コンビニ曲がり角 業界再編可能性
ただ、全国的にコンビニ店舗が減少傾向にあるなか、来店頻度やマーケティングの工夫で増やせる売上にも限界があり、コスト削減や効率化による利益率の上昇が必要なため、「2030年度までに店舗オペレーションを30%削減」というキャッチは、今後6年をかけて実際に取り組まなければいけない問題を提示したスローガン的なものと言える。
理由としては、いくらテクノロジーを導入してもそれに見合った日商が得られず、店舗維持コストを賄えない点が大きい。テクノロジーがある程度の問題を解決するとしても、結局は人流と人件費が店舗の運命を左右することには変わりなく、この絶妙なバランスを維持することで成り立っているのが日本のコンビニビジネスの特徴といえる。
コンビニの将来を語るうえでもう1つ重要な要素が、地域密着であるという点だ。「ハッピー ローソン・タウン」構想と銘打たれているが、少子高齢化や介護問題、地方創生などの問題をコンビニを中心に解決していこうという考えだ。
説明会の中でもたびたび触れられていたが、日本のコンビニビジネスは世界でも希有なレベルで地域やニーズへの最適化が行なわれている。
コンビニ各社は飽和状態の国内から、東南アジアなど海外展開を加速している。一方、国内では新事業を併営する動きに出ている。セブンイレブンは昨秋、自転車シェアリング事業を開始し、自転車を借りたり返却する際にセブンイレブン店舗で利用できるクーポンを付与。ファミリーマートは昨秋、健康志向が高まっていることを受けてフィットネスジム事業参入を発表しており、今年2月中旬をめどに東京・大田区に店舗併設の1号店を出店する。さらにファミリーマートは家事負担の軽減に結びつくとしてコインランドリー事業にも手を伸ばし、今年春ごろをめどに店舗併設の1号店を関東地方に展開する。
コンビニは売れる商品を確実に必要分だけ揃えつつ、さらに商品点数の多さが売上にそのまま直結する。季節商品などニーズは細かく変化するため、前述の来店頻度を高めるためにも、こまめに商品を入れ替える必要がある。以前にローソンに無人レジシステムを提供していた富士通が、元の技術を開発した米国企業のZippinに対して日本のコンビニ特有のニーズとして機能対応でリクエストしていたのが「週単位での商品入れ替え」だった。これらを細かく管理する流通システムと、実際に品出しを行なう人員があってこそ成り立つビジネスというわけだ。
人手不足もコンビニ業界を脅かしている。高齢化や深夜を含めた長時間労働の厳しさなどから、コンビニのオーナーのなり手がいなくなってきている。販売が頭打ちとなる中で人手確保が難しくなり、人件費の上昇が経営を圧迫している。
当然、このような場所ではコンビニの営業も難しい。盗難問題もあったが、それ以上に人流が減少した影響が大きく、セブン-イレブンのようなコンビニやWalgreensのようなドラッグストアは、同エリアでの軒並み店舗数が減少している。
国内コンビニエンスストアの出店が頭打ちにある中、セブン&アイ・ホールディングス(HD)が創業家側から買収提案を受けたことで、業界再編につながる可能性が出ている。セブンの買収を巡っては、ファミリーマートの親会社である伊藤忠商事の出資も取り沙汰されている。実現すれば、セブン&アイ傘下で業界最大手のセブン-イレブン・ジャパンと、業界2位のファミマの協業が進む可能性がある。ただ、巨額資金の調達など創業家によるセブン買収にはなおハードルがあり先行きは見通せない。
コンビニ業界を取り巻く環境が厳しさを増す中、セブンイレブン・ジャパンを傘下にするセブン&アイホールディングス、ローソン、ファミリーマートの大手3社は業界再編、寡占化を進めている。こうした大手の最近の戦略をみると、国内の経営が従来型では限界に来ており、コンビニが曲がり角にあることがみてとれる。
ファミリーマートと提携しているTOUCH TO GO(TTG)がレジを無人化する一方で、残りの品出しを含むオペレーションに人員を割り当てているのも、「どこを効率化すれば人件費と売上の整合性が取れるのか」を検討した結果にある。人件費は店舗運営の固定費となるため、一定の日商を確保できない店舗はそれ以上の人員を配置できない。昨今、コンビニが減少しているのは後継者のいないオーナーの廃業のみならず、店舗を維持できるだけの人件費に見合う日商が得られないエリアが増えつつあることも理由の1つにあるだろう。
国内のコンビニ店舗数は?
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