老後資金は2000万円から1億円へ
また年代別の傾向で特徴的なのは、50代では「投資に興味がない」という回答が目立つ点です。もしかすると、バブル崩壊後の株価低迷を経験したことで投資に対してネガティブな印象を持っていたり、老後不安が目前にせまる中、「もう時間がない」という理由であきらめてしまったりしているのかもしれません。
老後も働くことは、収入を得られるだけでなく、社会との繋がりを維持し、ボケを防止し、誰かの役にたっているという自己肯定感を与えてくれます。かつては高齢者が仕事を見つけるのは大変でしたが、少子高齢化による労働力不足の時代ですから、高齢者でも仕事を探せば見つかるでしょう。
主婦も、子育てが一巡したら働きましょう。収入が増えること、社会との繋がりを持てることに加え、厚生年金に加入できる働き方を選べば、老後資金の面でも安心感が高まります。
「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。
老後資金1億円が不可能ではないと言う理由はあと3つあります。勤め人の生涯賃金は2億〜3億円になります。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を基にした独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計 2023」という資料を見てみましょう。
「人生100年時代」と言われる昨今、老後に必要な生活資金について、「いったいどれくらい準備しておけば間に合うのだろうか」と不安を感じている方も多いのではないかと思います。こうした漠然とした不安を解消するためには、現状を正しく把握することが第一歩となります。そこで、老後に必要な生活資金がどれくらいなのか、いくら準備すればよいのかを試算してみましょう。
【理由3】日本の年金制度は現役世代が高齢者を支える仕組みになっているので、少子高齢化が進むと高齢者への年金支給額が減ってしまうわけですが、それほど極端な減少ではなさそうなので、ある程度の老後資金があれば何とかなりそうです。
こんな話が騒がれること自体、我々金融関係者には驚きでした。なぜなら、日経マネーでは毎年「老後資金は1億円かかる。現役時代に3000万円は作っておこう」という特集を世に出してきましたし、「とてもそんなには貯められない」と言う割に、本当は下のグラフのように60代でも平均で2588万円、中央値でも1200万円の金融資産を持っているからです(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]令和5年調査結果」)。
2つ目は、今はNISA(少額投資非課税制度)やiDeCoなど、非課税で運用できる制度が拡充されていることです。特に新NISAでは生涯投資枠が1800万円まで拡大され、運用期間も恒久化されましたので、これだけで「老後資金2000万円」なんて軽くクリアできてしまいます。
さて真面目に言うと、今の話と同じで老後資金は計算上は1億円程度かかります。前述の消費支出の月25万959円が30年分で9035万円。これが恐らく生きていく上での最低ラインで、医療費や介護費に少し余裕を持たせれば1億円という数字は大げさではありません。
直近の数字では高齢世帯の実収入は24万4580円、消費支出は25万959円です(総務省「家計調査報告」2023年)。これなら30年分でも赤字は約230万円で、話はいきなり老後資金230万円不足問題に縮小するわけですね(笑)。
「老後資金1億円なんて、とても無理」。たいていの人がこうおっしゃいます。しかし最初に結論を言ってしまえば、これは別に不可能な話ではありません。ただこれは「リタイア時に金融資産として1億円を用意する」という意味ではないので、誤解のないよう順を追って説明します。
老後資金が足りないと感じる人も多いでしょうが、そうした人はケチケチすることを考える前に働いて稼ぐこと、生活を見直すことを考えましょう。
現役世代が自宅に住むべきか借家に住むべきか、という議論がありますが、筆者は老後は自宅に住むべきだと考えています。現役時代に自宅を買い、住宅ローンを払い終えておけば、住む場所の確保や、家賃の支払い等の不安から解放されるでしょう。
また生命保険文化センターのアンケートで「ゆとりある老後生活費」を聞いたところ、回答は平均で月37万9000円になりました。これが30年分なら1億3644万円になる計算です。
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