執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年11月22日 12時45分
強弱材料混在、レンジ内で緩やかに低下か
米ドル/円、レンジで推移
11月18日週の米ドル/円は、15日の下落の反動から155.361円までの戻りを試す流れが先行しました。しかし、ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用基準を緩和したことが伝わると、米ドル/円はリスク回避の円買いから153.268円まで反落。その後、同話題が一過性に終わるとの思惑から155.884円まで戻したものの、ウクライナ・ロシア双方が相手国へミサイルを発射するなど、逆に紛争のエスカレーションが懸念され、153.91円レベルまで押し戻されました。植田日銀総裁が「12月会合がライブ」であることを示唆したことも、米ドル/円の重しとなったもようです。もっとも、レンジブレイクする感じでもなく、全体的には方向性の見極めづらい展開でした。
(各レート水準は執筆時点のもの)
FX実践解説、勝ったら笑顔「これがFX」(2024年11月21日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ドル高と円高材料が混在
来週は、米国で7-9月期GDP改定値やPCE価格指数が発表されます。15日に発表されたGDP算出に用いられる小売売上高のコントロールグループの9月分が上方修正されていた点を踏まえると、個人消費の堅調さが改めて意識される可能性はあります。また、13日の消費者物価指数から推定されるPCE価格指数は前月比0.3%と、12月利下げ観測を後退させるには至らないものの、小数点第2位までを考えた場合、0.25%から0.28%へインフレが加速すると見られ、ディスインフレの停滞感が高まる危険もあります。加えて、東欧情勢の緊張もあって、米ドルのサポート材料は多そうです。
しかしながら、日銀の利上げや地政学的リスクの円高材料があることも忘れてはいけないでしょう。日銀が示す基調的なインフレ率を捕捉するための指標が、低下基調が一服して物価目標の2%に向けて、水準を戻してくれば、12月利上げ期待が前進して米ドル/円の上値は抑制されやすくなります。また、植田日銀総裁は「為替相場の経済・インフレへの影響を注視」と述べ、円安進行の際には利上げの必要性が増すことを示唆するなど、米ドル/円は上値が徐々に抑制されやすくなっています。これらの要因が交錯して、米ドル/円はレンジブレイクする状況にはなさそうですが、バカンス前のポジション調整が出やすいこともあり、全体的には上値の重い展開になるのではないかと、考えています。
緩やかに調整進むか(テクニカル分析)
米ドル/円は徐々に上値を切り下げており、短期的なところでの調整への警戒は高まっているようです。上から21日線153.667円、日足一目均衡表基準線152.916円、200日線移動平均線151.935円(どれも21日時点)とサポートラインが並んでいる点で、徐々に下値を試すことになるのではないかと、見ています。上方向は、期間21日のボリンジャーバンドの+2ラインが推移する156.33円レベルを考えています。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:152.000-156.500
11/25 週のイベント:
一言コメント
秋が深まる前に冬が到来してしまった感じで、日本ではすでに四季を十分に感じられないのですね。
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来週の為替予想 米ドル 円
来週さらに大荒れ予想のドル/円相場、円高と円安のメドは?
7月のドル/円のレンジは、151.93円から161.95円。 レンジ幅は10.02円。 高値と安値の50%(中間点)は、156.94円。 現在の水準は、中間点よりも「円高」。 安値と中間点の50%は154.44円。現在レートはほぼこの水準にある。
米国の金融市場が「トランプ・ラリー」に沸いている。トランプ米次期大統領が掲げる規制緩和と減税への期待から、株式や暗号資産(仮想通貨)、米ドルが大幅上昇しているのだ。しかしこうした政策は財政赤字を拡大させてインフレをあおることにもなり、債券市場は荒れるだろう。「債券自警団」の動きによって、「米国は再び小さく」なるかもしれない。
7月25日(木曜)のドル/円相場は、前日比0.09円の「円安」だった。
11月18-21日のドル・円は上昇した。週初18日、植田和男日銀総裁の会見を控え、タカ派的な発言への警戒が一時上値を抑えるも、目先の追加利上げを示唆するような内容ではなく切り返した。19日、ロシアが核兵器使用基準を引き下げ地政学リスクが一段と高まり、リスク回避の円買いが強まったが、その後は反発。
トランプ次期米大統領の政策に対する思惑を背景にドル買いや米金利上昇が先行した「トランプ・トレード」が一服。目先のドル・円は、足元の米景気や日米の金融政策動向、緊張感が高まるウクライナ情勢を見定めながら、相場の方向性を探る展開となる。経済指標では米10月新築住宅販売件数、米11月コンファレンスボード消費者信頼感指数、米7-9月期GDP(国内総生産)改定値、米10月耐久財受注、米10月PCE(個人消費支出)デフレーターなどが発表予定。
20日、ウクライナが英国製ミサイルでロシア領内を攻撃と報じられドル・円の重しになるも、ボウマンFRB(米連邦準備制度理事会)理事が利下げに対する慎重姿勢を示し上昇した。21日、植田和男日銀総裁が12月会合は予測不可能と発言したほか、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁が米金利はさらに低下する可能性があるとし、円買い・ドル売りに。ロシアのミサイル発射も伝わり下押しした。
海外市場では、短期間で急激に進んだ円高に対する調整で、ドル/円の買い戻しが優勢になった。この日発表された米国の第2四半期GDP(国内総生産)が予想を超える強さとなったことで米国の景気後退懸念がやわらいだこともドル/円を押し上げ、未明に154.32円まで急速に円安に戻した。終値は154.03円。24時間のレンジ幅は2.39円。
11/11の8円74銭を高値にトランプ次期政権の財政拡張政策への思惑を背景に米長期金利の先高観や関税強化による新興国通貨全般に対する売り圧力が高まったこと、米金利上昇による南ア特産品の金やプラチナ先物価格が下落したこと、11/12発表の南ア9月製造業生産が市場予想を下回ったこと、さらにこれらを材料に11/13にかけて南ア全株指数が4日続落し9月19日以来の水準まで下落したことから8円50銭へ下落。その後、11/15にかけてドル円が156円台後半へ上昇したことに伴い8円58銭へ反発したものの、米長期金利の上昇を受けたNYダウやナスダックの大幅安を受けたリスク回避の円買いとともに8円46銭へ下落し8円48銭で取引を終えました。トランプ次期政権の関税強化への思惑を背景に南ア最大の貿易相手国、中国の景気減速懸が南ア経済に悪影響を及ぼす可能性もあり、日足・転換線や基準線(8円66銭/8円64銭)を上値抵抗線として上値の重い動きが見込まれます。そのため、11/20発表の10月CPIや9月小売売上高が市場予想を下回れば11/21の南ア中銀政策委員会での利下げに留まらず、先々の追加利下げに言及すればランド安が加速するかもしれません。また、米長期金利がNY株式市場の調整を招く水準まで上昇した先週末11/15の流れが続けば今週もリスク回避の円買いが続くことも想定されるため、日足・雲の上限(8円30銭)を目指して下押し圧力を高めることになるか注目されます。
また、11月開催分のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨も公表され、次回12月会合での利下げの可能性を探る動きが強まりそうだ。一方、日銀の植田和男総裁は日本の足元の金融緩和度合いについて「かなり強い」と評価。依然、利上げの選択肢は排除しておらず、円の下支え要因として意識される。
2024年149営業日目は153.87円からスタート。円高の流れは続き、東京時間夕方までに153円台をスルーして、さらに152.00円を割り一時151.93円まで円高が進んだ。ただ、この水準では買い戻しもありすぐに152円台に戻した。
ドル・円はチャート上で、心理的フシ目となる1ドル=155円を挟んだもみ合いを想定。上方向では直近高値1ドル=156.74円(11月15日)の上抜けを狙う展開。下方向では25日移動平均線153.22円(11月21日基準)近辺がサポートライン。
5月から7月までのドル/円のレンジは151.85円から161.95円。 レンジ幅は10.10円。 高値と安値の50%(中間点)は、156.90円。 現在の水準は、中間点よりも「円高」。 安値と中間点の50%は154.38円。
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