コーヒー豆が高騰 日本にも影響か
私たちの日常に欠かせないコーヒー。このまま地球温暖化が進むと、25年後にはいまのような値段でコーヒーが飲めない日が来るかもしれない。「コーヒー2050年問題」の原因とリスク、私たちがいまからできる対策についてみていこう。
実は日本国内でも沖縄や小笠原諸島で、コーヒー豆の生産は行われています。しかし、台風が直撃することも多く、大規模な生産が難しいのが現状です。
「コーヒー2050年問題」は気候変動の影響によるもの。SDGsの開発目標13は「コーヒー2050年問題」の解決に直結する。
コーヒーの栽培には熱帯雨林の伐採という森林破壊の問題がついてまわる。気候変動によりコーヒーの栽培適地が変化し、より標高の高い場所へと移動すると、新たな栽培地開拓のために森林が伐採される可能性が出てくる。現在のコーヒー栽培地域を守ることは、目標15「陸の豊かさも守ろう」にもつながるのだ。
【ニューヨーク=小林泰裕】コーヒー豆の歴史的な高値が続いている。27日のニューヨーク市場で、高級品種「アラビカ種」の先物価格は一時、1ポンド(約454グラム)当たり3・29ドル(約500円)超まで上昇した。データを遡れる1979年以降で最高値となった。ブラジルなどの生産国は近年、気候変動の影響で不作が相次いでおり、日本でも店頭価格のさらなる上昇につながる可能性がある。
チョコレート専門店「Minimal」の山下貴嗣代表は「カカオ豆の価格が上がっている中で円安が進行し、苦しい状況です。コートジボワールやガーナでの気候変動の影響は大きく、2年か3年はこの状況が続くのではないかという見方も出ている。この大きな波を工夫しながら乗り越えていきたい」と話しています。
栽培適地の減少によって、コーヒー生産量の減少や品質の低下、コーヒー生産農家の貧困、さらにコーヒーの価格の高騰といった問題が引き起こされることが懸念されている。
この開発目標では、一人ひとりが働く喜びを感じられる仕事の整備・提供が必要だとしている。コーヒー豆の生産現場においては、生産者側に価格の決定権がなく、国際市場価格に連動した低い金額で取り引きされてしまう。収入よりコストが下回ってしまうケースもある。どんなにおいしく良質なコーヒー豆をつくっても価格に反映されづらい。これでは働く意味がないし、努力や工夫で質を上げるメリットもなく、やりがいも感じられない。彼らの権利が保護され、適切な対価を得ることができたなら、いまよりも豊かで幸福なコーヒー産業の発展を続けることができるだろう。また、目標8では、「2025年までにあらゆる形態の児童労働をなくす」というゴールも設定されている。コーヒー農家では収益が少なく安定しないため、父親は都市部に出て働き、農村部に残された女性や子どもたちがコーヒー豆の栽培にあたるという現状もある。コーヒーによる収入が安定して確保されることで、多くの児童労働問題が解消される。
コーヒーは私たちの生活に欠かせない身近な嗜好品だ。しかし、コーヒーが生産される赤道直下の遠い地域で起きていることについて、私たちは知らないことが多い。「コーヒー2050問題」を知ることで、すでに生産地で起きている環境問題について知り、農家の現状を知り、地球が直面している危機を目の当たりにすることができる。コーヒーを飲むたびに、"これを守るために自分になにができるか"、"コーヒーをつくる人たちの生活と幸福のために何ができるか"を考える。それだけでも、日々の行動が少し、変わってくるのではないだろうか。
「コーヒー2050年問題」の一番の原因とされる地球温暖化による気候変動。その食い止めがもっとも必要な対策だ。世界的な動きでは、2015年のパリ協定の採択によって、二酸化炭素排出量の削減に向けた具体的な取り組みを、先進国だけではなく世界中の参加国すべてが求められた。2015年9月の国連サミットにて採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」では、2030年までに達成するべき17の目標のうち、13「気候変動に具体的な対策を」が設定されている。先進国・開発国を含めたすべての国々の、政府だけでなく企業や個人も、具体的な取り組みが求められているなかで、日本や中国をはじめとする二酸化炭素排出上位国の多くが、政府主導でカーボンニュートラルを推進している。達成目標時期を明らかにしたうえで、さまざまな取り組みを行っている。
コーヒーの消費量が多いのは日本だけではありません。EU、アメリカ、ブラジルの順でコーヒー消費量が多く、日本は4番目で全体の5%程度です。中国も増加傾向にあります。当面、供給よりも需要の伸びが大きいことが予測されます。
「みずほリサーチ&テクノロジーズ」の酒井才介 主席エコノミストは食品の値上がりについて、「世界的に原材料価格が上がっているところに、円安が重なっていることが要因だ。日本は資源輸入国で輸入に依存しているので、輸入品の円建てで見た価格が上がりやすい」と指摘します。そのうえで「おととしから去年にかけての上昇率と比べると、ことしは値上げの波の高さは低くなる。ただ、ことしの大きな違いは大幅な賃上げがあったという点。原油価格の高止まりや円安の進行、それに人件費や物流コストの上昇が重なることによって、値上げは想定以上に広がる可能性がある」としています。また「消費者からみると、食料品を中心とした日用品の価格が上がり続けているというのが一般的な感覚で、消費者の体感物価は高まりやすく節約志向が強まるといえる。家計から見れば実質賃金はマイナスが続き、消費がしたくてもできない状況だ。個人消費が下押しされれば、経済全体としての回復ペースが鈍くなってしまうことが懸念される」としています。
コーヒー豆の価格が上がっていることを受けて、日本国内のコーヒーメーカーでは値上げの動きが出ています。
背景には、中国と東南アジア間で、関税の引き下げ、そして、中国と東南アジアの間の交通網の整備(中国とラオスの間での高速鉄道が開通)が考えられる。つまり、物流含め、中国と東南アジア関係の深まりがコーヒーの価格の高騰にも繋がっていることを意味する。
「味の素AGF」は、先月から家庭向けのインスタントコーヒー25品目について納品の価格を引き上げました。店頭での小売価格は20%から25%ほど上がっているとみられるということです。「UCC上島珈琲」はことし7月から家庭用のレギュラーコーヒー、9月から900ミリリットルのペットボトルのコーヒーなどの出荷価格を引き上げるとしています。店頭での小売価格は20%から30%上がる見通しだということです。また業務用のレギュラーコーヒーも順次、値上げするとしています。
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