13日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、10月米消費者物価指数(CPI)が予想通りだったことで、米10年債利回りの4.35%台までの低下に連れて154.34円まで下落後、4.46%台までの上昇により155.62円まで上昇した。ユーロドルは1.0653ドルまで上昇した後、1.0556ドルまで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、トランプ・トレード(米国債売り・ドル買い)が継続して155円台に乗せてきていることで、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒しながら、今夜のパウエルFRB議長の講演を待つことになる。
米10月コアCPIが3カ月連続で前月比+0.3%の伸びを記録してインフレ抑制の足踏みが警戒されたことで、米10年債利回りが4.46%台まで上昇し、ドル円も155.62円まで上昇して、トランプ・トレードが継続している。
ドル円は155円台に乗せてきており、神田前財務官が退任前に円買い介入を断行した水準(157円台、159円台、160円台、161円台)に接近している。
現在は財務省顧問も務める神田内閣官房参与は、先日、株高とドル高・円安の「トランプ・トレード」が起きている背景として、財政赤字増大による米金利上昇や関税の引き上げ、移民制限によるインフレと金利引き上げの可能性といった憶測があると指摘していた。そして、投機が変動を助長しているとして、「行き過ぎた動きには適切な対応を取る」と円買い介入の可能性を示唆していた。
トランプ米政権は、米国の製造業を保護するため、輸入関税を引き上げ、ドル安を志向すると思われることから、本邦通貨当局のドル売り・円買い介入と整合的であるため警戒しておきたい。
また、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、12月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%の利下げ確率は80%台に上昇しているものの、来年1月のFOMCでは据え置きが見込まれている。
12月17-18日のFOMCの前には、12月6日に米11月雇用統計が発表され、10月の雇用統計のノイズとなっていたハリケーンやストライキの影響を排除した米国の雇用情勢が確認できる。
今夜のパウエルFRB議長の講演では、11月雇用統計という「データ」次第と述べつつも、12月FOMCでの第3次利下げ(▲0.25%)を示唆すると思われるが、注目ポイントは、第2次トランプ米政権が発足する来年1月20日の後の29日のFOMCでの追加利下げへの言及となる。
7月FOMCでは、従来のインフレ重視の金融政策から二大責務であるインフレと雇用の両方を見る金融政策に「リカリブレート(再調整)」することが表明された。
そして、パウエルFRB議長は、9月FOMCでの第1次利下げ(▲0.50%)や11月FOMCでの第2次利下げ(▲0.25%)辺りから、金融政策の再調整「リキャリブレーション(recalibration)」という言葉を多用して、中立金利水準までの利下げ路線を貫徹しようとしており、今夜の講演でもこの単語に注目しておきたい。
9時30分に発表される10月豪雇用統計の予想は、失業率が4.1%で9月と変わらず、新規雇用者数が+2.50万人で、9月の+6.41万人からの減少が見込まれている。先日の豪準備銀行(RBA)理事会では、政策金利が据え置かれ、声明文では「基調インフレは依然として高すぎる。インフレ率は2026年まで目標(2-3%)の中央値に到達することはないだろう」とタカ派的な見解が維持された。
オーストラリアは、第2次トランプ米政権でのトランプ関税の直接的な悪影響と第2次米中貿易戦争による間接的な悪影響が懸念されており、雇用情勢が悪化していた場合、早期の利下げ観測が台頭する可能性に警戒しておきたい。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通しドル円は円買い介入の可能性 豪ドルは豪10月雇用統計に要注目か
14日03:11 ムサレム米セントルイス連銀総裁 「物価安定に向けて『最後の一歩』を踏み出している可能性がある」 「インフレ率は中期的に2%の目標に収束すると予想」 「最近の情報は、インフレ率が上昇するリスクが高まっていることを示唆している一方で、雇用市場のリスクは不変または低下している」 「金融政策は、適切な位置づけにある」 「FRBは今後の利下げの決定に向けて、慎重かつ忍耐強くデータの判断を行うことができる」 「インフレ率が2%を超えている間は、金融政策は『適切に制限的』なままである」 「インフレ率が引き続き低下した場合、さらなる利下げは適切」 「労働市場は完全雇用の範囲内に依然としてある」 「堅調な経済は、第4四半期に向けて堅実な軌道に乗っている」
今週の豪ドルは上昇し、3月21日につけた高値100円22銭を上回り100円39銭まで上昇した。
今週の豪ドルは、目立った経済指標発表が無かったなか、4日につけた高値100円43銭を上回り一時100円83銭まで買われる場面が見られた。目立った売買材料は観測されなかったが、テクニカルの強さや、引き続き経済的なつながりが強い中国経済の底入れ期待などを背景に豪ドル買い優勢の展開となった。なお、5日に発表された2月貿易収支は、農産物や鉄鉱石の輸出が減ったほか、輸入額が増えたことを背景に72.8億豪ドルの黒字と1月の100億豪ドル超えの黒字から減少したが、2018年に貿易収支が黒字に転換して以降、黒字額は概ね拡大傾向をたどっていることから、前月比減少の影響は限定的となった。
豪ドル円は弱含み、100.73円まで日通し安値を更新した。また豪ドル/ドルも0.6460ドルをここまでの安値に上値が重いまま。中国株が軟調なまま大引けし、香港株も地合い弱く推移しており、中国と経済的な結びつきが強い豪州の通貨の重しとなっている。
13日22:57 カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁 「CPIのヘッドラインは我々が進むべき道を裏付けている」 「次回会合までまだ6週間あり、さらなるデータが発表される」 「インフレは正しい方向に向かっていると確信している」 「インフレが2%超で高止まりしていると思わない」 「中立金利がどこにあるかについては大きな不確実性がある」 「経済が好調な状態が長く続くほど、中立金利は高くなるだろう」 「労働市場は良い状態にあると思う」
14日午前の東京市場でドル円は続伸。
13日のニューヨーク外国為替市場でドル円は3日続伸。終値は155.46円と前営業日NY終値(154.61円)と比べて85銭程度のドル高水準だった。米労働省が発表した10月米消費者物価指数(CPI)が市場予想通りの結果になると、米インフレ再加速への警戒が根強かっただけに当初はドル売りで反応。23時過ぎに一時154.34円と日通し安値を付けた。
13日23:55 ローガン米ダラス連銀総裁 「FRBはおそらく追加利下げが必要となるが、慎重に進める必要」 「FRBが中立金利を大幅に超える利下げをした場合、インフレが再燃する可能性がある」 「FRBが何回利下げする必要があるか、またどのくらいのペースで行う必要があるかは不明」 「インフレ抑制に大きく前進」 「まだ物価安定には戻っていない」 「米国の経済活動は回復力がある」 「労働市場は徐々に冷え込んでいるが、大幅に弱まっているわけではない」 「インフレには上振れリスク、雇用には下振れリスクがある」
テクニカルもしっかりだ。短期的には3月高値100円22銭をしっかり上回ったほか、50日移動平均線、100日移動平均線が引き続きサポートラインとして機能している。月足チャートでは、20年3月の59.87円を起点とした下値支持線が機能しており、長期的なトレンドも強いままだ。3月21日や4月4日の長い上ヒゲ(上影)を吸収したことで、豪ドルは対円で上へのバイアスを強めやすいと考える。なお、日本銀行は、3月の金融政策決定会合以降、「追加の利上げは急がず当面は緩和的な環境を続ける方針」を掲げているが、金融政策の見通しを強く反映する2年債利回りは4月11日、一時0.265%まで上昇し、09年11月以来の高水準をつけた。5年など他の中期債利回りも上昇が続いているが、10年債利回りは一時0.860%と5カ月ぶりの高水準まで上昇したものの、23年11月の0.97%より低い水準で推移するなど、短期、中期利回りは上昇するも、長期利回りの上昇ピッチは遅いといった難しい状況にある。
本日は米経済指標として、8月の消費者信用残高が発表される予定となっているものの、正直市場の関心はそれほど高くない。それよりむしろ、欧州を含めた通貨当局者の講演などに注意を要したい。そんな本日欧米時間のドル/円予想レンジは147.50-148.90円。ドル高・円安方向は、本日東京で維持することが出来なかった149円の攻防にまずは注目。しっかり乗せれば、いよいよ150円を本格トライか。対するドル安・円高方向は、先で指摘したように米雇用統計発表後、一度も下回っていない148円レベルが最初のサポートか。基本は底堅そうだが、しっかり下回ってしまうと予想以上の深押しも否定できない。
米10月CPIは前月比+0.2%、前年比+2.6%といずれも市場予想通りとなった。また食品とエネルギーを除いたコアCPIも前月比+0.3%、前年比+3.3%とともに市場予想通りだった。総合CPIの前年比の伸びは前月(+2.4%)から加速したが、市場は、警戒したほどインフレが加速しなかったと受け止めた模様でドル/円は154.34円前後まで下落した。ただ、長期金利の低下が一服すると一巡後はドルを買い戻す動きが強まった。
日本とオーストラリアの金利差を考慮すると、徐々に縮小する、という状況だが、大幅に縮小する地合いではないため、足元の豪ドルの足かせにはならないと考える。
ただ、押し目を拾いたい向きは多く、売り一巡後は買い戻しが優勢に。市場では「インフレ鈍化に向けた進展は幾分失速しているようだ。12月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ観測に変化はないものの、来年の利下げペースは鈍る可能性がある」との声も聞かれ、4時過ぎには155.62円と7月24日以来の高値を更新した。米CPI発表直後に4.35%台まで低下した米10年債利回りが4.46%台まで上昇したことも買い戻しを誘った。
今週末から来週の豪ドルは、強い動きは継続し100円台での値固めをこなしつつ、101円台乗せを試す展開となりそうだ。懸念材料としては、日本当局の円買い介入警戒感と中東情勢の緊迫化などが挙げられるが、この二つの懸念はどの主要通貨も共通している。また、中東情勢の緊迫化によって原油価格が上昇すれば、資源大国のオーストラリア経済にとってはプラスの作用もあるので、目先の懸念は日本当局の円買い介入警戒感と考える。市場で言われている「前日比1.2%の円安ドル高加速」となった場合、政府・日銀が円買い介入を実施する可能性は高い。対ドルのみの介入実施を想定するが、さすがに介入のタイミングで豪ドルも乱高下する公算が大きいので、ドル円の動向には気を付けておきたい。ただ、ファンダメンタルズは良好と考える。オーストラリア経済に大きな影響を与える中国経済の底入れ期待は、引き続き強い追い風となろう。また、18日に予定されている雇用統計が前月比で堅調な増加傾向が確認できれば、豪ドルは一段高の地合いとなる。
今週の豪ドルは、中国経済指標が先行き不透明感の強い内容となったことや、オーストラリアの3月雇用統計が市場予想を下振れたこともあり99円前後でのもみ合いとなった。
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