昨日の海外市場でドル円は、韓国の尹錫悦大統領が非常戒厳を宣言したことをきっかけに韓国ウォンが急落すると、リスクオフの円買いが活発化。節目の149円を割り込み、一時148.65円と10月11日以来の安値を付けた。ただ、10月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が予想を上回る結果だったことが伝わると下げ渋り。韓国当局者が「必要に応じ市場に無制限の流動性を供給する」と表明したほか、韓国で開かれた臨時国会で「戒厳令解除の決議案」が満場一致で可決されると149円半ばまで持ち直した。ユーロドルは1.05ドルを挟んでもみ合いだった。
本日の東京時間のドル円は、引き続き上値が重いか。この数日の東京時間では、一昨日はフランスの内閣不信任案が採決される可能性が高まったことによるユーロ売り・ドル買い、昨日は中国の景気停滞懸念からの中国長期金利低下による人民元売り・ドル買いなどの影響で、対円でもドルは強含んだ。しかしながら、韓国の戒厳令騒動はひと段落ついたがドル円の戻しが限られているように、引き続き上値が重い。また、昨日は大幅に日経平均株価が上昇したのにもかかわらずリスク選好による円売りは限定的で、市場は各国の中銀の政策決定や政治動向に目が集まっている。その中で日銀が他国中銀と比較して利上げの可能性が高いことが、ドル円の上値を抑えそうだ。
もっとも、12月に入り東京時間はドル買い・円売りのフローが入りやすいことが、ドル円のある程度の支えになるだろう。本日は本邦からは市場を動意づけるような経済指標の発表は予定されていないこともあり、明日行われるハト派の日銀の中村審議委員の講演や、18-19日に控えた日銀政策決定会合への観測記事などが注目されることになるか。
本日は円だけでなく、オセアニア通貨や人民元、そしてユーロの値動きもボラタイルになる可能性がある。まずは、東京時間9時半に豪州からは7-9月期の四半期国内総生産(GDP)が発表予定。市場では前期比、前年比ともに上昇が予想されている。来週9-10日に豪準備銀行(RBA)理事会が行われ政策金利の据え置きが予想されているが、GDPが市場予想を下回った場合にはRBAがタカ派姿勢を弱める可能性もあることで注目される。
中国からは11月Caixinサービス部門購買担当者景気指数(PMI)が発表される。昨日の人民元(CNH)は対ドルでは昨年11月上旬以来の元安水準を更新した。また、中国10年債利回りは心理的節目2%を割り込むなど22年ぶりの低水準を記録している。市場ではPMIは前月より小幅にプラス幅を広げるとの予想になっているが、トランプ政権樹立後に更に中国経済は苦境に立たされる可能性が高いことで、よほど予想よりも良い結果にならない限りは元買いにはつながりにくそうだ。昨日のように元の対ドル相場が他通貨にも影響を与えることで目が離せないだろう。
そして、ユーロの値動きも警戒。フランスの内閣不信任案について、本日から審議が始まり、本日可決する可能性もある。フランス政局の動向がユーロに大きな影響を与えることになりそうだ。
また、韓国の戒厳令騒動後の尹大統領の動向にも引き続き注目したい。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通し株相場でなく金利 政治相場で円堅調か
一般的な感覚では、例えば金利が1%の金融商品と3%の金融商品がある場合、誰もが3%の金利が付く金融商品を購入したい気持ちになるでしょう。それと同じく、資金は金利の低いところから高いところへ流れるのが基本です。米金利の上昇や高い水準が維持されればドル資産への人気は続き、外国為替市場では円安・ドル高の圧力が続くことになります。円を売ってドルを買い、金利の付く金融商品、例えば米国債などへの投資といった流れが考えられます。
しかし日本銀行の金融政策に大きな影響を与える要因が浮上している。それが、27日投開票の衆院選挙である。足もとでは、与党が議席を大きく減らし、政治情勢が不安定化することを警戒して、日本株の軟調が生じている。主に米国要因に根差す円安傾向がなければ、10月半ば以降の株価はもっと顕著に低下していただろう。
このように、当面の日本銀行の金融政策は、衆院選挙結果と為替動向に左右されるだろう。さらに、その後に控える11月5日の米大統領選挙も、米国経済の見通しと為替市場に大きな影響を与えることから、それらを通じて日本銀行の金融政策決定にも大きく影響するはずだ。日本銀行は、日米の政治イベントに翻弄されることになる。
自公がわずかに過半数の議席を落とす場合には、金融市場の反応は比較的小さいだろうが、より大きな議席を失うことで、野党の一部との連立を模索することを強いられる場合、首班指名で野党の一部に協力を仰ぎ、衆院で過半数の議席を持たない少数与党内閣となる場合には、政治不安はかなり強まるだろう。かつて少数与党内閣であった羽田内閣は、1994年4月28日から1994年6月30日まで2か月しかもたなかった。衆院で過半数の議席を持たない与党の内閣のもとでは、野党提出の内閣不信任案が可決されやすく、その結果、内閣総辞職、あるいは衆院解散を迫られる。
他方、自公で過半数の議席が維持できない場合には、どの程度議席を落とすかに応じて、政治不安は強まり、金融市場では円高・株安同時進行の傾向が強まるだろう。
③22年3月以降は、為替のセオリー通りに「利上げ=通貨高」の関係がみられます。22年3月に1ドル=122円台後半だったドル円相場(月末終値ベース)は、23年10月には151円台まで円安・ドル高が進みました。これは22年3月以降にFRBがインフレ退治を主な目的として利上げを加速度的なペースで実施する中でも米景気が強さを維持したことが影響しているとみられます。米利上げと米景気の底堅さが共存する一方、日銀は大規模金融緩和政策を継続していることで、外国為替市場では円安・ドル高が一段と進むことになりました。
実際、15~20年にかけてFRBは緩やかな利上げと急激な利下げを実施しました。08年のリーマン・ショックを契機とする世界的な経済・金融市場の混乱に対処するため、FRBは米政策金利を12月に0~0.25%まで引き下げていましたが、その後の景気回復を受けて15年12月に9年半ぶりに0.25%の利上げに踏み切りました。その後は段階的に0.25%刻みの利上げを実施し、2018年12月までに2.25~2.50%まで引き上げました。丸3年間での利上げ幅は2.25%でした。
自公が大幅に議席を落とし、円高株安が進む場合には、金融市場の安定に配慮して、日本銀行が追加利上げを見送り、様子見姿勢を強めることになるだろう。その場合、年内の追加利上げはより難しくなるだろう。
さらにそうした連立政権では、立憲民主党が中核になるだろうが、立憲民主党は日本銀行の金融政策正常化を支持している。そのため、利上げが進むとの観測から円高が進みやすくなる。その場合、政治不安を映したリスクオフ傾向と日本銀行の利上げ観測が重なることで円高が大きく進み、それが政治不安を映した株安傾向を増幅し、円高株安傾向が強まることが予想される。
日銀の植田和男総裁は「当面緩和的な環境が継続する」としていますが、外国為替市場などの関心は日銀の追加利上げに移っています。もしFRBが利下げに転換すると、これまでと逆のパターンになります。
この期間は「利上げ=通貨高」のセオリー通りにはいきませんでした。背景の1つとして、16年に入り世界的な景気減速が意識される中での米利上げ実施だった点が挙げられます。また、16年6月に英国民投票で英国の欧州連合(EU)離脱(=ブレグジット)が決まったことや、17年に米国でトランプ大統領が新たに就任し、米中貿易摩擦が勃発するなど複数の政治リスクが顕在化し、米利上げが米国を含む世界景気の下押しにつながるとの懸念が広がったことも大きく影響し、米利上げにもかかわらず円高・ドル安を招くことになったとみられます。
そして、政治の混乱が最も強まるのは、自公が失う議席がかなりの多数に達し、その結果、政権を担うことが難しくなるケースだろう。その場合、自公は下野し、現在の野党が連立政権を模索することになる。しかし、連立交渉は困難を極め、政治の混迷は極まるだろう。
具体的な波及経路をざっくり説明します。利上げによって、一般的に民間金融機関の貸出金利や預金金利といった市場金利が上昇するため、企業は設備投資を控えるようになったり、個人は貯蓄に回すなどしたりして消費を抑制するようになります。その結果、景気全体の過熱を抑える効果が期待できるようになるというわけです。
その後、予防的措置としての利下げを複数回実施していたFRBを襲ったのが、新型コロナウイルス感染拡大で生じた世界経済・金融市場の大混乱です。20年3月にはコロナ対策による2度の臨時会合で0.50%および1%の合計1.50%の緊急利下げを決めたのです。19年7月以降の利下げ幅は2.25%に達しましたが、要した期間はわずか8カ月でした。
金融政策は国内物価動向を踏まえて決めるのが基本だ。25日に発表された10月東京都区部CPIで、コアCPIは前年同月比+1.8%と、前月の同+2.0%から予想以上に下振れた。この点を踏まえると、日本銀行は追加利上げを急ぐ必要はないように見える。ただし、物価動向については見通しから大きくずれない限り、追加利上げのタイミングに大きくは影響しないのではないか。追加利上げのタイミングにより大きな影響を与えるのは、為替動向と米国経済動向となるだろう。
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