今晩は堅調か。昨日は米国債利回りの低下や7-9月期GDPの上方修正が支援となったものの、足もとの大幅高で高値警戒感が意識され主要3指数はほぼ横ばいとなった。ダウ平均は13.44ドル高(+0.04%)とわずかながら2日続伸した一方、&P500は0.09%安とわずかに反落し、ナスダック総合は0.16%安と小幅に反落した。ただ、月初来では、ダウ平均が7.19%高、S&P500が8.51%高、ナスダック総合が10.95%高となり、3指数がそろって今年最大の月間上昇率ペースとなった。年初来高値までは終値ベースでダウ平均が0.56%に迫り、S&P500とナスダック総合もそれぞれ0.85%、0.69%に迫り、年初来高値更新が視野入りした。引け後の動きでは、好決算を発表したセールスフォースが時間外で約9%上昇し、スノーフレークも約8%高となった。
月末の取引となる今晩はセールスフォースなどのハイテク株の堅調が期待されるほか、利上げサイクルの終了観測や年末ラリーへの期待なども背景に堅調な展開か。金融政策の見通しを巡っては、12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での政策金利据え置きが確実視されているほか、来年3月FOMCでは45%の確率で利下げが予想されており、年初来高値更新が視野入りした主要3指数の史上最高値更新期待も高まっている。経済指標では寄り前に、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注目する10月個人消費支出(PCE)価格指数が発表される。変動の大きい食品、エネルギーを除くコアPCE価格指数は9月の前年比+3.7%から10月は+3.5%に鈍化が予想されており、予想通りの鈍化となれば、来年の利下げ転換期待が一段と高まりそうだ。
今晩の米経済指標は10月個人所得・個人消費支出・個人消費支出(PCE)価格指数、新規失業保険申請件数、11月シカゴ地区購買部協会景気指数、10月中古住宅販売仮契約指数など。このほか、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁の講演も予定されている。企業決算は寄り前にクローガー、引け後にアルタ・ビューティーなどが発表予定。(執筆:11月30日、14:00)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
FRBが9月に示した経済見通しでは4回の利下げが想定されていた
金利の影響がどの程度のものとなるのかは、FRBの金融政策次第だ。12月のFOMCでは、FOMC各委員による見通しが示され、2024年の金利水準は3回分の利下げを示唆する内容となっている(表2参照)。ただし、1月のFOMCでは、「インフレ率が2%上昇に向けて持続的に推移しているとより確信が得られるまで、利下げするのは適切ではない」との見解が示され、FRBとしては、利下げを急がないスタンスのようだ。先に述べたように、インフレ率の低下スピードはかなり幅を持って見る必要があり、市場関係者の間でも、現時点では夏ごろの利下げ開始を想定する声が多い。
S&P500急落の引き金を引いたのは、FRBが示した2025年の利下げ見通しだ。FRBは18日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げを決め、政策金利を4.25 -4.50%に設定。同時に、FOMC後に示した経済見通しでは2025年末の政策金利の水準が3.9%になるとし、0.25%利下げが2回行われるとの方向性を示した。FRBが9月に示した経済見通しでは4回の利下げが想定されていた。利下げ見通しの後退は米国の金利の先高観を強め、S&P500にとっての下落圧力になった形だ。
また、FRBの慎重姿勢の背景には物価上昇の根強さもある。パウエル氏は記者会見で、11月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率が総合指数で前年同月比2.5%、食品とエネルギーを除いたコア指数で2.8%になるとの見通しに言及。「物価上昇率は横ばい状況にある」と述べた。パウエル氏は同時に、失業率が低位で安定していることなどを踏まえ、「米国経済は極めて良い状態にある」とも繰り返し、利下げを急ぐ必要がないとの立場も示した。「労働市場が健全である限りは、追加利下げを考慮する際に慎重でいることができる」とも話している。
19日の米国株式市場でNYダウは11日ぶりに小幅ながら反発。米7-9月期GDP(国内総生産)、米7-9月期コアPCE(個人消費支出)が市場予想を上回り、米10年債利回りは上昇したが、前日の大幅安の反動からNYダウは上昇してスタート。景気敏感株やIT関連株など幅広い業種が買われたが、決算発表で売上見通しが市場予想を下回ったマイクロン・テクノロジーの急落で半導体関連の一角が軟調な動きとなり、他の業種にも波及する展開。NYダウは上げ幅を縮める中、前日比15ドル高の4万2342ドルで取引を終了した。
パウエル氏が米国経済の健全さに太鼓判を押していることは、S&P500にとっては安心材料だといえる。ただし2025年1月20日に大統領に就任するトランプ氏は即座に関税引き上げや不法移民対策を打ち出すとしており、米国経済に起きる波乱が大きくなる可能性は拭えない。パウエル氏はトランプ氏の政策の影響は具体的な内容を踏まえて包括的に検討する考えだが、トランプ氏の政策と金融政策の変化はS&P500の今後の見通しにとって大きな不確定要素だといえそうだ。
先週の日経平均株価は-359.06円(-0.93%)。米半導体大手エヌビディアの決算を前に様子見ムードが広がる中、米利下げ観測の後退やロシア・ウクライナ情勢の不透明感を嫌気した売りが上値を抑えた。一方、エヌビディアの決算は実績・見通しともに予想を上回る結果となり、週末には半導体株に押し目買いが入った。
20日は米11月個人所得・および支出、米11月PCEデフレーター、12月ミシガン大学消費者信頼感指数が発表される。この中で、米11月個人所得のみ伸び率が前月比0.4%増と、10月の同0.6%増から鈍る見通しだが、果たしてどうか。
これまで見たように、2024年は2023年の高成長を支えた要因の多くが剥落する見込みだ。このため、現在、メインシナリオとして多くのエコノミストが予想するのは、年半ばにかけて金融引き締め効果の顕在化に伴い緩やかに景気減速しつつ、年後半から段階的な利下げなどに伴って回復軌道をとっていく。この結果、経済は2%程度の成長と前年よりは幾分減速するものの景気後退に陥ることなく、物価安定目標達成に向けた着実な道を描く。いわゆるソフトランディングと呼ばれるシナリオだ。ただし、ソフトランディングが実現するかどうかは、フロー面での堅調さがどの程度続くか、高金利の影響をどの程度緩和できるかといった点、すなわち見通しにくい状況にある物価の動向に大きく左右される、薄氷の上に立つものであることに留意が必要だ。アップサイド・ダウンサイド双方とも多様なシナリオがあり得ることを想定しておきたい。また、本稿で取り上げた事項以外にも、商業用不動産をめぐる状況や大統領選に伴う政策効果の剥落・変更などいくつかのリスクも存在しており、引き続き動向を追っていく必要がある。
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