買収相次ぐ大手生保 海外に活路
昨年相次いだのは国内大手による米中堅生保の買収。2月は第一がプロテクティブ生命を買収、7月には明治安田がスタンコープ・ファイナンシャル・グループ、8月は住友生命もシメトラ・ファイナンシャルの買収を発表した。いずれも5000〜6000億円規模の大型買収だ。
日本生命は今月、米生保大手コアブリッジ・ファイナンシャルに約5850億円を投じ、持ち分法適用会社としたばかり。国内でも6月に介護保育事業を手掛けるニチイホールディングスを買収。3件合わせた投資額は約2兆円に上るが、35年までに4兆円程度の投資を想定しており、さらなる買収に意欲を示す。
日本生命にとっては買収により、成長が見込まれる銀行などの保険商品の窓口販売を強化し、国内での事業基盤を強化する狙いがある。交渉は初期段階にあるが、実現すれば、日生の保険料収入は第一生命保険 <8750.T>を抜いてトップになる。
海外や非保険事業への進出には一定のリスクも伴うが、ある大手生保幹部は「国内生保事業の縮小均衡は避けられない」と危機感を募らせる。ただ、国内市場に注力してきた大手生保には海外事業を担う人材が乏しく、育成も急務となっている。
明治安田生命保険も来年実施予定の買収を含め、16年以降で4件、計1兆円超を米生保に投資。住友生命保険も16年に米生保、24年までにシンガポール生保にそれぞれ約4000億円超を投じて傘下に収めた。
買収額は未定。生保の企業価値をはかる基準として使われる、修正純資産と保有契約から見込まれる将来のキャッシュ・フローなどの合算であるエンベデッド・バリュー(保有契約の将来利益現価)でみると、三井生命の企業価値は約7500億円(2015年3月末時点)。
「2035年に基礎利益を(現在の2倍の)1.4兆円にしたい。実現には海外への展開が必要だ」。日本生命保険の清水博社長は11日発表した米系生保レゾリューションライフ買収の記者会見で、成長の軸足を海外に移す姿勢を明確にした。
日本生命、1.2兆円で米生保買収 業界最高額、「海外事業の中核」
日生は2019年からレゾリューションへの出資を始め、現在、発行済み株式の約23%を保有する。今回の買収で残る約77%を取得し、完全子会社化する。日生が豪州に持つ子会社MLCと、レゾリューション傘下の豪州企業も経営統合する。
国内生保をめぐっては、少子高齢化を背景に市場が縮小するなか、成長の活路を海外に求め欧米の保険会社買収を実施するケースが相次ぐ一方、国内の大型再編は実現していなかった。日生は海外市場でのM&Aも検討しつつ、国内でのビジネス強化を狙う。
[東京26日ロイター] - 日本生命が三井生命の買収に向け交渉に入ったことが明らかになった。複数の関係筋が26日、ロイターに明らかにした。実現すれば、国内生保としては 2004年の明治安田生命の発足以来の大型の買収・合併(M&A)になる。
他生保でも近年、同様の動きが相次ぐ。第一生命ホールディングス(当時は第一生命保険)は15年に米生保プロテクティブを約5750億円で傘下に収め、その後も米国市場で1000億円超の買収を重ねている。国内では今年、福利厚生サービスを手掛けるベネフィット・ワンを買収した。
大手生命保険会社が国内生保事業への依存から脱却しようとする動きが鮮明となっている。人口減少などで従来型ビジネスの停滞が見込まれる中、各社は高成長が期待できる海外市場や非保険分野に活路を求め、出資や買収を活発化させている。
足元で日本生命、第一生命ホールディングス、明治安田生命、住友生命の大手生保4社は、海外事業の展開を活発化させている。その背景には、国内市場が少子高齢化で縮小に向かうなか、人口増加や経済成長の見込める海外事業で収益を補完する狙いがある。特集では、大手生保の海外事業の現状や将来戦略、生保業界全体の動向に迫る。
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