執筆:外為どっとコム総合研究所 中村 勉
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目次
豪7-9月期CPIに注目!鈍化ペースが鈍いと…?
今週の振り返り
今週の豪ドル/円は94.58円前後、NZドル/円は87.33円前後で週初を迎えました。週初はそれまで堅調に上昇していた米10年債利回りが節目となる5%台に乗せた達成感が出たことなどにより、米10年債利回りが急低下し米ドルが対主要通貨で全面安になりました。25日に発表された豪7-9月期消費者物価指数(CPI)が市場予想を上振れたことで豪ドル/円は一時95.90円前後まで上値を伸ばしました。しかし、中国経済を巡る不安や、米10年債利回りが再び上昇に転じたことで米国株価指数が下落したことなどが売り材料となり、豪ドル/円は一転して94.24円前後まで下落しました。
RBAは追加利上げを思案中
今週はRBAの追加利上げを巡り、市場の期待が大きく増減しました。まず、24日にブロックRBA総裁が「インフレ見通しが大幅に上方修正された場合、追加利上げをためらわない」と発言しました。翌25日に発表された豪7-9月期CPIは前年比+5.4%となり前期の6.0%から低下しました。また、RBAが重視するCPIトリム平均は+5.2%で前期の+5.4%から低下を示しました。
【豪四半期CPIの推移】
上の表を見ると豪州のインフレは2022年10-12月期をピークに鈍化傾向にあることがわかります。では、なぜブロックRBA総裁は前述の発言をしたのでしょうか。問題はインフレの鈍化ペースです。RBAが8月に公表した金融政策報告(Statement of Monetary Policy:SOMP)の中で、2023年末のインフレ率予想を4.1%としていました。豪7-9月期CPIは確かに前期からインフレ加速のペースは鈍化しています。原油価格の上昇が主な要因ですが、このままだと、RBAが予想したほどインフレは鈍化しなさそうです。そのため市場は年内にRBAが追加利上げに動くとの見方を強めました。しかし、ブロックRBA総裁は26日の豪上院での議会証言で「まだ数字を分析中」としたうえで、「7‐9月期のCPIが予想の重要な修正促すかどうか言えない」と発言しました。この発言を受けて、豪7-9月期CPI発表直後と比べると年内の利上げ観測は若干低下しています。
【豪7-9月期CPI内訳】
豪7-9月期CPI内訳の前期比の欄を見ると、前期比、前年比共に大きく上昇したのは3項目。住宅、輸送、保健及び金融サービスです。住宅は、家賃や電力や上下水道料金などの上昇が大きく影響しました。輸送は燃料価格等の上昇、そして保健及び金融サービスは住宅や自動車等の保険料が全体的に上昇したことが影響しています。こうしてみるとサービスのインフレが高止まりしている一方で、財のインフレは原油などの燃料価格の上昇が大きな要因だということがわかります。財のインフレはエネルギー価格が落ち着けば鈍化速度が速まると予想できますが、中東情勢の悪化により「いつ」原油相場に安定がもたらされるかは予想が出来ません。外食や家賃、保険など様々な分野でのインフレがなかなか鈍化しないことは懸念材料となっています。ポジティブな材料は、過去3カ月の豪雇用統計の結果を見ると労働市場のひっ迫が転換点を迎えたことを示唆しています。労働市場のひっ迫緩和がサービスインフレの鈍化を促す可能性はあります。これらの材料をRBAがどう捉えるかによって今後の金融政策の方向性が決まるのではないでしょうか。
中国製造業の景況感に注目
来週は中国にて国家統計局が集計する中国10月製造業購買担当者景気指数(PMI)と10月非製造業PMI、そしてS&Pが調査する財新10月製造業PMIと10月サービス業PMIが発表されます。
中国は豪州にとって最大の貿易国です。特に鉄鉱石や石炭などの資源輸出量が多いため、中国の製造業の好不況は豪ドル相場に大きな影響を与えます。
このところの中国経済は当局の景気刺激策の影響もあってか、一時期の減速傾向は止まったように見えます。輸出は2カ月連続で減少幅を縮小しており、小売売上高も増加傾向にあります。
9月の中国製造業PMIは50.2で8月から0.5ポイント改善、6カ月振りに好不況の境目とされる50.0を上回りました。10月31日に発表される10月中国製造業PMIの市場予想は50.2で9月から横ばいとなっています。一方で、財新製造業PMIは8、9月と2カ月連続で50.0を上回っており、10月の市場予想は50.8で前月(50.6)から改善が見込まれています。注目は市場予想を上回れるか?下回った場合は50.0を上回っているか?になりそうです。
※各指標の市場予想は執筆時時点(10月27日午前)のもので、今後変わる可能性があります。
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円は10月に入って大まかに見て94.00~96.00円のレンジから抜け出せません。そのため、上下の目安も変わっていません。上値は95.90円付近(10/12高値95.83円前後、10/25高値95.90円前後)が目先の目途として意識されそうです。この96.00円手前は7月後半~8月序盤にも上値目途として意識されていました。その上の水準では9/29高値の96.92円前後や6/19日高値の97.68円前後(年初来高値)が次のポイントとなりそうです。一方で下値は、一目均衡表の雲下限が目先の下値目途となりそうです。そして10/3安値の93.04円前後がサポートとして意識されそうです。その下には200日移動平均線(200MA)があります。強いサポートとして意識されやすいですが、しっかりと下抜けした場合には売りが加速する可能性がありますので要注意です。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表、200MA】
予想レンジ:AUD/JPY:92.50-97.00、NZD/JPY:85.50-89.00
10/30 週のイベント:
10/30 (月) 09:30 豪 9月小売売上高
10/31 (火) 06:45 NZ 9月住宅建設許可件数
10/31 (火) 09:00 NZ 10月ANZ企業信頼感
10/31 (火) 10:30 中国 10月製造業購買担当者景気指数(PMI)
10/31 (火) 10:30 中国 10月非製造業購買担当者景気指数(PMI)
11/01 (水) 06:45 NZ 7-9月期四半期就業者数増減
11/01 (水) 06:45 NZ 7-9月期四半期失業率
11/01 (水) 09:30 豪 9月住宅建設許可件数
11/02 (木) 10:45 中国 10月財新製造業購買担当者景気指数(PMI)
11/02 (木) 09:30 豪 9月貿易収支
11/03 (金) 10:45 中国 10月財新サービス部門購買担当者景気指数(PMI)
一言コメント:
来週は週の半ばから家族旅行で沖縄に行きます(後輩の結婚式に参加)。外為どっとコム総研は沖縄出身者もいるため、色々と現地情報を教えてもらい楽しみです。宿も決まり、レンタカーも借り、美味しいお店も教えてもらったのであとは行くだけです。私の休暇中は為替相場に大きな動きがないことを祈ります。

外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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来週の為替予想 豪ドル 円
※前回変動幅...前回の発表時から10分間でドル円が何pips変動したか。
また、南アの指標では来週26日に9月の卸売物価指数(PPI)が発表予定となっている。
最後は米ドル/円と主要なクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の11通貨ペアについて、過去20年間の日足の「陽線」と「陰線」の出現回数を日別に数えた表を見てみましょう。
なお、9月の豪雇用統計は、失業率は予想より改善したものの、新規雇用者数は予想を下回った。内訳をみても、常勤雇用者数の減少を非常勤雇用者数の増加でどうにかカバーした状態。豪ドルの上値を抑えている。
豪ドルは限られた値幅での取引となった。RBA議事要旨で利上げも選択肢だったことが判明すると強含む場面はあったが、中東情勢の泥沼化を嫌気したリスク回避の動きが重しになった。
149.60円. 1豪ドル. 94.32円. 1米ドル. 149.10円. 1豪ドル. 93.82円. 為替レートのページです。. 三井住友海上プライマリー生命では、ゆとりある老後のための選択肢として、終身保険や個人年金保険など多彩な商品をご用意しています。.
豪ドル/円(aud/jpy) の外国為替レート、チャートを10分更新で配信しております。 豪ドル/円(AUD/JPY) 外国為替 | マーケット情報 | 楽天証券 JavaScriptが無効の為、一部のコンテンツをご利用いただけません。
今週の豪ドル/円は94.19円前後、NZドル/円は88.16円前後で週初を迎えました。週初は中国人民銀行が中期貸出制度を通じて市場予想を大幅に上回る資金を市場に供給すると決定したことや、世界的に株価が上昇したことを支えに豪ドル/円は95.66円前後まで上昇しました。しかしその後は、豪9月雇用統計の結果が市場予想を下回ったことや米長期金利の上昇を受けた米ドル買いがあったことなどの影響から上値が抑えられ94円台へ押し戻されました。NZドル/円は16日こそ88.69円前後まで上値を伸ばしましたが、17日に発表されたニュージーランド(NZ)7-9月期消費者物価指数(CPI、前年比)が市場予想を下回り、NZのインフレが引き続き鈍化傾向にあると示したことでNZ準備銀行(RBNZ)による追加利上げ観測が後退。NZドル売りが強まり、株価の下落も相まってNZドル/円は19日には87円台前半まで下落しました。
日本円関連の通貨ペアでも、11月の月足データでは目立ったアノマリーはありませんでしたが、日足のデータを見てみると、月初と月末に「陽線」の出現確率が高い日があり、円安になりやすい傾向があるようです。特に11月3日、17日、29~30日派の複数の通貨ペアで陽線の出現確率が70~88%と高くなっており、円安方向の動きに注意が必要かもしれません。
下のデータはポンド関連の通貨ペアの、過去20年間の日足の「陽線」と「陰線」の出現回数を日別に数えたものです。11月3日を見てみると、陽線の出現確率が英ポンド/円で88%、英ポンド/米ドルと英ポンド/スイスフランは83%と高くなっていて、英ポンドに買われやすいアノマリーがあることがわかります。
特に有名なアノマリーとして、「ゴトー日(5・10日)アノマリー」があります。これは、金融機関が顧客に適用するその日のレートを決める日本時間の午前10時ごろの「仲値」に向けて、特にグローバル企業の決済が集中しやすい5や10のつく日は米ドルが買われて円安になりやすい傾向にあるというもので、この動きを利用した「仲値トレード」と呼ばれる取引手法は一部のFXトレーダーから注目されています。
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