる。
ピュアEVメーカー化の宣言と同時に発表された、ボルボ初のBEV専用車となるクロスオーバーSUV。公開されたデザインプロトタイプ(写真)は既存モデルとは異なるクーペライクなフォルムを採用し、最先端の装備を満載。なお、諸元等の詳細は未定だ。
コメント