
今晩は引き続き堅調か。昨日は予想を下回る米10月消費者物価指数(CPI)を受けて米連邦準備理事会(FRB)による利上げ打ち止め観測が強まり、米10年債利回りが4.45%台に低下したことが株式相場の支援となった。ダウ平均は489.83ドル高(+1.43%)と3日続伸し、S&P500とナスダック総合もそれぞれ1.91%高、2.37%高と大幅反発した。引け後の動きでは米下院がつなぎ予算案を超党派で可決し、今後の上院での可決とバイデン米大統領の署名を経て成立する見通しとなった。
今晩の取引では利上げ打ち止め観測や債務上限問題懸念の後退を背景に引き続き堅調か。経済指標では朝方に10月生産者物価指数 (PPI)や10月小売売上高の発表があり、結果を受けた米10年債利回りの動向が注目される。昨日の10月CPIに続いて10月PPIも鈍化となれば、利上げ打ち止め期待や来年の利下げ転換期待が米国株の追い風となりそうだ。
今晩の米経済指標・イベントは10月PPI、10月小売売上高のほか、11月NY連銀製造業業況指数、MBA住宅ローン申請指数、EIA週間原油在庫など。このほか、バーFRB副議長の議会証言やバーキン米リッチモンド連銀総裁の講演も予定されている。企業決算は寄り前にターゲット、TJXカンパニー、キャタレント、引け後にパロ・アルト・ネットワークスなどが発表予定。(執筆:11月15日、14:00)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
これがEPS見通しの引き上げにつながったとみられます
17日(木)に半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズが決算を発表しました。年初から大きく株価が上昇した半導体セクターに対する高値警戒感が広がる中で、実績・見通しともに市場予想を上回る好決算で、発表翌日の18日に株価は上昇しました。半導体製造装置と半導体メーカーの業績は必ずしも連動はしないものの、上流工程である製造装置の最大手が受注も含め好調であったことは、半導体セクターの安心材料となりました。
ところで、米国の大手格付け会社・ムーディーズは、米国債の格付け見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ」に引き下げました。主たる理由は、金利の上昇に伴う米国政府の利払い負担の増加や、予算案を巡る議会の混乱です。長期発行体格付けおよびシニア無担保格付けは「Aaa」で維持したものの、今後、格下げが実施される可能性が高そうです。事実、米・連邦政府の財政運営に関しては、つなぎ予算が11月17日に切れ、与野党が合意に至らなければ政府閉鎖に陥る状況です。
金融政策関連では、FRB(米連邦準備理事会)幹部の講演が複数予定されています。24日(木)~26日(土)にカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム、いわゆるジャクソンホール会合が開催されます。パウエルFRB議長は25日(金)に経済見通しについて講演する予定です。
11/15(水)に発表予定の10月小売売上高は米長期金利のトレンドを決める重要指標と考えられます。前月比0.3%減と、7ヵ月ぶりにマイナスが予想されています。市場予想通り小売売上高の鈍化が示されれば、5%台からピークアウトしている長期金利に安定感をもたらすと見られます。また、今週・来週と小売大手の8-10月期決算の発表が予定されており、各社の市場見通しが注目されます。
米国の物価見通しについて、シナリオ別に金融政策、米長期金利、米ドル、米国株への想定され得る影響をまとめたものが図表2です。米国でインフレ鎮静化の傾向が続く場合、FRBは雇用などの経済指標の強弱感をにらみ、ややタカ派的なスタンスを維持しつつも、政策金利を据え置く公算が大きいと思われます。政策の舵取りが奏功すれば、米長期金利は緩やかな低下、米ドルは対主要通貨で緩やかな減価、米国株は底堅い動きが予想されます。
このため、市場は9月FOMCまで不安定な展開が続きそうです。その間は、FRBからの情報発信やFRB高官の発言が注目を集めると想定されます。先週は、NY連銀の経済ブログ(投稿は8/9及び8/10)における自然利子率(r*)についての議論が話題になりました。自然利子率は、景気・インフレを加速も減速もさせない金利水準を指します。(大幅利上げに対して、米国経済が堅調に推移していることを説明する理由に対する関心が強まる中で)同ブログでは「短期的な自然利子率はコロナ後に上昇した可能性がある」との見方が示され、注目を集め、株価へは重石となりました。一方、「長期的な自然利子率が上昇した証拠は弱い」との結論も示しています。ドッツに対する示唆としては、手前の予想期間での見通しは上方修正されやすく、長期水準の見通しは上方修正されづらいと解釈されます(小清水ストラテジスト)。
目先1か月で、もっとも大切なイベントは9月19日(火)-20日(水)に開催される9月FOMCです。同会議ではドッツ(政策金利見通し)の2024年末分以降が上方修正され、FOMCによる利下げの想定が市場予想よりも小幅なものとなる可能性があります。
7-9月期決算は売上が前年同期比5%増で市場予想並みの一方、調整後EPSは同14%増で市場予想を33%上回りました。調整後営業利益率は42.3%へ前年同期の42.0%から改善し、41.3%への悪化を見込んでいた市場予想を上回りました。これがEPS見通しの引き上げにつながったとみられます。一方、運用資産の純増額は26億ドルにとどまり、617億ドルの市場予想を大きく下回りました。7-9月期は政策および市場の不透明感からリスク資産への需要が減退していた影響を受けたと考えられますが、市場が安定するにつれて回復すると期待できるでしょう。
よって、今後に関しては「市場予想を大幅に上回る好調な経済指標や、物価指標の発表」や「FRBによる米国経済のオーバーキル懸念が強まること」がない限り、米国の債券・株式市場は、少なくとも年末にかけて安定して推移することでしょう。特に、米国の長期金利が安定的に推移するようなら、高PERのハイテク・グロース株が買われ、株価指数を押し上げる見通しです。
まずは、前回決算発表時に大きく引き上げた5-7月期会社見通しを、超えられるかが注目となります。また、6-8月期を通じて成長軌道を維持し得るかも重要でしょう。IT投資自体は抑制傾向にありますが、マイクロソフトやアマゾン・ドットコム、アルファベットといった大手クラウド事業者は自然言語処理やレコメンドエンジンなど内外の作業用に、当社の最新GPU「H100」の導入を増やそうとしています。また、メタ・プラットフォームズはメタバース推進のため積極的なインフラ投資を続けており、これも当社製GPU の需要を押し上げるとみられます。こうした需要の恩恵を実際に受けられているか、注目が集まります。
今週も、小売や情報技術関連企業の2023年5-7月期決算発表が続きます。中でも、23日(水)引け後に発表が予定されるエヌビディアの決算には注目したいと考えます。当社の株価は2022年末比で約3倍(2.96倍,8/18時点)にまで上昇しており、当社を含む生成AI関連や半導体関連は、米国株全体をけん引するテーマとなっています。決算発表では、5-7月期の実績に加え、8-10月期見通し、AI関連の今後の市場動向などについてのジェンスン・ファンCEO(経営最高責任者)の見解に注目したいと考えます。
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