南アフリカランド 月間為替予想「南ア新政権の手腕を見極めながら、米大統領選挙や日米金融政策などにも注意」FXレポート 2024年8月

南アフリカランド 月間為替予想「南ア新政権の手腕を見極めながら、米大統領選挙や日米金融政策などにも注意」FXレポート 2024年8月
 

南アフリカランド相場見通し

南ア新政権の手腕を見極めながら、米大統領選挙や日米金融政策などにも注意

南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと基本的に連動性が高い(第1図)。


第1図:南アフリカ・ランド対ドル相場とドル名目実効為替レート

5月29日の総選挙の結果、ラマポーザ大統領率いる与党アフリカ民族会議(ANC)が、マーケット・フレンドリーとみられている民主同盟(DA)などと協力して国民統一政府(GNU)を目指すとしたことが好感され、南アフリカでは、6月上旬から株、債券、通貨のトリプル高の様相となっていた。連立内閣の構成を巡る交渉は長引いたものの、6月30日に新内閣の顔ぶれが正式に発表された。閣僚ポスト32のうちDAから6名が入閣するなどしており、市場の新たな政府に対する期待は維持されているようだ。一方で、電力問題をはじめとして南アフリカ経済の前途は課題山積であることに変わりは無く、市場も今後は新たな政府の手腕を見極めようと、次第に冷静になりつつある印象だ。

6月の南アフリカ・トリプル高局面では、ドルが上昇する場面でもランドは対ドルで異例の大幅上昇となっていたが、足元は次第に従来のようなドル高ならランド安といった推移に回帰しつつある。米国では、7月以降もインフレ鈍化を示唆する指標が相次ぎ(第2図)、FRBによる9月の利下げ開始を見込む動きが強まりつつあり、7月に入りドルが下落に転じていた。


第2図:米国CPI前年比上昇率

一方、7月半ば以降は、トランプ前大統領が政権に返り咲いた場合、対中半導体規制を大幅に強化するといった報道などを受けて市場のリスク選好が後退し、ドルが持ち直す動きもみられている。ランドはこうした動きに振らされる展開となっている。対円では7月11,12日の本邦通貨当局による円買い為替介入と思われる動きなどを受けて、ランド円は大きく下落した。今後も新たな南アフリカ政府の政策運営と共に、FRBの利下げのタイミングや米大統領選の行方、日銀・本邦通貨当局の動きなど外部環境にも引き続き留意して行く必要があろう。

南アフリカランド/円 週足チャート

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店頭FX(外国為替保証金取引)における新興国通貨取引のリスクについて
当社取扱通貨のうち、いわゆる新興国通貨に分類されるトルコリラ・南アフリカランドおよびメキシコペソ(MXN)はインターバンク(銀行間為替市場)における流動性が主要国通貨に比べ相対的に低く、経済指標発表のみならず金融政策変更やその他政治的要因、さらには地政学的リスク等の要因による突発的な相場急変動が起こりやすい環境下にございます。また、こうした急変動時には実勢インターバンクレートのスプレッド(BidとAskの差)も平常時に比べ大幅に拡大する傾向にあり、その場合には当社でもやむなく提示スプレッドを一時的に拡大することがございます。あわせて、相場状況により「ダイレクトカバーの対象となる注文」の基準Lot数(最低数量)を一時的に変更する場合がございますので、あらかじめご承知おきくださいますようお願いいたします。これら新興国通貨のお取引、およびこれらを対象とするキャンペーンへのご参加に際しては、以上につきあらかじめご留意のうえ、ポジション保有時、特に法人会員様の高レバレッジ取引における口座管理には十分ご注意くださいますようお願い申し上げます。以上の新興国通貨それぞれのリスク、および直近時点でのリスクレポートにつきましては、こちらのページをご参照願います。
新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
 
橋本 将司氏

公益財団法人 国際通貨研究所 経済調査部 上席研究員
橋本 将司(はしもと・まさし)氏
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融業界や金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。現在国際通貨研究所において、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。

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南アフリカランド 月間為替予想 南ア新政権の手腕を見極めながら

注1 5月23日付レポート「総選挙を前に強含む南アランドは「実力」を反映した動きなのか」

中銀は、今後の金融政策は経済指標などのデータを見ながら慎重に決定する方針です。次回の金融政策委員会は3月25日~27日に開催される予定であり、物価上昇率の上ぶれと経済成長率の下ぶれの両方が懸念されるなか、海外中銀の金融政策の動向や為替市場の動きなども慎重に見極めながら政策を決定すると思われます。景気の先行き不透明感、米国のQE3の縮小、新興国経済を巡る不安心理などにより、ランドは今後も不安定な動きが続きそうです。また、南アフリカは経常収支の赤字が大きいことから、投資資金の不安定な動きには今後とも注意が必要です。

一方、7月半ば以降は、トランプ前大統領が政権に返り咲いた場合、対中半導体規制を大幅に強化するといった報道などを受けて市場のリスク選好が後退し、ドルが持ち直す動きもみられている。ランドはこうした動きに振らされる展開となっている。対円では7月11,12日の本邦通貨当局による円買い為替介入と思われる動きなどを受けて、ランド円は大きく下落した。今後も新たな南アフリカ政府の政策運営と共に、FRBの利下げのタイミングや米大統領選の行方、日銀・本邦通貨当局の動きなど外部環境にも引き続き留意して行く必要があろう。

5月29日の総選挙の結果、ラマポーザ大統領率いる与党アフリカ民族会議(ANC)が、マーケット・フレンドリーとみられている民主同盟(DA)などと協力して国民統一政府(GNU)を目指すとしたことが好感され、南アフリカでは、6月上旬から株、債券、通貨のトリプル高の様相となっていた。連立内閣の構成を巡る交渉は長引いたものの、6月30日に新内閣の顔ぶれが正式に発表された。閣僚ポスト32のうちDAから6名が入閣するなどしており、市場の新たな政府に対する期待は維持されているようだ。一方で、電力問題をはじめとして南アフリカ経済の前途は課題山積であることに変わりは無く、市場も今後は新たな政府の手腕を見極めようと、次第に冷静になりつつある印象だ。

南アフリカでは29日に5年に一度の議会下院(国民議会)総選挙が行われた。今回の総選挙を巡っては、1994年の民主化以降一貫して与党の座を守ってきたANC(アフリカ民族会議)の動向に注目が集まってきた。2021年に実施された統一地方選挙では同党の得票率が初めて50%を下回り、党勢低下が意識されてきたなかで明確な退潮が確認されたほか、その後の世論調査においてもANCの支持率は50%を下回る推移が続くなど厳しい選挙戦を迫られることが予想された。こうした背景には、ここ数年の同党政局を巡る『政治とカネ』の問題、党内派閥争いの激化を受けて同党支持者の間に『うんざり感』が強まっていること、長期に亘るANC政権の下で同国経済は一向に改善せず社会経済格差が深刻化していることなどが挙げられる。最終盤にかけては低下傾向が続いたANCの支持率に下げ止まりの兆しがみられたほか、一定程度が投票行動を明確にしていなかったため、最終的には政治の安定を重視してANCの得票率が下支えされるといったいわゆる『逆バネ効果』を見込む向きもみられた。なお、このように総選挙後の政局を巡っては如何様にも動き得る状況にあるにも拘らず、このところの同国通貨のランド相場は強含みする動きをみせるなどそうした懸念を無視しているような展開をみせてきたものの(注1)、この背景にはこのところの国際金融市場において米ドル高の動きに一服感が出ていることに加え、主要鉱物資源であるプラチナや金など非鉄金属価格が底入れしていることが影響したと考えられる。現時点においては開票中ながら、ANCの得票率は40%台で推移するなど世論調査で予想された通りの動きをみせており、ANCは第1党の座を維持するも獲得議席数が初めて半数を下回る可能性が高まっており、今後の政権運営を巡っては他党との連立が避けられなくなっている。各種報道によると、開票率49.39%段階における主要政党の得票率はANCが42.90%に留まり、白人が率いる最大野党のDA(民主同盟)は23.37%、ANCの前議長で前大統領のズマ氏が率いる新党のMK(民族の槍)は10.26%、2019年の前回総選挙で躍進した左派政党のEFF(経済的解放の闘士)は9.54%と続いている。今後はIEC(独立選挙管理委員会)による最終結果の発表を受けて、14日間のうちに選出された新たな下院議員により大統領、議長、副議長の選出を行う手続きが進められるが、円滑な手続きの進捗に向けてANCは他党との連立協議が必要になる。金融市場が最も好ましいと判断するのは、同国においてヨハネスブルク=プレトリアに次ぐ経済規模を有するケープタウンを擁する西ケープ州で与党の座を担うほか、その経済政策で実績を上げているDAとの大連立であろう。ただし、国民の8割を黒人が占めるとともに、ANC支持層の間には依然として白人が率いる政党への反発が根強いことを勘案すれば、こうした『抱き付き作戦』は反ってANC支持層の離反を招く懸念を孕むなどハードルが高いのが実情であろう。他方、MKを率いるズマ氏は長らくANCの中枢に居たことを勘案すれば最も反発が低いと見込まれる一方、ここ数年のANC内ではラマポーザ大統領派とズマ前大統領派の派閥争いが激化するとともにズマ氏が党を割る一因になったことを勘案すれば、仮に両党が連立を組んでも穏便に事態収束が図られるかは見通せない。さらに、EFFはマルクス・レーニン主義や反資本主義を党是とするほか、白人が所有する土地の強制収容や資源関連産業の国有化などポピュリズム色が強い主張を展開しており、経済や外交政策面での混乱は必至と見込まれる。また、ここ数年の世界経済を巡ってはコロナ禍やウクライナ戦争などを経て欧米などと中ロとの間で分断の動きが広がるなか、MKやEFFは反欧米色の強い主張を展開しており、ラマポーザ政権が外交政策面で親ロ、親パレスチナ色を強めるなど欧米などと距離を置く姿勢をみせてきたなかでそうした動きが一段と加速する事態も予想される。そうなれば欧米などをはじめとする海外からの投資が萎縮して実体経済の足かせとなる懸念も高まるなど、政治のみならず、経済を巡っても混迷の度合いが一段と増すことも考えられる。こうした懸念を反映して、足下のランド相場は一転して調整の動きを強めるなど風向きが一変する様相をみせている。中銀は30日の定例会合において、総選挙直後というタイミングも影響して政策金利を6会合連続で8.25%に据え置くなど中立姿勢を維持したが、先行きのインフレを巡ってリスクは均衡する一方で期待は高止まりしており、早急に目標実現を図る必要があるとの認識を示している。他方、ランド相場の混乱は輸入インフレを通じた新たなインフレ要因となる可能性もあり、景気低迷が続くなかで物価抑制に通貨防衛という難しい対応を迫られることも予想される。当面のランド相場は商品市況の動き(プラス要因)と政治を巡る不透明感(マイナス要因)の綱引きが続くであろう。

南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと連動性が高い(第1図)。

南アフリカ・ランドの対ドル相場は、グローバルな為替市場におけるリスクセンチメント、そしてそれを大局的に反映して変動する安全通貨であるドルの名目実効為替レートと基本的に連動性が高い(第1図)。

南アの経済指標は総じてマチマチな内容が続く中、4月30日~5月1日に次回FOMCを控え、当面は米国のインフレ・金融政策見通しと連動したグローバルな金融市場動向にランドも影響を受け易い状況が続きそうだ。尚、5月29日の南アフリカ総選挙では与党アフリカ民族会議(ANC)の苦戦が報じられており、先行き政治的不透明感が徐々にランドのリスク要因となって来る展開にも要注意だ。

6月の南アフリカ・トリプル高局面では、ドルが上昇する場面でもランドは対ドルで異例の大幅上昇となっていたが、足元は次第に従来のようなドル高ならランド安といった推移に回帰しつつある。米国では、7月以降もインフレ鈍化を示唆する指標が相次ぎ(第2図)、FRBによる9月の利下げ開始を見込む動きが強まりつつあり、7月に入りドルが下落に転じていた。

ランドの大幅な下落による物価上昇圧力への警戒が利上げの背景です。中銀は今回、消費者物価指数の上昇率の予想を2014年は前年比平均+6.3%、2015年は同+6.0%と、前回昨年11月の予想からいずれも0.6%ずつ上方修正しました。加えて、上昇率が目標レンジ(同+3.0%~+6.0%)を相当期間上回る可能性や、さらに上ぶれする可能性も指摘しました。足元では、アルゼンチンペソの大幅な下落の影響などを受けて新興国通貨が急落し、不安定な動きが続いています。中銀は、米国のQE3の縮小などにより投資資金が南アフリカなどの新興国から流出することを警戒し、利上げによりランド安を抑える狙いと見られます。利上げの影響や、中国など新興国の景気に減速の兆候が見られることなどから景気の先行き不透明感は強まっています。中銀は利上げを決定しながらも、「金融政策は依然緩和的」として景気にも配慮しています。

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