2024年11月5日(火)のアメリカ大統領選挙の投開票が迫ってきました。
共和党のドナルド・トランプ前大統領、民主党のカマラ・ハリス副大統領のどちらが勝利するのか!?
米国内のみならず世界の政治・経済・金融政策への影響が見込まれるとあって、市場関係者も固唾をのんで情勢を見守っています。
今一度、両候補の政策の違いをいくつかピックアップしてみましょう。
政策の違いが際立つのは税制でしょうか。
ハリス氏は法人税率を現行の21%から28%に引き上げる一方、子育て世帯の税額控除拡充を提唱しているのに対し、トランプ氏は富裕層を含む所得税の大型減税の延長と法人税の追加減税を掲げています。
とは言え、どちらが勝っても、それぞれが掲げる政策が実施されれば、米国の財政赤字拡大や物価上昇に働き、米長期金利を押し上げることからドル高要因になるとの指摘が多いようです。対ドルで円安が進む可能性があり、日本への影響は軽視できません。
気になる現在(2024年10月29日時点)の支持率がこちらです。大統領選挙に向けた世論調査にはさまざまな種類がありますが、本記事では米政治情報サイト「Real Clear Politics(以下、RCP)」を参考にしています。
10月26日を境にトランプ氏の支持率がハリス氏を上回り、10月29日時点ではトランプ氏が48.4%、ハリス氏が48.0%と、トランプ氏がやや優勢です。
トランプ氏、ハリス氏 支持率の平均の推移
この支持率の推移からもわかるように、過去の米大統領選を振り返っても2024年は歴史的な大接戦で今時点ではまだ「どちらが勝ってもおかしくない」状況と言えます。
※参考までに2020年の米大統領選においては、支持率の最終平均はバイデン氏が51.2%、トランプ氏が44.0%と7.2ポイントの差をつけバイデン氏が勝利を収めました。
ご存じの方も多いかとは思いますが、アメリカの大統領選の仕組みが少し複雑なため、ここで少し解説します。
アメリカの大統領選は他の連邦議会議員を選ぶ選挙や、州議会議員・知事などの選挙とは異なり、単純に総得票数を競うのではありません。全米50州と首都ワシントンに割り当てられた計538人の「大統領選挙人」の獲得数を州ごとに競い、過半数の270人を得た候補が勝者となります。
ほとんどの州で「勝者総取り方式」、つまり、1票でも多くの票を獲得した候補者が、その州のすべての選挙人票を獲得する方式です。その為、全体の得票数で上回るよりも、激戦州で勝利し選挙人の数を積み上げることが重要になってきます。
この制度により2016年の大統領選でトランプ氏がヒラリー・クリントン氏を破り勝利した時のように、全米の総得票数で負けても当選することがあり得るのです。
上記を念頭に激戦区7州の10月29日時点の支持率を見てみます。
ペンシルベニア州
ノースカロライナ州
ジョージア州
アリゾナ州
ウィスコンシン州
ミシガン州
ネバダ州
勝敗を大きく左右するこれら激戦7州では、ミシガン州を除きハリス氏の支持率はトランプ氏を下回っています。最近までは激戦7州では両氏の支持率は比較的拮抗していたものの、足もとではハリス氏の支持率が急速に低下し、金融市場も「トランプ再選」を織り込む動きが見られます。
ただ、その差は最も離れているジョージア州でも2.4ポイント、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ミシガン州、ネバダ州は1ポイント未満と激しい競り合いとなっています。
RCPの直近の情勢分析(選挙人獲得予想)ではトランプ氏が219人、ハリス氏が215人の選挙人を獲得する予想で、予想のつかない残り7州の104人を奪い合っている状態です。
選挙人獲得予想
目が離せないアメリカ大統領選!最終結果が明確に見通せないまま選挙当日を迎えるのでしょうか!?ハリス氏の巻き返しなるか?それともトランプ氏がこのまま逃げ切りなるか・・・。繰り返しとなりますが、どちらが当選を果たした場合にも、相応に金融市場へインパクトを与える可能性があります。
今のところ、過去の傾向から日本時間11月6日の夕方頃に大勢が判明する見込みですが、結果発表時のみならず、今後、為替・株式相場が大きく変動する可能性があるため、ポジション管理・資金管理には十分注意するようお願いします。
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2024年米大統領選が目前FX投資家が知っておきたいポイントまとめ 2024年10月30日号
ただ、民主党全国委員会のルールが厳格化し、アイオワ州での候補者支援活動が制限されたため、現地での民主党の正式なキャンペーンは抑制的だった。オバマ、ヒラリー、サンダースなど有力政治家訪問が風物詩だったカーニバルの「アイオア・ステートフェア」(2023年は8月中旬)にもバイデン大統領は欠席し、共和党と、民主党内で出馬する予定だったロバート・ケネディ・ジュニア候補にメディア報道枠の独占を許した。
サンダースを受け継ぐ新世代左派は、2024年は静かだ。第三候補を担いでバイデンに挑戦を企てなかった。しかし、この静けさは2028年に照準を絞った準備の証でもある。「オカシオ=コルテスは2028年には初回の出馬に挑戦してもおかしくない年齢だ」と考える人もいる。彼らはバイデンが選挙運動の継続が不可能となれば、ハリスの支援を放棄して自分たちのグループから進歩的な女性マイノリティ候補を立てるのか。ファンが盛り上げているミシェル・オバマ待望論も含めて、民主党の行末の全てはバイデン大統領の健康状態にかかっている。
ハリス氏はシェールガスや石油の開発に用いるフラッキング(水圧破砕法)を「禁止しない」と明言した。2019年に環境負荷が大きいフラッキングを禁じると主張した経緯がある。主義・主張が変わったとの批判を念頭に「私の価値観は変わっていない」と繰り返した。
バイデン陣営は「2024年の民主党の課題は、バイデン大統領の周囲に2008年のオバマ陣営レベルの興奮を作り出すこと」と勇ましいことを言うのだが、その興奮が「トランプ阻止」でしか生み出せなくても、「それはそれで仕方ない」と割り切っている。
しかし、「同胞」からの嫉妬は政治にはつきものだ。オバマは2000年連邦下院選のシカゴでの予備選敗北以来、黒人政治家に「あいつは十分に黒人ではない」と嫌がらせをされてきた。それを跳ね返すには実力しかない。政策ビジョンのアイデアの斬新さか、有能な側近とチームと経験による圧倒的な実行力か、そのどちらもない場合はグレート・コミュニケーターとして、一言の演説や握手で国民を魅了するカリスマか。オバマにはそれらがあった。アイデアもあったし側近やチームもいた。人柄やカリスマは賛否両論だが、演説はうまかった。ハリスはそのどれも突出していない。バイデンのハリスへの願いは、嫉妬する女性政治家の後援者集団を黙らせるだけの活躍に尽きる。
米国経済が底堅さを維持したまま、米ドル高政策を掲げるトランプ候補がアメリカ大統領選挙で勝利する場合、外為市場では「2016年の再来」と言わんばかりに、米ドル高が進行することが予想される。
バイデン大統領周辺から現場の民主党活動家まで、一貫しているのは「争点はトランプ」だという認識である。「トランプ政権の再来」への恐怖と嫌悪しか党をまとめられないほど、民主党内部にある本来の亀裂は深刻だからだ。2016年にサンダースを支持した多くの人々は、基本的にヒラリーを嫌っていた。2020年に彼らの多くが「ヒラリーでないなら」「バイデンが左傾化してサンダースの言いなりになってくれるなら」と条件付きで民主党に戻ってきて、バイデンに投票した。バイデン政権が左傾化を躊躇しないのは、2016年のヒラリー敗北の原因が、根本的にはトランプ台頭ではなくサンダース台頭の党内亀裂にあったことを骨身に沁みて学んだからだ。ブッシュ息子政権が実は「チェイニー政権」だったのとは違うアナロジーになるが、バイデン政権は「サンダース政権」でもある。
トランプ氏の関税政策に対し「消費に対し一律に20%かかる『トランプ消費税』を導入する」としたうえで「中間層が4000ドル以上の支出につながる」と批判した。
ハリスへの評価はジェンダーや人種マイノリティへの差別の文脈で検討することも大切だ。しかし、これまでの拙稿ハリス論(『ひらく』5号、『大統領の条件:アメリカの見えない人種ルールとオバマの前半生』、座談会「人工妊娠中絶のゆくえ」アメリカ学会『アメリカ研究』57号)でも縷々示唆したことであるが、米メディアやワシントンで広がる「ハリス批判」は、共和党や白人男性の差別主義者からのマイノリティいじめ、女性いじめだけでは必ずしも説明がつかない根深さがある。筆者はアメリカの政治を20年以上現場で観察しているが、人種マイノリティのしかも女性の政治家をここまで民主党のマイノリティや女性が擁護しない、むしろ厳しく批判する光景を初めて見た。
ハリス攻撃の隠れたオリジナルな主体の一つはエリザベス・ウォーレン支持の女性グループだった。そして実は彼女たちは「元ハリス支持者」でもあった。遡ること2020年予備選、初戦アイワオ州を前に支持者に挨拶もせずハリスが放り出す形で撤退した後、途方に暮れた女性や若者を中心にしたコアなハリス信奉者は、女性大統領の悲願のため大挙してウォーレン陣営に流れた。
民主党内でかろうじてコンセンサスが得られているのは、人工妊娠中絶の問題が2024年にも引き続き重要になることだ。ロー対ウェイド判決が覆されることを現実視する民主党支持者はかつてほとんどいなかった。故にその反動の衝撃は小さくない。特別選挙や中間選挙から、人工妊娠中絶の問題は狭い意味でのフェミニストだけではなく広い範囲のリベラルな有権者、特に若年層と女性有権者の投票意識をかき立てることを民主党は学んだ。そこで共和党から郊外の穏健な女性票を引き離すことを主眼に、共和党内の分断を煽る戦略を押し出している。
ゆえにトランプ候補が大統領選挙で勝利する場合、外為市場は米ドル高で反応する可能性がある。実際、2016年の大統領選挙直後は米ドル高の展開となった。いわゆる「トランプ・ラリー」である。
2020年民主党では誰もがバイデンはただの「代役」だと考えていた。トランプを倒すためだけに必要な要員である。無党派層や穏健派が支持できるのは、「旧来の左派」ではないバイデンだけだった。そこで「バイデン支持」の合理的な連合に各派が合意した。「バイデンが1期だけやり遂げれば、トランプは消え去り、2024年に再び民主党が世代交代の指名争いをすることになる」。そういう考えが民主党に蔓延していたのだ。だから、高齢で新鮮味のかけらもないバイデンでいいということだった。
例えば、2022年中間選挙で、アイオワ州議会上院議員選挙で象徴的な候補がいた。民主党現職ケビン・キニー議員である。キニー議員はアイオワ州上院で最後の農村地盤の民主党議員だった。元農家でもある。しかし、厄介なことに元警察官(副保安官)でもあった。大変尊敬されている実直な人物だったが、元警察の民主党議員、しかも白人であることは共和党に格好のネガティブ攻撃の材料を与えた。
こうした経緯を目撃してきた筆者は、ワシントンでのハリス中傷の大半が元スタッフからのリークで、共和党ではないと聞いても驚かない。「難民」のハリス支持者を受け入れた側のウォーレン支持者もハリスに怒りを抱いている。政策でも人物でも全てウォーレンが優っていると信じ、2020年予備選ではサンダースと同等に競ったウォーレン陣営は、ハリス撤退で泣きじゃくる支持者を慰めて受け入れた「当事者」だけに、自分の支持者に説明責任を果たさないままにホワイトハウス入りしたハリスが心底許せない。「アイオワにもたどり着けなかったハリスが人種属性だけでバイデンに利用される形でVP(副大統領)になれた」というまるで怪文書のような口上の攻撃を左派メディアが広める気持ちは、一連の流れを現場で共にした筆者にはわからないではない。
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