日銀の利上げ巡る判断 集まる注目

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日銀の利上げ巡る判断 集まる注目
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日銀の利上げ巡る判断 集まる注目

Takaya Yamaguchi Kentaro Sugiyama [東京 24日 ロイター] -日銀の追加利上げを巡り、政権・与党内で議論が百出している。現職閣僚に続き、党幹部からも円安への危機感から利上げに前向きと受け止められる言及があった。一方、拙速な利上げになお慎重な声も残り、日銀が30、31日の金融政策決定会合でどう判断するかは、これまで以上に注目の度合いを増している。

ただ、1996年以降、無担保コールO/Nレート誘導目標が0.5%を超えたことがないことから、日本経済には0.5%が限界では、という意見や、自然利子率のマイナスも考えられるし、長期的なインフレ期待は1%~1.5%程度にアンカーさせるのが精一杯だから、中立金利は1%近辺では、という意見もあり、コンセンサスはおろか多数意見すら定まっていないのが実情だ。ただ長期金利の水準は、これまで考えていたより、もしかしたら意外に早く、高くなるのでは?と考える投資家が増えれば影響は大きい。引き続きイールドカーブの動きを注視するとともに日銀の情報発信に注目していく必要がありそうだ。

日銀の大規模金融緩和政策の終わりが近づいている。日銀は2024年1月22日、23日に金融政策決定会合を開催。市場の一部には物価と賃金の好循環が見え始めておりマイナス金利の解除、或いは解除に向けたフォワードガイダンスの変更等があるのではとの思惑もあったようだが現行の金融政策を維持、文言の修正もなかった。注目された「展望レポート」では2024年、2025年の消費者物価(除く生鮮食品)の見通しをそれぞれ2.4%(前回2023年10月時の2.8%から下方修正)、1.8%(前回2023年10月時の1.7%から上方修正)としている。

そして本日1月31日には1月22日、23日金融政策決定会合の「主な意見」が公表された。この中でも物価安定の目標の実現が「十分な確度をもって見通せる状況にまで至っていない」とする意見はあるが、「確度は引き続き少しずつ高まっている」、「賃金と物価の好循環の実現の機運が高まっている」、「不確実性はあるものの、物価安定の目標の実現が見通せる状況になってきた」「賃金と物価の好循環実現の確度は更に着実に高まったと捉えられる」といった意見が目立ち、12月の決定会合と比べ前向き派の発言が目立っている印象だ。そうした目標実現の確度が高まりつつあるという状況の中で出口についての議論が始まったことが分かる。政策変更の順番、出口以降の金利パス、ETF、J-REITの買入枠の扱いと具体的な政策手段についての意見も交わされている。こうした議論があっての総裁記者会見なので政策転換は近いと感じさせる内容だったことも納得できる。日銀の大規模金融緩和政策の終わりは確実に近づいている。

しかし、2023年11月13日高値151.90円から12月28日安値140.24円までの1か月半で11.66円の下落となったケースもあるため、6月4日安値154.54円を割り込む場合は昨年末にかけての下落時に近い展開へ進む可能性もあると注意したい。特に今週の米GDP統計が冴えずに6月PCEデフレーターが顕著に鈍化して米国の9月利下げが確実視されるようだとドル安が再燃しやすくなり、7月末の日銀会合へ向けて追加利上げ観測が強まり円安けん制的な要人発言や追撃的な市場介入がある場合はこのケースで推移してゆく可能性が高まると思われる。

また今の日本経済がデフレ脱却という観点で最終段階にあるのか、そこの認識は?という質問に対し「私どもの政策の判断基準は、2%のインフレ率の持続的・安定的な実現というところです。デフレを文字通りとりますと、マイナスのインフレ率ということですので、そういう状況とは、もうかなり遠いところに現在来ている」とし、日銀としては物価と賃金の好循環による物価安定目標の実現が高い確度で判断できれば金融政策の正常化を進めることに障害はないという認識を示した格好だ。

金利の乱高下というのは長期金利(債券市場)ももちろんだが、短期金利の乱高下の方が怖い。これまで無風だった短期金融市場で金利がマイナスからゼロ、プラス領域に変わっていくことで市場が混乱して必要な資金が確保しにくい、金利が急騰するというような状況は何としても避ける必要がある。日銀が「不連続性が発生するような政策運営は避けられる」と考えていることは市場に一定の安心感をもたらすものと言えよう。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる利下げ開始時期を巡る不確実性(市場では9月FOMCでの25bp利下げ開始がほぼ織り込み済みとなっているため、年内3回の利下げ織り込みが始まらない限り、ここから更にドルを売り込み材料にはなり得ない。トランプ前大統領が「FRBは秋の大統領選前に利下げをするべきではない」と牽制していることもドル売りを思いとどまらせる要因。今週発表された米経済指標も総じて良好な数字)や、(2)日銀による利上げ開始時期の後ずれ観測(本邦1ー3月期実質GDP確報値が大幅に下方修正されたことや、本邦5月毎月勤労統計調査の実質賃金が前月を下回る冴えない結果となったこと等を踏まえると、日銀が今月末の会合で追加利上げに踏み切る可能性は乏しい。

また、金融政策の正常化、マイナス金利の解除に際して、市場で金利が乱高下することは避ける必要があるが、解除にあたっての留意点は?という質問に対して「現時点での物価・経済・金融見通しを前提としますと、大きな不連続性が発生するような政策運営は避けられる」とした。この「不連続性は避けられる」という意味について、事実上終息させているがYCCの枠組みは残し金利の乱高下に備えるという意味だとする意見、閾値の前後で政策スタンスを大きく変えるのではなく物価・経済・金融情勢の変化に合わせて動かすので市場を混乱させるようなことはしないという意味だとする意見、解除後もインフレが加速していく状況ではなく一気に金利水準を引き上げるよことはないので不連続性は避けられるという意味だとする意見と様々だ。いずれにしても日銀は市場が混乱して金利が乱高下するようなことは避けたいし避けられると考えているということだ。

植田総裁は2024年5月27日、日銀金融研究所主催の「2024年国際コンファランス」で、「インフレ予想をゼロ%から押し上げることには成功したように思いますが、それを今回は2%の目標値にアンカーしなければなりません」とし、今後の課題のうち「主要な一つが、自然利子率(r*)をできるだけ正確に把握すること」だとした。日銀も“金利のある世界”に戻れることに自信を深めているようだ。

また、日本では、河野デジタル相がインタビューで、エネルギー食料品のコスト引き下げるために日銀に利上げを要請したほか、神田財務官が投機による過度な変動あれば適切に対応するとの発言を受けて円買いに拍車がかかった。

今回は24年度が電気料金の上昇などを踏まえて上方修正し、25年度と初めて示す26年度は2%程度とする見通しだ。日銀は物価上昇の勢いを点検し、追加利上げの時期を探る。

総裁は「賃金から販売価格への波及も、サービスを含む価格が緩やかな上昇傾向にあるということや、先日の支店長会議での報告などを踏まえると、賃金から販売価格への波及も少しずつ広がっている」という認識を示した。12月の決定会合後の記者会見で企業のスタンス、価格動向等について「データだけでなくヒアリング情報を含め、丹念に点検していくつもり」としていたが、1月11日に行われた支店長会議での各支店から地域経済の現状を踏まえても好循環実現の確度が上がったということになる。支店長会議に向けて収集された情報は「地域経済報告-さくらレポート」(表紙が桜色)として公表されている。これまであまり注目されてこなかったが、今後は貴重な情報源として注目が集まる可能性もあるだろう。

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