執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年11月29日 13時05分
短期反発も戻り限定、視線は下向き
ユーロ/円・ポンド/円は下落
ユーロ/円、ポンド/円も軟調。トランプ次期米大統領の人事を巡る警戒心から、足許積み上がった円売りポジションの巻き戻しが優勢になり、ユーロ/円は159.08円レベル、ポンド/円は190.70円レベルまで売りが先行しました。その後は、下落の反動から戻りを試す場面はありましたが、東京都区部コアCPIが前年比2.2%(10月:1.8%)へインフレが加速したことが分かると、12月の日銀利上げが意識されて、ユーロ/円は158.236円、ポンド/円は190.334円までそれぞれ下げ幅を広げました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
FX実践解説、感謝祭前の閑散相場、一時150円台へ30銭超急落(2024年11月27日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
英経済は改善ペース一服か
ECBのシュナーベル理事は、今後の利下げには慎重になる必要があると「段階的なアプローチを求める」姿勢を示しました。ユーロ圏のインフレ率も9月に1.7%まで低下しましたが、その後は2.0%まで戻し下げ渋っています。利下げペースの鈍化はユーロを支える要因になりそうです。しかし、フランスの政治的混乱や米大統領選のトランプ氏勝利に起因する不確実性の高まりなどがユーロ圏成長見通しの不透明さが残るほか、日銀の利上げ期待もあり、ユーロの上値の重さは残りやすそうです。これまでの下げの反動から一時的に切り返す可能性はあっても、継続性はそう高くないように感じています。こうした点で、戻り売りスタンスで臨みたいと考えています。
英国も、これまで経済の回復基調が続いていましたが、足もとでは企業景況感が製造業・サービス業とも頭打ち感が見られるなど、経済成長の停滞が感じられ始めています。また、失業率も悪化し労働市場の鈍化も意識され、英経済に対してはこれまでのような力強さが後退している可能性があります。段階的なペースでの利下げ観測はポンドをサポートしそうですが、成長減速への不安が上値を抑制しそうで、目先は調整圧力が強まる危険があるのではないかと、考えています。
ポンド/円への視線は下向きへ(テクニカル分析)
ユーロ/円は日足一目均衡表では三役逆転の状態になり、上値の重さが意識される形になっています。オシレーター系指標では、売られ過ぎ感が強まっており、短期的な戻りは想定されやすいものの、日足一目転換線が推移する161.921(28日時点)付近で頭を抑えられて、155.00円に向けて上値を切り下げていくのではないかと、考えています。
また、ポンド/円は日足一目雲の下限で何とか踏み留まっていますが、195.00円前後にトレンドラインが集まっており、上方向の抵抗帯の厚みが増している感じです。三役逆転の状態となり、目先の下値目途である9月30日安値189.546円をも割り込んで、緩やかに185.00円を目指していくことになるのではないかと、見ています。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:156.000-162.000
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:185.000-193.000
12/2 週のイベント:
一言コメント
もう師走と、改めて1年は早いと感傷的になりたい気持ちもありますが、恒例の大掃除が控えていますので、そうした気持ちはまだ封印しておくべきと、自分に言い聞かせています。
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来週の為替予想 ユーロ 円
ドルの代替通貨としての役割や、実際に世界の為替取引の約四分の一がユーロドルということもあり、ドルが上がるとユーロが下がり、ユーロが上がるとドルが下がる傾向にある。 中東・東欧・ロシア・アフリカとの関係が、他の先進国よりもつよく、これらの国で有事が起こった際には売りが出る傾向がある。
1999年に誕生した欧州の統一通貨。EU加盟全28か国中19か国で採用されている。統一通貨により域内の貿易障壁をなくし、単一市場を形成することで、域内の経済成長に寄与する。一方で、統一通貨の性格上、各国は経済状況に合わせた柔軟な金融政策の実施が難しい。また、単一市場を維持するために、財政赤字が単年度でGDPの3%を超えないこと、累積の国債残高がGDPの60%を下回ることという制限がかかっている。こうした状況から加盟国の一部でユーロに対して批判的な姿勢が見られ、ユーロ懐疑派が選挙で躍進する場面がみられる。 世界の外国為替市場ではドルに次いで取引量第2位。第3位の日本円とかなりの差があることもあり、ドルの代替通貨として、基軸通貨の役割を果たしている。 ユーロ圏全体の経済指標に加え、域内最大の経済大国であるドイツの経済指標でも相場が変動する。その他の加盟国の経済指標に対する注目度は低い。
ドル円は軟調。しばらくは154円挟みのもみ合いが続いていたが、トランプ次期米大統領がメキシコとカナダ、中国を対象に関税を強化する方針を示すとリスクオフの動きに。米感謝祭を前に持ち高調整の動きも活発化して、一時150.46円と10月21日以来の安値を更新した。
政治リスクが高まっているにもかかわらず、来年のユーロドルがパリティ(1.00ドル)まで下落すると見ている投資家も少なくない。しかし、現段階でのその見方は過剰かもしれないとの声も出ている。 複数の金融機関はトランプ次期大統領が欧州からの輸入品への関税を強化し、欧州経済を弱体化させるのではとの懸念から、ユーロに対して弱気に転じている。オプション市場では現在、ユーロドルの1年物の予想変動率は約7.60...
植田日銀総裁が、日経新聞とのインタビューで、為替がさらに円安に進むようなら、金融調節を行うこととなり、早期の追加利上げの可能性にも言及したことで円買いが加速し、先週末のNYでは一時149円47銭までドルが売られました。米長期金利も大きく低下し、ドル下落に拍車がかかりましたが、今朝のコメントでも指摘したように、日足の「雲の上限」でピタリと下落は止められています。今朝の東京時間ではドル買い意欲も根強く、ドル円は150円台を回復し、150円74銭辺りまで反発しています。今朝のコメントでも触れましたが、ドル円は今後のトレンドを予想する上でも微妙な値位置まで下げてきました。比較的早期の動きを示唆するテクニカルでは、トレンドが転換する予兆を見せてはいますが、まだ完成には時間がかかりそうです。水準で言えば、147円台半ばを明確に割り込めばひと先ずは「ドル高トレンドの終焉」と見ていいかと考えています。多くの市場参加者が同じテクニカルを見ていることから、そのテクニカルがドル高の転換を示せば、かなりの市場参加者が同じ方向に舵を切り直すことで、そのテクニカル指標が、より「正しいもの」として信奉者を増やし、それがまたトレンドを形成するといった好循環を繰り返すことになります。
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