ドル/円、一時155円台へ…植田日銀総裁、12月追加利上げへの手掛かりを示さず
欧米時間のドル/円予想レンジ:153.800-155.800円
東京市場のドル/円は、一進一退の展開。仲値公示前に153.80円台へ小緩む場面もありましたが、その後は植田日銀総裁の講演で利上げに前向きな発言がなかったとして円売りに傾くと一時155.14円前後まで切り返しました。ただ、高値警戒から伸び悩むと午後には154.30円台へと押し戻されています。欧州市場では154円台後半を中心としたレンジ相場となりました。
植田日銀総裁は「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合い調整していく」と述べましたが12月の追加利上げについては手掛かりを示しませんでした。先週15日の海外市場では植田総裁が追加利上げを示唆する可能性を警戒したドル/円のポジション調整もあったと見られることから、きょうの発言に対する海外勢の評価が注目されます。他方で、今夜はドル/円に直接関係する注目イベントが予定されていません。そのため米長期金利や株価の動向を睨んだ相場展開となりそうです。
ドル/円をテクニカル分析で見ると、先週金曜日に約2円の実体を伴った陰線が出現しましたが、10日線を支持に下げ止まっており上昇基調に変化はありません。155円台へ持ち直すと再び上値を模索する展開となる可能性があります。
ドル円 日足チャート
この後の経済イベント
11/18(月)
22:00 レーンECB専務理事講演
22:00 ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁講演
22:15 カナダ10月住宅着工件数
24:00 米11月NAHB住宅市場指数
24:00 グールズビー米シカゴ連銀総裁講演
27:30☆ラガルドECB総裁講演
27:30 グリーン英MPC委員講演
30:00 米9月証券投資
—– G20首脳会議(~19日)
11/19(火)
09:30☆RBA議事録
※☆は特に注目の材料
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外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員
宇栄原 宗平(うえはら・しゅうへい)
国際テクニカルアナリスト連盟 認定テクニカルアナリスト(CFTe)
2015年から金融業界に参入し、顧客サポートなどに従事。また金融セミナーの講師としても活躍する。2022年2月(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。これまでの経験や知識を活かしながら、FX個人投資家へ精力的な情報発信を行っている。経済番組専門放送局「ストックボイス」や、ニッポン放送『辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!』でのレギュラー解説ほか出演多数。マネー誌『ダイヤモンドZAi(ザイ)』にてドル円・ユーロ円見通しを連載中。
年初の1ドル約140円からは約14%も円安が進んだことになる
日銀は10月会合で政策金利を0.25%程度で維持することを決めた。植田総裁は会合後の会見で、政策判断に「時間的な余裕はある」との表現を今後は使わないと語った。トランプ米次期大統領のインフレ的な政策への思惑からドル高・円安が進行する中、市場には早期の追加利上げ観測が強まっているが、今回の講演と記者会見では12月会合での利上げを強く示唆する発言はなかった。
1時間以内に4円程度も円高に振れることは、通常の取引では起こりにくいことだ。日本が休日でアジア市場でのドル円の取引が薄商いであったため、価格の変動(ボラティリティ)が高まっていたことを考慮に入れても、政府による為替介入があったことが疑われる状況だ。政府は為替介入の有無を明らかにしていないことから確実ではないものの、覆面で為替介入が行われた可能性は比較的高いのではないか。
29日のアジア市場では、朝方に1ドル160円を付けた後、ドル円レートは1ドル159円台前半で推移していたが、13時台に入って一転して円高に振れ、1ドル155円近くまで円が買い戻された。その後29日の海外市場では、ドル円レートは1ドル154円台と156円台の間で大きく変動する不安定な動きが続いた。
15日の海外市場では、米国で予想を上回る小売売上高を受けて利下げ観測が後退、米10年国債利回りは一時4.50%程度と5月以来の水準に上昇した後、4.44%付近に戻していた。ブルームバーグ・ドル指数は6営業日ぶりに下落。円は一時153円台後半まで買われた。
4月10日に1ドル152円という2022年、2023年の円安のピークの水準という節目を超えて円安が進んでから、短期間で8円も円安が進んだ。年初の1ドル約140円からは約14%も円安が進んだことになる。それは、消費者物価を1年間で0.2%程度押し上げる効果を持つ(内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)」による)。
円だけでなく、世界の主要通貨が軒並み対ドルで下落傾向を見せ、ドル独歩高の様相が強まるなか、ワシントンで17日に開かれた日米韓による財務相会合では、共同声明に「最近の急速な円安・ウォン安への日韓の深刻な懸念を共有する」との文言が盛り込まれた。
2022年に24年ぶりとなる円買い介入が行われた9月22日は、日銀が当時の黒田総裁のもとで開いた金融政策決定会合の2日目だった。 「大規模な金融緩和の継続」という決定内容が公表されると、日米の金利差拡大を意識した円売りが勢いを増して、円相場は24年ぶりの水準となる1ドル=145円台に突入した。
4月26日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合の後に、為替市場では円安が一段と進んだ。会合前には1ドル155円台前半で推移していたドル円レートは、決定会合で政策変更が見送られたことに加え、会合後の記者会見での植田総裁の発言から、日本銀行は円安に対する警戒心が弱いとの見方につながり、1ドル156円台まで円安が進んだ。
ドル円レートは早晩1ドル160円を超える円安となり、いずれは1ドル165円を巡る市場と当局との攻防の様相となるのではないか。
仮に為替介入が行われた場合には、それが、円安が進んだ先週末ではなく週明けのタイミングとなった理由は2つ考えられる。第1は、朝方に1ドル160円の節目を超えたことで、日本の当局の円安への警戒感が一段と高まったことに加えて、日本の為替介入に難色を示す米当局を説得する材料になったと考えられる。第2に、日本市場が休日でアジア市場でのドル円の取引が薄商いであったことから、比較的規模が小さい介入でも為替市場を大きく動かすことが可能な状況であったことだ。
円安を加速させる特定の材料があった訳ではないが、日本が休日であるため、政府の為替介入に対する警戒感が薄れていたことが、市場参加者が安心してドル買い円売りを仕掛けることを許した一因と考えられる。さらに、日本が休日のためドル円の取引がかなり薄いことも、市場のボラティリティを低下させ、一気に1ドル160円台まで円安が進んだ背景だろう。
円安の流れは海外市場でも続き、米国市場の終盤には、1ドル158円台まで円安が進行した。24時間のうちに約3円もの急速な円安となった。1ドル160円台乗せも時間の問題となってきた。
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