折り曲げられる太陽電池 普及支援
本レポートでは、ペロブスカイトを含む新しい技術による太陽光パネルの軽量化と用途の拡大に焦点を当てて、技術開発の動向、性能やコストの比較、新たな用途や先進事例をまとめました。太陽光発電の新技術はコストと耐久性の点で共通の課題を抱えています。新技術のさらなる普及に向けて課題を整理し、解決策とロードマップを提示しました。
ペロブスカイト太陽電池は、日本が抱える地理的問題をクリアにし、再生エネ普及を後押しする次世代の技術になります。国内での実用化も2025年に控えており、近い将来、今までは考えもつかなかった場所に設置されている太陽電池を目にするのではないでしょうか。
日本では太陽光発電を導入する適地が減りつつある、との議論もありますが、建物の屋根や壁面には大きなポテンシャルが残されています。最近はフィルム状のペロブスカイト太陽電池の開発が進み、さまざまな場所へ太陽光発電を設置することが可能になってきました。フィルム状に製造したペロブスカイトは軽くて薄く、折り曲げることもできるため、従来のシリコン系の太陽光パネルでは導入が難しかった耐荷重の低い屋根や建物の壁面にも設置できます。
ペロブスカイト太陽電池は、曲がる、軽い、ということ以外にも、長所があります。塗布や印刷によって量産が可能になる点や、主要な原材料であるヨウ素の生産量は、日本が世界シェア30%(世界2位)を占めているため国内調達がし易く、シリコン系太陽電池よりも安価に製造できる点が挙げられます。また、従来の太陽光電と比べて非常に軽いため、輸送コストを抑えられ、また、架台が必要ないため設置コストも削減できます。このように、長所の多いペロブスカイト太陽電池ではありますが、その普及に向けては、課題もあります。紫外線に弱く寿命も5~10年とシリコン系より短いなど耐久性が低いこと、面積が広くなると性能にばらつきが出るため大面積化が難しいこと、鉛等の原料の安全性です。 開発の初期の頃には、エネルギー変換効率(照射された太陽光エネルギーのうち何%を電力に変換できるか)の向上も課題の1つとされていましたが、現在では研究が進み、1cm角では23%と、従来のシリコン系太陽電池のエネルギー変換効率(14~20%程)に匹敵するエネルギー変換効率が実現しているそうです。
太陽光電池と聞いてイメージするのは、住宅の屋根やビルの屋上に設置する太陽光パネルや、広い土地や堤防などに設置された産業用の大規模太陽光発電設備(メガソーラー)のいずれかではないでしょうか。流通している太陽光電池の多くは、ガラス基板の上に結晶シリコンの膜や、CIS等の化合物の薄膜を重ねて作られています。一方で、近年に開発が進んだのが、ペロブスカイト構造を持った化合物で作られる「ペロブスカイト太陽電池」です。折り曲げやゆがみに強く、さまざまな形状に適用できるため、窓や柱などの曲面への設置が可能です。そのうえ、シリコン系太陽電池のおよそ10分の1ほどの重量のため、電気自動車やIoT機器への搭載や、窓への設置など、従来には無かった活用方法が見込まれています。
ペロブスカイト太陽電池が普及すれば、再生可能エネルギーの拡大に大きく貢献できると言われています。
経済産業省が、折り曲げ可能で薄くて軽い次世代太陽電池「ペロブスカイト型」を2040年度に累計で20ギガワット程度導入する目標を掲げる方向で調整していることが25日分かった。原発20基分の発電容量に相当する。12月に改定案を示すエネルギー基本計画に反映する。再生可能エネルギー導入拡大の切り札に位置付け、普及を支援する考えだ。
次世代太陽光発電の切り札と位置づけられる「ペロブスカイト太陽電池」の普及に向け、政府がまとめる戦略案の概要が分かった。製造・設置費用の支援だけでなく、主原料であるヨウ素の生産も後押しする。国産の有力な再生可能エネルギーとして、将来は輸出拡大を図る方針だ。
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