【市場概況】東京為替見通し=ドル円弱含みか、7月実質賃金と高田日銀審議委員の発言に要注目

【市場概況】東京為替見通し=ドル円弱含みか、7月実質賃金と高田日銀審議委員の発言に要注目

4日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、7月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が767.3万件と予想の810.0万件を下回り、米10年債利回りが一時3.7515%前後まで低下したことで143.71円まで値を下げた。ユーロドルは低調な米雇用指標を受けて1.1095ドルまで上昇。ユーロ円は159.26円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りの低下や明日発表される米8月雇用統計への警戒感などから軟調推移が予想される中、7月実質賃金と高田日銀審議委員の発言に注目する展開が予想される。

 8時30分に発表される7月毎月勤労統計(現金給与総額)では、実質賃金に要注目となる。6月の毎月勤労統計では、現金給与総額が前年比+4.5%と、5月の同+2.0%から上昇率が急拡大したことで、実質賃金も前年比+1.1%(5月:同▲1.3%)と、22年3月以来のプラスとなった。7月の実質賃金もプラス圏を維持するのか、そして上昇率も拡大しているのかに要注目となる。

 日本銀行は8月20日に日銀調査統計局の職員がまとめたインフレ圧力が持続する可能性を示唆する2本の論文を公表している。論文では、日本の慢性的な人手不足が賃金に与える潜在的な影響や、サービス業における企業の価格設定行動の変化に注目していた。

 サービス価格に関する論文では、「賃金上昇圧力が高まるなかで、企業の価格設定行動も変化してきている」と指摘。人手不足の影響に関する論文では、国内の労働市場における構造変化が強調されており、労働者の賃上げ要求に影響が及ぶ可能性がある、と指摘していた。

 植田日銀総裁は、7月31日の日銀金融政策決定会合の後の記者会見、8月23日の衆参両院で開催された閉会中審査、9月3日の経済財政諮問会議で、物価の見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整する方針を示していた。

 実質賃金がプラス圏を維持していけば、物価の見通しが実現していくことになり、10月か12月の日銀金融政策決定会合で、金利の壁になるとは認識していないと述べた0.50%への追加利上げの可能性が高まることになる。

 また、10時30分からの高田日銀審議委員のあいさつにも注目しておきたい。前回2月29日の講演ではマイナス金利解除に前向きな「タカ派」姿勢を示したことで、ドル円は150円台から149円台前半まで急落した。

 当時の高田日銀審議委員は、植田日銀総裁や内田日銀副総裁によるマイナス金利解除に向けた地均し発言に沿った発言をしており、本日も、0.50%への追加利上げに言及するのか否かに注目しておきたい。

(山下)

・提供 DZHフィナンシャルリサーチ

[紹介元] 外為どっとコム マネ育チャンネル 【市場概況】東京為替見通し=ドル円弱含みか、7月実質賃金と高田日銀審議委員の発言に要注目

市場概況 東京為替見通しドル円弱含みか 7月実質賃金と高田日銀審議委員の発言に要注目

地域別にみると、米国経済は、個人消費に底堅さもみられるが、物価上昇や、FRBによる利上げの継続を受けて、減速傾向が続いている。個人消費は、物価上昇による下押し圧力が続いているが、これまで積み上がってきた貯蓄や、堅調な労働市場が引き続き下支え要因となるもとで、底堅く推移している。住宅投資は、利上げを受けて減少している。設備投資は、小幅の増加を続けているが、生産は、緩やかに減少しており、製造業の業況感も、幾分悪化している。物価面をみると、PCEデフレーターの前年比は、ピーク時からは鈍化しているが、ウエイトの大きい家賃を中心とするサービス価格の伸び率拡大を受けて、引き続き5%台半ばの高い上昇率となっている。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合で柔軟化した方針に従ってイールドカーブ・コントロールが運用されるもとで、長期金利は、金融市場調節方針と整合的に推移しているとの認識で一致した。大方の委員は、長期金利は比較的安定して推移しており、イールドカーブ・コントロールの運用について、追加的な見直しを行う必要はないとの見解を示した。このうち一人の委員は、運用柔軟化の意図は金融市場に概ね正確に伝わり、不連続を生じさせることなく、所期の目的を達成できたとの認識を示した。ある委員は、先行きの物価見通しが上振れるかが不透明な中、運用を柔軟化した現行のイールドカーブ・コントロールのもとで、物価動向を見極めることが重要であると指摘した。別の一人の委員は、前回会合以降、懸念していた運用の柔軟化に伴う金利の大幅上昇を含む金融環境の急激なタイト化はみられていないことを踏まえると、現在の運用方針を継続することが適切であるとの見解を示した。一人の委員は、前回会合以降、米国長期金利の大幅な上昇がわが国の長期金利の上昇圧力となったことも踏まえると、前回会合は柔軟化のタイミングとして適切だったと指摘した。この間、複数の委員は、8月の債券市場サーベイ等をみると、柔軟化もあって市場機能に一部改善の動きがみられるが、なお水準は低いままとなっているとの見解を示した。このうち一人の委員は、この背景には、日本銀行が、引き続き巨額の国債を買い入れているため、流動性が低い状況には変わりがないとの見方もあると指摘した。別の一人の委員は、柔軟化を経ても、市場不安定化のリスクや市場機能面での副作用はなお残存していると指摘したうえで、イールドカーブ・コントロールが、この間の歴史をみても、多くの役割を果たした段階にある中、市場機能を重視した価格形成を行うことは、将来出口に向かう場合に、債券市場を中心とした流動性改善なども含め、市場参加者が適応していくための準備にも資するとの認識を示した。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、金融市場調節上の様々な工夫により、金融市場調節方針に沿って、長期金利はゼロ%程度で推移しているとの認識を共有した。何人かの委員は、現在は、市場機能改善のために講じてきた様々な措置の効果を見極める段階であると述べた。複数の委員は、イールドカーブの形状をみると、歪みは引き続き観察されているものの、共通担保資金供給オペや国債補完供給の運用面の工夫などもあって、ひと頃に比べれば総じてスムーズとなっているとの認識を示した。また、ある委員は、一部のカレント銘柄を含むイールドカーブの歪みに言及し、市場機能に配慮した調節運営の重要性を指摘したうえで、今後、利回りが円滑に形成されていくかどうかを含め、市場の動向については注視していく必要があるとの見解を示した。一人の委員は、イールドカーブ・コントロールの運用見直しの市場機能への効果を見極めるにはまだ時間が必要であるが、消費者物価上昇率が実際に低下し、それを受けて市場の金利見通しが落ち着いてくれば、イールドカーブの歪みも是正されていくとの見方を示した。そのうえで、多くの委員は、イールドカーブの長期ゾーンにおいて市場機能が低下した状態が続いているほか、社債市場では、発行スプレッドの拡大は一服しているものの、国債市場の機能度の低下の影響は残っており、引き続き注視が必要であるとの認識を共有した。複数の委員は、ベースレートである国債金利に歪みがみられると、社債の発行時や購入時における利回りの目線が定まりにくくなると指摘した。この点について、ある委員は、イールドカーブの歪みは十分に是正されたとは言い難いものの、現時点では、企業金融面への影響は限定的であるとの見方を示した。この間、一人の委員は、今後のマーケットの状況、経済、物価や賃金の動向を、謙虚かつ真摯にみていき、必要な場合には、社債市場やスワップ市場を含めた市場機能の改善を図り、金融緩和の効果が実体経済に持続的・効果的に伝わるようにすることが必要であると述べた。

先行きの金融政策運営の基本的な考え方について、委員は、現時点では、賃金の上昇を伴う形で、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、イールドカーブ・コントロールのもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要があるとの見解で一致した。一人の委員は、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現するためには、賃金上昇を伴い、それが価格転嫁されることでサービス価格を中心とした物価上昇が定着することが必要であると述べたうえで、金融緩和の継続を通じて、賃上げのモメンタムを支えていくことが重要となると指摘した。別の一人の委員は、最近の企業の賃金・価格設定行動の変化は、タイトな労働市場に海外からのインフレ圧力が重なることで生じたものであり、この変化の芽を大切に育てていくべきであると指摘した。ある委員は、「物価安定の目標」の達成の期待が確信に変わるには、企業の改革への取り組みに加え、新陳代謝やスタートアップ企業の資金調達強化等の取り組みが必要であるとの認識を示したうえで、日本経済は今が正念場であり、企業の改革意欲を後押しすることが求められる局面であると指摘した。こうした中、何人かの委員は、先行き、中小企業も含めた来年の賃上げ動向や、その物価との相互関係をしっかりと確認する必要があるとの考えを述べた。このうち一人の委員は、予想物価上昇率に上昇の動きがみられ、やや距離はあるが、「物価安定の目標」の達成に近づきつつあるため、今年度後半は、来年に向けた賃上げ動向も含め、その見極めの重要な局面となるとの認識を示した。この間、別の一人の委員は、2%の持続的・安定的な物価上昇の実現が、はっきりと視界に捉えられる状況にあると考えており、来年1~から3月頃には見極められる可能性もあるとの見解を示した。

わが国の金融環境について、委員は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にあるとの見方で一致した。また、委員は、企業の資金調達コストはきわめて低い水準で推移しているという認識を共有した。これらの点に関し、ある委員は、金利のボラティリティの高まりから社債発行がしづらいという意見も一部に聞かれるが、金融環境は総じて緩和的な状態が継続しているとの見方を示した。別のある委員は、変動金利型貸出のベースレートとなる短期金利は落ち着いているほか、固定金利型貸出や社債発行のベースレートとして相応のウエイトを占める国債金利も短中期ゾーンでは上昇が抑制されていると指摘した。また、社債市場について、ある委員は、発行の閑散期にあるため、確定的な評価をするには時期尚早であるが、国債市場の機能度低下の影響は引き続き残っているほか、発行年限の短期化や銀行貸出へのシフトも観察されており、引き続き注視していく必要があると述べた。

地域別にみると、米国経済について、委員は、個人消費に底堅さもみられるが、物価上昇や、FRBによる利上げの継続を受けて、減速傾向が続いているとの認識を共有した。多くの委員は、利上げの継続にもかかわらず、労働需給は依然として逼迫しており、FRBの今後の政策対応や、その実体経済や金融市場等への影響についてよくみていく必要があるとの認識を示した。一人の委員は、賃金上昇を背景としたインフレは、コストプッシュによるインフレと比較して、持続性が高いと考えられるため、その抑制は容易ではないとの見方を示した。

先行きの金融政策運営方針について、委員は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく、との基本方針を共有した。そのうえで、委員は、「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、との考え方を共有した。また、委員は、引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じることで一致した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、委員は、従来の方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。また、長短金利操作の運用に関して、委員は、従来の運用を維持することが適当であるとの認識を共有した。

中国経済について、委員は、減速した状態から持ち直しつつあるとの認識で一致した。複数の委員は、当面は、経済活動の正常化に伴う回復が期待されるものの、不動産市場の低迷などにより経済活動が下押しされており、先行きについてはきわめて不透明感が強いとの見方を示した。一人の委員は、若年層の高失業率の長期化や、地政学的リスクを受けた対中投資の減少等により、経済の低迷が長引く可能性もあると述べた。

先行きの金融政策運営の基本的な考え方について、委員は、経済・物価情勢を踏まえると、現行の金融緩和を継続することにより、賃金の上昇を伴う形で「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成することが重要であるとの見解で一致した。複数の委員は、「物価安定の目標」の実現に向けて良い兆しがみられるなど、環境は変化しつつあるとの見方を示した。この点に関し、一人の委員は、2%の「物価安定の目標」と整合的な物価と賃金の好循環が始まったと考えるにはまだ距離があると述べた。複数の委員は、イールドカーブの歪みなどの副作用もあるだけに、効果と副作用とのバランスの検証も含め、市場の機能度を予断なく見極めていく必要があるが、現在は大規模緩和を粘り強く続けていくべき局面であるとの見解を示した。一人の委員は、持続的な賃金上昇に必要な供給サイドの改革が進み、物価と賃金の好循環への期待が確信に変わるよう、粘り強く金融緩和を継続し、企業の改革の動きを支える必要があると述べた。別の一人の委員は、足もとの物価高を受けて緩和の見直しを求める意見も聞かれるが、物価に関するノルムの転換という積年の課題の解決の重要性を踏まえると、政策転換が遅れるリスクよりも、拙速な政策転換によって目標達成の機会を逃すリスクの方を重視すべきであると述べた。ある委員は、金融政策の修正は、金融市場や幅広い経済主体に影響を与えるものであることから、慎重に検討・議論する必要があると述べた。別のある委員は、長期にわたる低金利環境からの出口局面では、資金運用・調達の環境変化に対して、企業や家計、金融機関の備えが十分かどうか、慎重に確認する必要があるとの見解を示した。

「(1)次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、4%程度となっているとの評価で一致した。ある委員は、2月の東京都区部の消費者物価は、予想通り、プラス幅がしっかりと縮小したと述べた。予想物価上昇率について、委員は、上昇しているとの見方で一致した。

経済・物価見通しのリスク要因として、委員は、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高いとの認識で一致した。そのうえで、委員は、金融・為替市場の動向や、そのわが国経済・物価への影響を十分注視する必要があるとの見方を共有した。ある委員は、中国における経済活動の正常化の急速な進展は、世界経済に好影響を与えるとみられる一方、資源価格などの押し上げ要因となる可能性もあるとの見方を示した。何人かの委員は、企業の価格転嫁の動きが継続する中で、国際商品市況の想定以上の上昇等がみられた場合には、コストプッシュ圧力の減衰が後ずれする可能性があると述べた。

雇用・所得環境について、委員は、全体として緩やかに改善しているとの見方で一致した。多くの委員は、今年の春季労使交渉における賃上げの動きは、大企業だけではなく中小企業にも広がっているとみられると指摘した。一人の委員は、労働需給の逼迫を背景に、一部の企業の賃上げが、その競合相手や周辺地域の企業の賃上げにもつながっていくといった動きもみられてきていると述べた。また、複数の委員は、前向きな企業の賃金設定行動がみられているだけに、中小企業を含め、高めの賃上げが実現する可能性が高まっているとの見解を示した。複数の委員は、先行き、これまで労働供給の増加を支えてきた女性や高齢者の労働参加の増加ペースは鈍化していくと見込まれており、これが、労働市場の需給の引き締まりやそれに伴う賃金上昇圧力につながる可能性もあるとの見方を示した。他方、何人かの委員は、地方の中小企業では賃上げそのものが難しいという声も聞かれていると述べたうえで、労使交渉の結果だけでなく、その後の賃上げの広がりと持続性について見極めていく必要があるという認識を示した。この間、ある委員は、持続的な賃上げの実現には、従業員のエンゲージメントを高めるような職務に応じた賃金カーブへの改革や、コア事業を強化するポートフォリオ改革、労働の高付加価値化や高生産性事業への労働力のシフトが重要であるとの見方を示した。この委員は、中小企業の賃上げ率向上には、適正な価格転嫁と持続的な付加価値向上が重要であると付け加えた。

これらの議論を踏まえたうえで、委員は、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至れば政策の修正を検討することになるが、その時期や具体的な対応については、その時々の経済・物価情勢や見通しに依存するため、不確実性が大きく、現時点では決め打ちできないとの認識を共有した。ある委員は、イールドカーブ・コントロールの枠組み等に関するフォワード・ガイダンスは柔軟性を確保したものであると指摘したうえで、経済・物価の不確実性が高い状況を踏まえると、様々なコミュニケーションを通じた実質上のガイダンスについても、政策対応の時期や順序についての自由度が過度に制約されないよう工夫していくことが望ましいとの見解を示した。この間、一人の委員は、リスク・マネジメント上、市場流動性の確保・回復等による市場機能の改善に加え、出口を見据えた市場や社会とのコミュニケーション等、出口に向けた準備、環境整備を進めることが重要であると述べた。また、この委員は、仮にマイナス金利を解除しても、実質金利がマイナスであれば金融緩和の継続と捉えられるとの見方を示したうえで、こうしたことを、丁寧に発信していくことが重要と述べた。これに対して、ある委員は、大恐慌時の米国等の事例を示しつつ、実質金利がマイナスであっても、金融緩和が修正に向かう動きが経済・金融に大きな影響を及ぼす可能性がある点には留意すべきと指摘した。

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