韓流だけじゃない 新大久保の変化

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韓流だけじゃない 新大久保の変化
[紹介元] Yahoo!ニュース・トピックス – 経済 韓流だけじゃない 新大久保の変化

韓流だけじゃない 新大久保の変化

ここにあるのはジェンダーに関するある種の対等意識であり、それを支えているのは、自分に対する自信なのではないか。韓流ファンが自分の容貌をしばしば高く評価していることは先に触れたが、それに並行して自分に対する自信もかなり強く持っている。10代から30代の女性が平均して30.7%が自分に自信があると答えているのに対し、K-POPを好む層は38.0%、さらに Kドラマを好む層は47.7%と半数近くも自分に自信があると答えているのである(表2)。そうして自分に自信があるからこそ、韓流ファンの女性たちは男性に伍して十分に働けると考えているとともに、ジェンダー的な不平等はすでに解消されているとみなしていると推測できる。そうした女性たちからは、日本社会において女性がとくに不利な待遇にあるようには映らない。少なくとも自分は充分に成功できると信じられ、また不遇な女性がそばにいたとしても個人の努力の問題とおそらく判断されているのである。

90年代中頃になると、「コリアンタウン」として名高い職安通りに、韓国系店舗が顕在化していった。韓流ドラマ「冬のソナタ」が2003年に日本で放送されて以来、日本人客が爆発的に増加。続いて、東方神起、KARA、少女時代などK-POPにも人気が集まり、客層が広がっていった。

そこにやって来たのが韓流ブームだ。

日韓が共催したW杯で、大久保の飲食店では日本人と韓国人サポーターが肩を組んで互いのチームや選手を応援。街の知名度は一気に上がった。東方神起、KARA、少女時代など韓流スターが次々と人気を呼ぶと、韓国系の店は客層を日本人にも拡大。その数はピークの12年ごろには約500店に上った。

韓流の街というイメージが強い新大久保。しかし、駅から一歩出ればもっと「複雑」であることに気づく。行き交う人たちの出身国は2〜3ヶ国では済まなさそうだ。

東京・新大久保といえば、コリアンタウンとして知られていますが、近年は外国人が経営するエスニック食材店が増えるなど変貌を遂げています。なぜ新大久保に外国人経営者が集まるのか。新大久保在住のライターの室橋裕和さんがリポートします。

――今日はよろしくお願いします。本題に入る前に質問なんですが、新大久保に家を建てたということは、この街に魅力を感じていたんですか?

かつて2000年代中頃に『冬のソナタ』がブームになった際には、中高年の女性が韓流ブームを支えているといわれた。しかしそれから20年弱、すでにかなりの世代交代が起こっていることが、この調査からは浮かび上がるのである(図1)。

この意味で韓流文化を好む層には、フェミニズムからしばしば批判を受けてきたポスト・フェミニズム的な主体としての面を少なくとも垣間みることができる。ポスト・フェミニズム的主体とは、法的、社会的な変化によって男女差別はすでに基本的には解決されているとみなす者のことである。女性が外で働くべきと強く考えるなど、もちろん韓流ファンがたんに反フェミニズム的な意見を持っているわけではない。ただし彼女たちが外で働きたいのは、自分が優れているという自信を持っているからであり、この場合、現実の社会に根強く不平等が存在していることは否認されるばかりか、むしろ自分の優秀さを示すための都合の良い舞台状況として暗に利用されている可能性さえある。

だが新大久保はその例外である。2022年末にわたしたち(立教大学社会学部貞包ゼミ、プロジェクト研究C)が15歳以上の東京在住者を対象としてネットでおこなった調査(N=2032)からは、渋谷・新宿・池袋のターミナル駅の人気がたしかになお高いとはいえ、遊びや買い物でよく行く街としての新大久保の魅力は下北沢や原宿をすでに超えていることが浮かび上がる。その特徴は若年層の女性が多いことで、実際、性比でみると新大久保は銀座に続き女性が多く、また15~39歳の若年層の割合でみると原宿に続き東京で二番目に多い街になっているのである(表1)。

加えて言うと、なかなか便利なエリアでもある。わが家から徒歩10分圏内に、新大久保駅(山手線)、大久保駅(中央・総武線)、西早稲田駅(副都心線)、東新宿駅(大江戸線)とあるのは実にありがたい。新宿駅からも歩いて15分程度なので、新宿での飲み会の帰りは歌舞伎町をうろうろと新大久保まで流すのが楽しい。

さらに細かな特徴をあきらかにするために、韓流ファンのうち15歳から39歳までの女性たちにデータを絞ると、彼女たちはファッションへの関心が強く、友達も多く、流行には敏感で、自分の容姿はいいと思っていることが確認された(表2)。つまり韓流ファンは社交的で、流行を取り入れ、外面に気を使う傾向が強い。こうしたコミュニカティブな傾向は、全体と比べても、また日本のドラマやJ-POP、またはアニメなど別の趣味を持つ層と比べてもしばしば高くなっている。

他方、恋愛に関してみれば、韓流ファンはかならずしも強い関心を持っているとはいえない。実際、家族以外にとくに仲のいい異性がいる場合があきらかに多く、また既婚者もKドラマファンの場合は少なくない(平均25.5%に対し、26.9%)。にもかかわらず、恋愛に関して韓流ファンは少なくとも有意に強い関心を示しておらず、とくにK-POPファンの場合、他の趣味を持つ者と比べて恋愛に対する興味は低いほうにとどまっているのである(表3)。ではよりひろく異性との関係に広げると、どんな傾向がみられるのだろうか。興味深いのは、韓流ドラマを好んで見る人が、「日本で女性の地位は男性に比べて低い」とは、有意に思っていないことである。さらに同じ人びとは「女性は家の外で仕事をするほうがよい」という質問に対しては、有意に肯定的に答えている(表3)。

男性、また高年齢がすでに主流になっている秋葉原とくらべるとこうした特徴は対照的だが、ではなぜ新大久保が人気かといえば、韓流ブームが追い風になっていることはまちがいない。実際、その街によく行く者のうち、KドラマやK-POPを好む韓流ファンの割合は新大久保では77.3%でどの街より高く――15歳から39歳までの女性にかぎれば実に96.2%――なっているのである。

こうした状況には、もちろん歴史的経緯がある。もともと新大久保は、韓国系を中心としたエスニックな人びとを受け入れ成長してきた。近隣にある国際学友会の近くのアパートがもともと留学生を受け入れていたことに加え、バブルの膨らみとともに1980年代以降、移住労働者も増加し始める。なかでも本国での旅券発行条件が緩和して以降、歌舞伎町で働く韓国から来たホステスが数多く暮らし始めることで、新大久保は韓国色を強めたのである。新大久保はこうして池袋や高田馬場など、後に成長する他のエスニックタウンに先駆け、20世紀末より停滞する東京のなかで例外的な発達を遂げた。とはいえ現在の新大久保のにぎわいは、まったくその延長線上にあるわけではない。少なくとも表面上、近年の新大久保はエスニックな人びとのためではなく、むしろ若い日本人のための街として観光地化されている。

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