このレポートでは、メキシコペソとアメリカ経済や日本円との為替レートの動き、メキシコペソの見通し、そしてその影響を受ける可能性がある要因について詳しく解説します。
執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
X(Twitter): https://twitter.com/KandaTakuya
ペソはトランプトレードの標的 個人のポジションは大幅買い越し
トランプトレードとは、米大統領選の共和党候補であるトランプ氏が勝利すれば、関税の強化や富裕層減税などの政策がインフレを再燃させかねないとの見方に基づいた米債売り・ドル買いを指す。中でも関税強化については、米国の自動車産業を守るためとしてメキシコからの輸入品に200%以上の関税を課すと表明していることから、ペソはドル買いの相手通貨(売り通貨)として選好されやすい。大統領選前日の4日にはこのトランプトレードの巻き戻しと見られる米債買い(金利低下)とドル売り(ペソ買い)が強まったが、持ち高調整の一環であろう。トランプ氏と民主党のハリス候補との支持率にはほとんど差がなく、選挙結果は予断を許さない。仮に5日の投票でトランプ氏が勝利すれば、あらためてドル買い・ペソ売りが強まる公算が大きい。この場合、ドル/円の上昇が予想されることからペソ/円の下値はそれほど深くならないと見るが、それでもペソ安・円高の反応は避けられないだろう。日本のFX投資家はペソ買い(円売り)ポジションが圧倒的に多いことから、もしストップロスを誘発すれば想定以上にペソ安・円高のピッチが速まる可能性も排除はできない。なお、大統領選の結果は早ければ日本時間6日昼頃にも大勢が判明する可能性がある。
メキシコペソ/円 日足チャート
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お知らせ:FX初心者向けに12時からライブ解説を配信
外為どっとコム総合研究所の調査部に所属する外国為替市場の研究員が、FX初心者向けに平日毎日12時ごろからライブ配信を行っています。前日の振り返り、今日の相場ポイントなどをわかりやすく解説しています。YouTubeの「外為どっとコム公式FX初心者ch」でご覧いただけます。
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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2024年のメキシコペソ/円は6.5~9円で予想する
3年以上続く上昇トレンドの中で、メキシコペソが大きく下落したのは2022年10月から12月にかけての局面だった。メキシコペソ/円は7.6円近い水準から6.5円台まで、最大下落率は15%近くに達した。これは、米ドル/円が151円台で上昇が一段落し、130円割れへ急落した局面での出来事だった。
メキシコペソ/円の5年MA(移動平均線)かい離率は一時40%を大きく上回るまで拡大した(図表2参照)。これは、空前のメキシコペソ「上がり過ぎ」が続いている可能性を示すものだ。そして、それをもたらした最大の要因は歴史的円安だろう。
以上のことからも分かるように、記録的なメキシコペソ/円の上昇相場は、歴史的円安の影響が大きく、このため米ドル/円が大きく円高に振れる局面ではメキシコペソ/円にもその影響が波及し、急落リスクが高まる。
メキシコの政策金利は11%を上回っており、メキシコペソは代表的な高金利通貨でもある。高金利に加え、大幅上昇が3年以上も続くことから、個人投資家の間でも人気通貨の1つとなってきたようだ。では、高金利通貨であるメキシコペソの上昇トレンドは2024年も続くだろうか。
その意味では、2024年に米ドル安・円高へトレンド転換が起こるなら、メキシコペソ/円も「上がり過ぎ」の本格調整局面を迎える可能性が高いのではないか。2024年のメキシコペソ/円は6.5~9円で予想する。
南アフリカランド/円の5年MAかい離率は2023年に一時プラス10%程度まで拡大した(図表3参照)。経験的には、南アランドも「上がり過ぎ」懸念は強いものの、すでに見てきたメキシコペソ/円ほど極端な「上がり過ぎ」ということではなさそうだ。
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