本日のロンドン為替市場のユーロドルは、デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁の講演や欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨(10月17日分)などで、12月のECB理事会での追加利下げの可能性を探ることになる。
デギンドスECB副総裁は、タカ派的な見解として、ユーロ圏の消費者物価指数(CPI)の伸びは鈍化しているが、賃金動向の高止まりを背景にしたサービスインフレへの警戒感を示し、今年最後の四半期にはベース効果によりインフレ率が上昇する、と述べていた。
一方で、ハト派的な見解として、ユーロ圏の経済成長が従来の予想を下回る可能性があるほか、トランプ関税が一段とマイナスの結果をもたらす恐れがある、と述べていた。
本日の講演では、どちらの見解に軸足が置かれるのか注目しておきたい。
ナーゲル独連銀総裁は、先日、「トランプ関税計画が実施されれば、ドイツは国内総生産(GDP)の1%を失う恐れがある。もし実際に新たに関税が課された場合、ドイツはマイナス成長に陥る可能性さえある」と懸念を示していた。
10月17日のECB理事会議事要旨では、市場に燻り続けている12月ECB理事会での0.50%の大幅利下げの可能性を見極めることになる。
7-9月期ユーロ圏域内総生産(GDP)改定値では、現状のユーロドル下落基調の中で、下方修正のネガティブサプライズに警戒しておきたい。
想定レンジ上限
・ユーロドル:1.0625ドル(5日移動平均線)
・ユーロ円:164.90円(200日移動平均線)
想定レンジ下限
・ユーロドル:1.0496ドル(2023/10/13 安値)
・ユーロ円:163.21円(11/8安値)
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
見通し ロンドン為替見通しECB副総裁講演と理事会議事要旨 ユーロ圏GDP改定値に要注目
英ポンドは対ドルで小幅に上昇し、1ポンド=1.3010〜20ドルと同0.0010ドルのポンド高・ドル安で推移している。30日にリーブス英財務相が秋季予算案を提示した。同時に示された英経済の成長率見通しも踏まえて英イングランド銀行(中央銀行)が利下げを急がない可能性が意識され、ポンド買い・ドル売りにつながった。
消費者物価(除く生鮮食品)前年比は、先行き、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくことに加え、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果もあって、2023年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくと予想しています。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果の反動もあり、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみています。政策委員見通しの中央値では、2022年度+3.0%、2023年度+1.6%、2024年度+1.8%と予想しています。昨年10月時点の見通しと比べ、2023年度は政府の経済対策がエネルギー価格を押し下げる一方、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響などもあって概ね不変、2024年度は、経済対策による押し下げの反動から幾分上振れています。
以上の経済・物価見通しを踏まえつつ、金融政策運営に対する考えをお話ししたいと思います。
ここで、わが国の経済・物価の先行きに対する日本銀行政策委員の中心的な見方をご説明します。わが国経済は、見通し期間の中盤にかけ、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもと、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられ、回復していくと予想されます。その後、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるなか、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられます。図表5は、本年1月に公表した展望レポートにおける経済・物価見通しですが、実質GDP成長率は、政策委員見通しの中央値で2022年度+1.9%、2023年度+1.7%、2024年度+1.1%と予想しています。昨年10月時点の見通しと比べますと、2023年度と2024年度が幾分下振れています。2023年度は、政府の経済対策が押し上げ方向に寄与するものの、海外経済の下振れなどを受け、また2024年度は、経済対策の効果の反動を踏まえたものです。
神奈川県は、164年前の横浜港開港以来、国内外から優れた技術・文化・人材を取り込み、時代の変化に果敢に挑戦し、今日の発展を遂げてきた歴史があります。「3代続けば江戸っ子、3日住めばハマっ子」という言葉にも、その歴史の中で培われた進取の気性や柔軟性、適応力が感じられます。先行きを見通し難い経済環境にはありますが、当地の皆さまがそうした持ち前の力を発揮されることにより、神奈川県経済がさらなる成長に向けて力強く歩んでゆかれることを、心より期待しております。ご清聴ありがとうございました。
2つ目は、賃金設定行動を巡る不確実性です。企業収益の改善を起点とした経済と物価の前向きな循環が実現するうえで、賃上げは重要な要素ですが、海外経済に不確実性があるなか、今春の賃金交渉の動向も見通しにくくなっています。賃金体系の引き上げであるベアは、退職金や年金も含めた企業の負担増に繋がるだけに、企業の慎重な姿勢が続く可能性もあります。図表6のとおり、賃上げ率は過去20年以上にわたり、定期昇給を含めても2%程度で推移しています。企業の慎重な姿勢が続けば、先行きの賃上げ率が、十分に高まらず、持続的な物価上昇が実現しないリスクがあります。他方、労働需給が引き締まるなか、物価上昇を踏まえた賃上げに前向きな姿勢など、社会や企業のなかで近年になくベアへの意識が高まるなか、連合は、定期昇給を含めて5%の賃上げ目標を掲げており、今春以降の賃上げ率を底上げする可能性もあります。私は1990年代初に、当時勤務していた銀行の従業員組合を取りまとめ経営側にベアを要求する立場にありました。当時の経験では、組合は、生活水準を維持するという「生活給」の考え方に基づき、前年の物価上昇による実質所得の低下分を翌年のベアとして要求することが一般的でした。バブル崩壊以降、「生活給」の考え方は殆どなくなりましたが、足もと、物価上昇に配慮した賃上げの動きが戻りつつあり、注目しています。
1つ目は、足もと、物価上昇率は日本銀行が「物価安定の目標」として掲げている2%を上回っているものの、先述の展望レポートでは、見通し期間中に、2%の「物価安定の目標」を安定的に実現する姿にはなっていないということです。このところ、資源・原材料価格の高騰を受けて企業の価格転嫁の動きが強まっていますが、現時点では、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇には至っていないと考えています。わが国では、バブル崩壊後の長年に亘るデフレの経験が強く意識された結果、賃金や物価は上がらないものと考える規範(ノルム)が形成され、根強く定着しているため、それが転換するには時間をかけた対応が必要になります。今日のわが国経済の課題は、賃金や物価は上がらないものと考えるノルムが転換し、物価上昇に対応した持続的な賃金上昇により企業収益の改善を起点とする好循環を実現することにあります。
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