昨日の海外市場でドル円は、日銀の早期利上げ観測が一段と高まるなかでクロス円とともに売りが優勢に。米金利が上昇幅を急速に縮めると、先週末安値の149.47円を下抜けて10月16日以来の安値となる149.08円まで売り込まれた。ユーロドルは欧州中央銀行(ECB)の利下げ観測や仏政局不安の高まりから売りが強まった。良好な米指標を受けて米長期金利が一時上昇したことも嫌気され、一時1.0461ドルまで下落した。
本日の東京時間のドル円は、上値が重いか。昨日の東京時間はフランスの内閣不信任案が採決される可能性が高まり、ユーロ売り・ドル買いの影響でドル円も底堅い動きになった。しかしながら、12月の日銀政策決定会合での利上げ期待が高まる中で、積極的に円を売るような流れではなく上値が重かった。本日は昨日に上値の重さを確認した後だけに、更に円売り・ドル買いは仕掛けにくいだろう。
昨日日銀が発表した11月調査の「債券市場サーベイ」では、DIはマイナス20ながらも2015年11月調査以来の高い水準となった。8月からの国債買い入れの減額などで市場機能の改善につながったとみられる。また、2024年末は若干下がったが、金利見通しはおおむね前回より上昇予想が高まったことで、市場の利上げ期待も強い。今後は今週予定されている中村審議委員の会見など、日銀関係者の金融政策についての温度差を確認していく相場展開が予想される。ただ、植田日銀総裁が「データはオントラック」と発言したように、先週の11月東京都区部消費者物価指数(CPI)の発表後は12月の政策決定会合まではインフレ指標の発表予定がないことで、12月もしくは1月の利上げ期待の高さが円買い意欲を高めそうだ。また、円買いの勢いは対ドル以外でも根強いことにも要警戒。欧州圏ではフランスやドイツの政局不安、豪州では昨日発表されたメルボルンインスティテュートのインフレ率の低下などもありクロス円が売られやすいだろう。なお、12月に入り市場流動性が悪化していることで、ニュース等が全くない場合でも市場が大きく動意づくリスクには警戒したい。
本日は本邦からは11月マネタリーベース、豪州からは7-9月期経常収支が発表される程度で、経済指標で市場を動意づけるのは難しそうだ。ただし、米国からは10月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が発表され、今週6日の米雇用統計まで雇用指標の発表が相次ぐことでNY入り後の市場動向には警戒したい。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通し円買いの流れは変わらず 欧州政局不安もありクロス円の上値も重い
前日の海外市場では、株高を背景に欧州通貨と高金利通貨が買い進まれ、ドルと円が最も弱い通貨となったが、きょうの東京市場ではその流れを継承しなかった。
[東京 21日 ロイター]正午現在のドル/円は、ニューヨーク市場の午後5時と比べてドル安/円高の93円後半で取引されている。ドル/円はファンド勢の売りに上値を抑えられたほか、クロス円は利食いに押され、株高にもかかわらず下落した。
ユーロ/円をはじめとするクロス円は、前日海外市場で上昇した後の利食い売りが先行し、全般的に軟調。ユーロ/円は高値134.05円から133.18円まで下落した。
他方、バーナンキ議長は、米ウォールストリート・ジャーナル紙が20日付で掲載したコメンタリーの中で、経済状況からみて、長期間の金融引き締めは正当化できない可能性があるとする一方で、景気回復が定着するにつれ、インフレ防止のため金融政策の引き締めが必要との見方を示した。市場参加者の一部は、同コメンタリーを金融緩和政策からの出口論をけん制するものととらえたという。
先週は、大手金融機関の決算が軒並み強い結果となったことを受けて株価が上昇し、為替市場では米ドルと円が最も弱い通貨となった。「株価と円、ドルの逆相関関係が続く中今週もこうした流れが続くか否かに注目」(JPモルガン銀 棚瀬氏)という。
また、米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)が、米金利水準が予想レンジの上限にあるとして、5―10年債の積み増しを表明したことが、ドル/円の下落の一因との声もある。「ドル/円は特にNY市場で、米金利の上下動に相関しやすい傾向がある」(外銀)という。
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