メキシコペソ/円 見通し「司法制度改革アク抜けで関心は中銀へ…FRB追随の50bp利下げはあるのか」注目の高金利通貨 9月22日号

FXブログ
メキシコペソ/円 見通し「司法制度改革アク抜けで関心は中銀へ…FRB追随の50bp利下げはあるのか」注目の高金利通貨 9月22日号

f:id:gaitamesk:20190821093810p:plain

メキシコペソや豪ドルなど投資家にとって魅力的な通貨の最新状況について、これまでの動向や注目ポイントについて解説します。

作成日時 :2024年9月20日14時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
X(Twitter)@KandaTakuya

執筆:外為どっとコム総合研究所 神田 卓也

メキシコペソ/円(4時間足)

※レポート内の為替レート・チャートは外為どっとコム「外貨ネクストネオ」を参照

先週のメキシコペソ/円は底堅く推移

 メキシコ議会下院に続き上院が司法制度改革案を可決した11日を境にペソが持ち直しています。同法案は最高裁を含む判事の公選制を柱とする内容で、司法の独立性を脅かすとの懸念が根強く、ペソ売り材料になっていましたが、法案成立がほぼ確実になったことでむしろペソを買う動きが優勢となりました。「出尽くし感」や「アク抜け感」からショートカバーによる買い戻しが入ったものと見られます。週初16日に7.293円前後で取引が始まったペソ/円は、17日には原油高や欧米株高を背景に7.4円台を回復。18日には米連邦公開市場委員会(FOMC)後の混乱に紛れて7.3円台を割り込む場面もありましたが下値は限定的でした。翌19日には7.471円前後まで切り返して今月2日以来の高値を更新。ただ、ドル/円が144円台目前で失速した動きにつれて再び7.4円台を割り込むなど、7.5円台を前に伸び悩みました。20日の東京市場では7.3円台後半を中心にもみ合っています。

今週のメキシコペソ/円の注目ポイントは政策金利

 今週26日にメキシコ中銀が政策金利を発表します。市場は10.50%への25bp(0.25%ポイント)利下げを見込んでいますが、一部には50bp利下げの思惑もくすぶっています。中銀は8月会合で25bp利下げを決めましたが、5人の政策メンバーのうち2人が利下げに反対票を投じる僅差での決定でした。また、同会合では利下げとはある意味で不整合的にインフレ見通しを上方修正しています。これらの点を踏まえると、50bp利下げ観測は行き過ぎのように見えます。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)が18日に大幅利下げを決めたことで、メキシコ中銀も追随するとの連想が働きやすい地合いとなっているようです。また、足元でドルに対するペソ安が一服している点も50bp利下げがあってもおかしくないことを物語っています。仮に50bp利下げに踏み切るようだと、市場はメキシコ中銀の利下げサイクルが本格化したとの見方を強める可能性があるとともに、ペソの先安観が広がることも考えられます。

来週のメキシコペソ/円の見通し

予想レンジ
7.150-7.500円
基調
方向感模索

来週の注目ポイント
☆9/26 メキシコ中銀政策金利
・主要国株価、国際商品価格

 

メキシコペソ/円(MXN/JPY) FX為替レート・チャート

 
kanda.jpg

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。

●免責事項
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。
[紹介元] 外為どっとコム マネ育チャンネル メキシコペソ/円 見通し「司法制度改革アク抜けで関心は中銀へ…FRB追随の50bp利下げはあるのか」注目の高金利通貨 9月22日号

中央銀行の金融政策もメキシコペソ相場に大きく影響します

RSIは売られ過ぎの水準にある(下のチャート、緑矢印を参照)。ゴールデンクロスへ転じる場合は、メキシコペソ円(MXNJPY)の反発を想定しておきたい。しかし、反発の局面では常にブルトラップ(強気の罠)を警戒したい。

2024年新興国通貨「4つの焦点」、ブラジルレアルとメキシコペソが上昇?

上で述べたメキシコが抱えるファンダメンタルズの問題も考えるならば、メキシコペソ円(MXNJPY)は、引き続き下値トライを意識したい。

メキシコペソ円が7.00レベルをも下方ブレイクする場合は、23年3月の下落相場(ペソ安・円高)を止めた6.80レベルまでの下落を想定しておきたい(下のチャート、赤ラインを参照)。

メキシコペソ円が5日線の突破に成功しても、次は10日線が控えている。この移動平均線は今日現在、7.87レベルで推移している(下のチャート、青ラインを参照)。直近1カ月間の高安、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準7.85レベルの存在も考えるならば、メキシコペソ円が反発しても10日線前後までが限界と想定しておきたい。

メキシコペソは高金利通貨、資源国通貨としてインフレ懸念の強まりとともに注目度が上がりました。世界有数の原油埋蔵量を誇るメキシコ湾に面する産油国だけに、原油価格がメキシコペソ相場に大きな影響を与えます。メキシコ湾へのハリケーン来襲、それによる製油所の破損などで相場が動くことがあります。2022年のロシアのウクライナ侵攻による原油価格上昇はメキシコペソの上昇要因となりました。メキシコペソ相場は、米国経済の影響を受けやすい傾向にあります。1994年にNAFTA (北米自由貿易協定) が発効して以降、メキシコと米国との経済関係はますます強まりました。そのため、米国の景気が良くなるとメキシコの景気も良くなる傾向があります。なおNAFTAは再交渉ののち2020年7月1日にメキシコ名称「Tratado entre Mexico, Estados Unidos y Canada , T-MEC」として発効しています。中央銀行の金融政策もメキシコペソ相場に大きく影響します。メキシコ中央銀行 (BOM) はインフレ目標を採用しており、前年比のCPI (消費者物価指数) 上昇率を+3% (その上下1%が許容レンジ) にすることを金融政策運営の目標としています。1993年1月にデノミを実施して新ペソを導入。1996年8月には変動相場制に移行しました。経済基盤の脆弱さや政治的・社会的問題などからメキシコペソ相場は大きく変動するので、十分なリスク管理が必要です。

メキシコペソ円の下落局面で注目したいのが、7月以降の下落相場を止めたフィボナッチ・エクステンション161.8%の水準7.09レベルである(下のチャート、赤矢印を参照)。長い下ヒゲでの反発は、この水準の底堅さを示唆している。ゆえに7.09の下方ブレイクは、節目の7.00レベルをトライするシグナルとなろう。

2006年から2008年前半にかけては1メキシコペソ=10~11円台で推移していたメキシコペソ / 円相場ですが、2008年9月のリーマンショック発生とともに、わずか3ヶ月で6円台まで急落。その後は6~7円台の持ち合い (ボックス圏) 相場が続きますが、2011年から2012年にかけて一段安となり、一時は5円台前半まで円高・メキシコペソ安が進みました。この間、リーマンショック後の世界経済の回復とともに原油高が進み、メキシコ経済も4~5%台の成長を実現していますが、ドル / 円の下落に歩調を合わせるような形でメキシコペソ / 円も下落しています。安倍政権下で金融緩和が始まった2013年以降はメキシコペソ高・円安にトレンドが転換。2014年後半には一時1メキシコペソ=9円近辺までメキシコペソ高が進行しました。しかし、その後2014年の原油価格の急落でメキシコペソは再び売られました。中国経済の鈍化懸念から世界的に株価が大幅に調整したことや、中国が人民元を事実上切り下げたことで新興国通貨全般に不安が高まったことも影響したようです。2016年に米国でトランプ政権が誕生するとメキシコに強硬政策をとったことでさらに5円台まで下落しました。2020年3月には新型コロナウイルスの感染拡大を背景にした原油価格の下落や経済悪化懸念などが原因でメキシコペソは急落し、メキシコペソ / 円は4.2円と過去最安値を付けました。その後原油価格の高騰、急速な利上げで上昇基調をたどりました。メキシコ中央銀行は商品高やコロナ禍一巡による経済活動の正常化で高まったインフレ抑制のため2021年から利上げを行いましたが、2022 年はインフレ率が 7.9%と一時23年弱ぶりの高水準に達しました。2023年5月、インフレ鈍化が確認され16会合ぶりに利上げを停止、政策金利を11.25%で据え置きました。7会合連続で据え置いた後、2024年3月に利下げを行いました。インフレはピークアウトしたものの目標を上回っていますが、景気の減速に配慮したとみられます。その後、中東の地政学リスクを巡って下落する場面があっても相対的に金利が大幅に高いメキシコペソは堅調地合いを続けました。流れが変わったのは6月2日の大統領・連邦議会選挙です。連邦議会選挙で与党連合が下院で改憲に必要な3分の2を超える議席を獲得したことで、ロペス=オブラドール現大統領が掲げるポピュリズム的な政策が実現するとの警戒感が強まり、メキシコペソは急落しました。シェインバウム次期大統領が司法制度改革を推進する意向を示していることも重荷です。2024年6月現在、1メキシコペ=8.5円近辺で推移しています。

米ドル/メキシコペソがフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準17.94レベルを下方ブレイクする場合は、重要サポート水準の17.50が視野に入ろう。

短期的な調整(メキシコペソの短期買い戻し)で米ドル/メキシコペソ(USDMXN)が下値をトライする場合、まずは10日線(18.94レベル)の攻防を注視したい。この移動平均線が相場をサポートする場合は、節目の20.00を再びトライする展開を意識したい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました