執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也 X(Twitter)
SNS上で「ジャパニーズ・リラ」との揶揄も目に付く
円はトルコリラと同じ部類だと欧州の大手銀行の調査チームが指摘したことが話題となっている。「利回りや対外収支といった円相場を動かしている要因を一見すると、円はトルコリラやアルゼンチンペソと同じ部類に属する」「円を防衛する日本の介入は良くて無力、最悪の場合には状況を悪化させることになるだろう」と指摘したとのこと。
トルコもアルゼンチンも経常赤字を抱える上に激しいインフレに見舞われている。そうした国の通貨と同類視されることに異論を挟む余地は大いにあろうが、円が一部の海外投資家からこのように見られていることは事実として認めざるを得ない。
実際に、トルコリラは対ドルや対ユーロでは下落が続いているが、対円では7月以降1リラ=5円台前半を中心におおむね横ばいで推移している。SNS上でも「ジャパニーズ・リラ」と揶揄する投稿が目に付く。リラと円の「弱さ比べ」の相場展開はまだしばらく続きそうだ。
トルコリラ チャート一覧
【トルコリラ/円(TRY/JPY) 日足チャート】
【ドル/トルコリラ(USD/TRY) 日足チャート】
【ユーロ/トルコリラ(EUR/TRY) 日足チャート】
【トルコリラに関する外為どっとコムのキャンペーン】
【トルコリラの最新チャート】
「為替チャート|トルコリラ/円(TRYJPY)|60分足」はこちら
「為替チャート|米ドル/トルコリラ(USDTRY)|60分足」はこちら
「為替チャート|ユーロ/トルコリラ(EURTRY)|60分足」はこちら

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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トルコリラの焦点 ついに 日本円トルコリラ説
リラ安やインフレを容認してきたトルコ政府や中央銀行も、影響が深刻になるにともなって対応を迫られています。
トルコリラの対円相場(TRYJPY)は上値の重い展開が続いています。
なお、7.5円は日本とトルコの消費者物価で計算した購買力平価の足元の水準でもある。もともと、トルコリラはこの購買力平価を基本的に上回る水準で推移してきたが、2018年の暴落以降は購買力平価を上回れない状況が続いてきた(図表4参照)。
トルコリラ円の10月27日は概ね5.34円から5.26円の取引レンジ、28日早朝の終値は5.31円で前日終値の5.33円から0.02円の円高リラ安だった。
ところがトルコの中央銀行は、2021年9月から12月まで4か月連続で「利下げ」を実施。19%だった政策金利は4か月で14%にまで引き下げられ、この“常識破り”の政策にともなってトルコ国内の物価が大きく上昇したのです。
しかし、持続性について、専門家からは疑問視する声も。トルコの財政運営を不安視する人がリラ売りに走れば、リラが下がって、さらに財政負担が膨れ上がる、負のスパイラルに陥りかねないからです。また、補填する費用をまかなうために中央銀行がお金を刷れば、市場に出回るお金が増え、インフレがさらに悪化することも懸念されます。
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日米金利差の縮小が意識されて、じりじりとしたドル安の展開となった。
今や「実験」とも揶揄されるトルコの経済政策ですが、それに翻弄されているのは生身の人間です。安定した暮らしが戻ってくることを願ってやみません。
2021年前後にトルコはインフレ対策の利上げを行った時期があり、この時に上昇したトルコリラ/円は52週MAを上回りかけた。しかし、エルドアン大統領の指示で再び利下げに転換する中で、結局52週MAの上抜けは未遂に終わった。以上のことから、大統領が交代し利上げに転換、それを受けたトルコリラ/円の上昇が足元で7.5円程度の52週MAを大きく上回ることになるかどうかが、長期下落トレンド転換の目安ではないか。
大統領が交代し、インフレ対策の利上げに動く可能性ができた場合、トルコリラの底打ち、上昇トレンドへの転換の目安はどのように考えたらよいか。2014年から下落トレンドが展開する中で、トルコリラ/円は基本的に52週MA(移動平均線)を超えられない状況が続いてきた(図表3参照)。
中銀は通貨防衛のためおよそ8年ぶりに為替に介入。2021年12月だけで5回、市場介入しました。また、同じ月にトルコ政府は最低賃金を5割引き上げると発表。
輸出企業からは悲鳴の声がもれる。日本企業との合弁の素材メーカー担当者は「もともと数%しかない利益が吹き飛ぶ」と話す。リラ安定策の一環で、輸出企業は稼いだ外貨の40%を中銀に売却する義務がある。原材料の調達に必要なドルを買い戻す際の為替損が大きくなるという。
【為替】大統領選挙でトルコリラはどうなる?
インフレ対策では利上げを行う常識的な政策に戻し、その上で依然として前年比で40%程度といった記録的に高い消費者物価上昇率を低下に誘導できるかどうかが、トルコリラ安是正の目安になる。そしてその大前提が、現職のエルドアン大統領の交代ということになるだろう。
トルコリラ円の10月31日は概ね5.36円から5.23円の取引レンジ、11月1日早朝の終値は5.35円で前日終値の5.27円からは0.08円の円安リラ高だった。
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