午前の為替予想は… ドル続落か反発か、利上げ終了観測広がる中で米雇用統計に強い関心
作成日時 :2023年11月3日10時20分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
ドル円予想レンジ
149.400-151.400円
前日の振り返りとドル円予想
昨日のドル/円は一時150円台を割り込んで反落。11月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けて利上げ終了観測が広がる中、米新規失業保険申請件数の増加や米7-9月期雇用コスト(単位人件費)指数の低下が伝わると一時149.84円前後まで下落した。ただ、利上げ終了観測を背景に米国株が続伸する中でクロス円が上昇したため円買いに勢いはなく、150円台半ばへと持ち直して取引を終えた。
そうした中、市場の関心は本日のNY市場で発表される米10月雇用統計に集まっている。雇用統計を受けて、これまで堅調を維持してきた米労働市場に減速感が強まればドルは一段と下落する可能性があろう。一方で、雇用統計が今回も堅調なら、米長期金利の持ち直しとともにドルが反発する公算が大きい。ドル/円が150円台を維持できるかどうかは、米10月雇用統計にかかっていると言っても過言ではなさそうだ。なお、米10月雇用統計の主な項目の市場予想は非農業部門雇用者数が18.0万人増(前回33.6万人増)、失業率は3.8%(前回3.8%)、平均時給は前年比+4.0%(前回+4.2)などとなっている。
今朝 最新のドル/円チャート
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株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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ドル円午前の為替予想 150円台を維持できるかどうなる米雇用統計 2023
2023年5月のドル円は、133円台から一時141円手前まで円安に動きました。その後、6月に入ると、1ドル138円台から140円台の狭いレンジで推移してきました。
9月19・20日の米FOMCに向けて、8月の米消費者物価指数(CPI)を確認して、今後のドル円を予想します。結論からいえば、当面のドル円は、150円を上限に円安基調が続くでしょうが、米国景気の減速感が明確になれば、ドル安円高方向に転換すると予想します。
また、ドル円は、チャート上の節目となる200日移動平均水準の137円台を上回ったため、円安の流れに拍車がかかったとみられます。200日移動平均線は、ドル円の当面の下値サポートラインになるでしょう。
米9月CPI発表後の米金利市場では、高い政策金利が長く続くとの見方が強まりました。11月か12月の追加利上げの可能性を意識しつつ、利下げ転換は、来年後半からとの見方です。この場合、米政策金利は5.25-5.50%ですから、日米政策金利差は2007年以来となる5%以上の水準が来年前半まで続く可能性があります。ドル円の変動幅が大きくならなければ、金利の高い米ドルを買って、金利の低い円を売る、円キャリートレードが拡大しそうです。
2023年6月以降のドル円は、138円台から一時145円台まで円安に動きました。しかし、7月に入ると、1ドル145円近辺は政府が昨年に円買い介入した水準であること、7月日銀会合での政策修正観測が高まったこと、などから、一時137円台まで円高方向に押し戻されました。
8月以降のドル円相場は、日銀の政策修正の有無に左右されるでしょう。ドル安円高方向のリスクを警戒しています。
アメリカの10年金利は、7月中旬には3.7%台でしたが、今は4%台まで上昇しています。米10年国債金利が上昇したことは、ドル高円安要因になったでしょう。
しかし、債券市場サーベイで示された、市場参加者の10年金利見通しの中央値は、2023年9月で0.60%と、日銀が許容する10年金利の上限である0.5%を上回っています。多くの市場参加者は、日銀が10年金利目標を7-9月期に修正する可能性を意識していることが分かります。日銀の10年金利目標の修正は、事前に市場に織り込ませることが難しく、サプライズにならざるをえません。6月16日の日銀会合が近づくにつれて、10年金利目標の修正への警戒感が高まり、円高要因になると予想します。
米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、投機筋のドル買い円売りのポジションは、95億ドル程度にじりじりと拡大しています。2007年の円売りポジションの最大額は、191億ドルであり、円売りの拡大余地はありそうです。
2021年6月18日の金融政策決定会合で、量的緩和策の一つである「コロナ資金繰り支援特別プログラム」の有効期限を2021年9月末から2022年3月末に半年間延長しました。
当面のドル円は、円安基調で推移し、米利下げ転換が意識されればドル安円高に動くと予想します。 なお、ドル円が大きく高下する要因もあります。
では、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定内容と先行き見通しなどから、今後のアメリカの金融政策とドル円の行方を考えてみます。
また、7月の日銀金融政策決定会合での政策修正への警戒感も、ドル円を高下させたでしょう。7月28日の日銀会合に向けて政策修正リスクが意識されて、円金利が一旦上昇する局面では円高に動きました。しかし、日銀が現状維持する可能性が高そうだ、という複数の報道を受けて、円安に動きました。
米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果は11月1日に発表されます。市場では、11月の利上げは見送られるとの見方が優勢です。ただ、市場の注目は、高い政策金利がいつまで続くかという点でしょう。その点、今の米国景気は強いですが、年末にかけては減速すると予想しています。理由は、コロナ禍の給付金などで生じた過剰なコロナ貯蓄が枯渇するリスクがあること、個人のクレジットカードの延滞移行率が上昇していること、学生ローンの返済が再開すること、などが挙げられます。市場が予想するアメリカの利下げ時期が、来年後半から前倒しされれば、アメリカの金利が低下して、ドル安円高に動くと考えます。
7月の日銀金融政策決定会合は、日銀が10年金利目標を修正するには良いタイミングにみえます。第一に、日銀は、2023年度のCPIコア見通しを4月の1.8%から2%以上に上方修正するでしょう。また、5月の毎月勤労統計速報によれば、所定内給与の伸び率が加速していること(賃金上昇)が確認できました。第二に、円安進行は、日銀の金融緩和継続が理由との見方が多いです。第三に、7月会合を逃すと、10年金利目標の副作用が顕在化した場合の政策対応が難しくなります。次回の9月日銀会合までは、約2か月の間隔が空きます。国内のインフレ期待上昇や海外金利上昇が加速すれば、円の10年金利は、日銀が許容する0.5%まで上がる危険性があります。
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