午前の為替予想は… 米インフレ指標に注目 口先介入の可能性も出てきた
作成日時 :2024年12月20日8時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部 中村勉
ドル円予想レンジ
156.600-158.600円
前日の振り返りとドル円予想
昨日のドル/円は終値ベースで約1.7%上昇。日銀が金融政策決定会合で政策金利を市場予想通り0.25%に据え置いたほか、植田総裁の会見での発言内容が早期の追加利上げに消極的と受け止められ円安が加速。その後、米経済指標に良好な結果が目立ったことで、一時5カ月ぶりとなる157.80円前後まで上値を伸ばした。
日米中銀の金融政策を巡る方向性にはっきりとした違いが見て取れるだけに、当面は円安ドル高が続きやすい地合いだ。本日は米11月個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)が発表される。結果次第では米長期金利が更に上昇して、ドル/円は158円台乗せを試すことも考えられる。ただ過去2週間で5%以上円安が進んでいる。以前、神田前財務官が「2週間で4%の動きはなだらかなものとは到底言えない」と発言していたため、円安をけん制する口先介入が発動してもおかしくない水準であることは留意しておきたい。
今朝 最新のドル/円チャート
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外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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ドル円午前の為替予想 米インフレ指標に注目 口先介入の可能性も出てきた
こちらは多少の違いはあるものの、基本的にはバイデン現政権からの継続となります。現状から大きな相違がないということは、現在の為替相場からドル高・ドル安のどちらの方向にも大きく傾くわけではないということになりますね。ただ、ハリス候補の勝利=トランプ候補の敗北ですから、トランプ候補の勝利によってドル高を見込んでいた市場参加者は方針転換を迫られることになり、その分初動はドル安で反応する可能性が高いでしょう。実際にこうした見方を裏付ける事例として、ハリス候補とトランプ候補による初の討論会(9月10日)でハリス候補が優勢だったとの世論調査結果が伝わると、為替市場ではドル安の反応が見られました。
1ドル152円に加え、1ドル155円という2つ目の防衛ラインを超えて円安が進んでもなお、政府は為替介入に踏み切っていない。しかし介入実施はかなり近づいているのではないか。鈴木財務大臣が23日の参院財政金融委員会で示した「環境は整った」との発言は、それを示しているだろう。
外国為替市場で円安が止まらない。34年ぶりとなる1ドル=152円台到達を予想する声もある。日本と米国で金融政策を決める会合が終わり、当面は日米の金利差が縮まらないとの見方が優勢だからだ。鈴木俊一財務相は21〜22日に投機的な動きをけん制したが、市場は為替介入に対する政府の本気度を見極めようとしている。
他方、植田総裁は先週、ワシントンで、追加利上げを示唆する「タカ派」色の強い発言を繰り返した。これは円安阻止を狙った「口先介入」と言えるだろう。ところが、それも影響し、いわば「薬が効きすぎた」形で、先週末には日本の株価が大幅に下落した。今週の株価は回復基調を辿ったが、25日の日本の株価は再び大きく下落し、かなり不安定な状況が続いている。
経済に悪影響を与える円安阻止を狙って、追加利上げを示唆する「タカ派」な発言をすると、今度は早期の利上げを懸念して株価が大きく下落し、経済、金融に悪影響を及ぼしかねなくなった。日本銀行は円安と株価下落の板挟み状態にあり、決定会合後の記者会見に植田総裁がどのようなトーンで今後の政策を語ればよいのかは、より難しくなってきた(コラム「日銀による為替市場への口先介入:円安進行と株価下落の板挟みに」、2024年4月23日)。
ただ、2016年当時と現在を比較して大きく異なるのがFRBの金融政策です。2016年は、リーマンショックからの不況で長らく続いた金融緩和政策を前年にようやく転換し、利上げ方針へと舵を切った年でした。対して、現在は2022年からの利上げ局面が終了して利下げが始まった直後です。前述したように、金融政策は為替市場に与える影響が大きいため、2016年当時のようなドル高が進む可能性は高くないかもしれません。また、覚えておきたいのがトランプ候補自身はドル安を志向しているということ。米国第一主義を掲げるトランプ候補は、国内製造業の競争力を弱めるドル高を嫌っています。大統領はFRBの金融政策運営に対して発言権を持つべきだと主張するトランプ候補が、FRBに対して利下げを働きかける可能性もありそうです。FRBの金融政策に大統領が介入した場合、中央銀行の独立性が損なわれることになりますが、これは市場が最も嫌う通貨安(この場合はドル安)の要因です。
24日の日本時間夜に、ドル円レートは1ドル155円台まで円安が進んだ。1990年6月以来、約34年ぶりの安値を更新した。
25日朝の東京市場は155円20銭~40銭台で推移している。4月10日に1ドル152円の節目を超えた際には、同日中に一気に1円以上円安が進んだことと比べると、足もとの円安の動きはやや鈍い。
こちらは2016年当時のドル円のチャート(ローソク足、日足)ですが、11月9日のドル円は一時101円台前半の水準まで急落しました。時系列で追っていくと、大統領選当日の8日(日本時間の9日午前)から徐々に開票結果が伝わり、激戦州などでトランプ氏が勝利したことが明らかになっていきます。事前の世論調査や各メディアの出口調査ではヒラリー・クリントン氏が有利と報じられていただけに、この年の大統領選挙は番狂わせとなったわけです。為替市場ではこうした予想外の結果に対して大きな反応を示すことが多く、この時は政治経験のないトランプ氏が大統領になることへのリスクが意識され、いったんはリスク回避の目的で「円高・ドル安」方向に大きく反応しました。その後は、前述したように「トランプ・ラリー」の流れに沿って「円安・ドル高」方向へと反転。ドル円も105円台後半まで急反発しました。
22日の東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=151円80銭台と、2023年11月以来の円安・...
こうした政策のうち、輸入品に対する関税は輸入品価格の上昇と国内のインフレにつながり、米国の中央銀行であるFRBの利上げを促すことになります。為替市場では、金利の高い(もしくは金利を引き上げている)国の通貨が買われやすい傾向にあるため、米国の金利上昇はドル高を招く要因になるでしょう。
その後も米国の金融緩和方針に沿ってドル安の継続が予想されますが、ハリス候補はFRBの独立性をこれまで通り尊重する姿勢を示していますので、トランプ候補のように大きくドル安へと傾くリスクは小さいと思われます。全般的には、穏やかなドル安の展開となりそうです。
こうした材料から、トランプ候補が勝利した際のシナリオとしては、初動の反応はドル高、次第にドル安方向へと転換と予想されます。トランプ候補の経済政策によって再度ドル高に向かう可能性はあるものの、金融政策への介入があった場合には大幅なドル安もあり得る波乱含みの展開となりそうです。
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