執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年12月6日 14時26分
自律反騰の流れ期待も上値は重い
ユーロ/円、ポンド/円売り先行後に小幅に戻す下落
フランスの政局混乱や韓国での戒厳令などで、ユーロ/円は156.170円まで売りが先行しました。その後は、日銀の追加利上げ観測の後退やドル高一服から、159.388円まで反発しました。ポンド/円も同様に、188.087円まで下げた後に、192.208円までの戻りを試しました。ただ、足許下げ過ぎたことへの反動の域を出ず、戻りは限定されました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
FX実践解説、これがFXの心理「朝令暮改(ちょうれいぼかい)」(2024年12月5日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ECB利下げは織込み済
12日にECB理事会が開催され、0.25%の追加利下げ実施に踏み切ると見られています。また、見通しもこれまでよりハト派な姿勢を示し、利下げサイクルの継続を示唆すると予想されています。金利低下観測やフランスの不透明感、米国の通商政策の不透明感から、ユーロは上値が抑制された状態が続くと見られています。ただ、市場ではすでに織り込みが進んだほか、シカゴ通貨先物の投機筋のネットポジションも2020年3月以来のユーロ売りレベルへ傾いていることもあり、短期的にはショートカバーが入りやすそうに感じます。
また、ポンドは、インフレが下げづらい中で下方向は限られそうですが、目立った独自イベントがない中で日銀の利上げ観測の動向がポンド/円の振幅を作りそうなため、本邦の金利動向や経済指標に注意を払いたいと、考えています。
ユーロ/円、ポンド/円は似たチャート形状(テクニカル分析)
ユーロ/円は3日に下ひげの長いローソク足が出現して戻りを試す格好になっていますが、日足一目均衡表では三役逆転で、積極的に買い進める環境にないように感じています。下落スピードが速かった反動から、もう少し戻りを試す流れが続く可能性はありますが、それでも一目・雲の下限(160.916円)では上値が抑えられるのではないかと考えています。
また、ポンド/円もユーロ/円と同様に自律反発から、11月20日高値(197.786円)を起点とする下落幅の61.8%戻しとなる194.081円付近までの戻りを試しても良さそうですが、現時点ではその先は険しそうに感じています。194.00円アッパーは売り場を探したいと、考えています。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:EUR/JPY:155.000-161.000
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:GBP/JPY:185.000-194.000
12/9 週のイベント:
一言コメント
韓国の戒厳令には驚きました。ファーストレディへの批判が高まっていることは知っていましたが、それ以上に国政が危ぶまれていたことはほとんど知りませんでした。
改めて、地政学リスクはどこにでも転がっているものだなと、考えさせられました。
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来週の為替予想 ユーロ 円
1999年に誕生した欧州の統一通貨。EU加盟全28か国中19か国で採用されている。統一通貨により域内の貿易障壁をなくし、単一市場を形成することで、域内の経済成長に寄与する。一方で、統一通貨の性格上、各国は経済状況に合わせた柔軟な金融政策の実施が難しい。また、単一市場を維持するために、財政赤字が単年度でGDPの3%を超えないこと、累積の国債残高がGDPの60%を下回ることという制限がかかっている。こうした状況から加盟国の一部でユーロに対して批判的な姿勢が見られ、ユーロ懐疑派が選挙で躍進する場面がみられる。 世界の外国為替市場ではドルに次いで取引量第2位。第3位の日本円とかなりの差があることもあり、ドルの代替通貨として、基軸通貨の役割を果たしている。 ユーロ圏全体の経済指標に加え、域内最大の経済大国であるドイツの経済指標でも相場が変動する。その他の加盟国の経済指標に対する注目度は低い。
ドル円は軟調。しばらくは154円挟みのもみ合いが続いていたが、トランプ次期米大統領がメキシコとカナダ、中国を対象に関税を強化する方針を示すとリスクオフの動きに。米感謝祭を前に持ち高調整の動きも活発化して、一時150.46円と10月21日以来の安値を更新した。
ユーロドルは、米指標結果による米長期金利の動向に左右されるだろう。ただ、ユーロを取り巻く環境を見ると積極的に買いが進む状況とは言えない。まず、ユーロ圏で経済規模が最大となるドイツの景気が悪化しているほか、連立政権崩壊で政局不安も高まっている。また、仏でも予算案を巡り9月に誕生したばかりのバルニエ内閣も崩壊の危機に直面している。更に、トランプ次期米政権による関税政策で欧州全体に打撃が見込まれていることが挙げられる。
植田日銀総裁が、日経新聞とのインタビューで、為替がさらに円安に進むようなら、金融調節を行うこととなり、早期の追加利上げの可能性にも言及したことで円買いが加速し、先週末のNYでは一時149円47銭までドルが売られました。米長期金利も大きく低下し、ドル下落に拍車がかかりましたが、今朝のコメントでも指摘したように、日足の「雲の上限」でピタリと下落は止められています。今朝の東京時間ではドル買い意欲も根強く、ドル円は150円台を回復し、150円74銭辺りまで反発しています。今朝のコメントでも触れましたが、ドル円は今後のトレンドを予想する上でも微妙な値位置まで下げてきました。比較的早期の動きを示唆するテクニカルでは、トレンドが転換する予兆を見せてはいますが、まだ完成には時間がかかりそうです。水準で言えば、147円台半ばを明確に割り込めばひと先ずは「ドル高トレンドの終焉」と見ていいかと考えています。多くの市場参加者が同じテクニカルを見ていることから、そのテクニカルがドル高の転換を示せば、かなりの市場参加者が同じ方向に舵を切り直すことで、そのテクニカル指標が、より「正しいもの」として信奉者を増やし、それがまたトレンドを形成するといった好循環を繰り返すことになります。
5月から7月までのドル/円のレンジは151.85円から161.95円。 レンジ幅は10.10円。 高値と安値の50%(中間点)は、156.90円。 現在の水準は、中間点よりも「円高」。 安値と中間点の50%は154.38円。
ドルの代替通貨としての役割や、実際に世界の為替取引の約四分の一がユーロドルということもあり、ドルが上がるとユーロが下がり、ユーロが上がるとドルが下がる傾向にある。 中東・東欧・ロシア・アフリカとの関係が、他の先進国よりもつよく、これらの国で有事が起こった際には売りが出る傾向がある。
来週さらに大荒れ予想のドル/円相場、円高と円安のメドは?
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