執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2024年12月20日 14時00分
米緩和減速と日銀引き締めで日米金利差変わらず?!調整は押し目買いの絶好の契機
米ドル/円、4カ月ぶりに高値塗り替え
米ドル/円は底堅い展開。米FRBの利下げペース鈍化観測や日銀の利上げ見送り期待から、米ドル/円は154.479円まで買いが先行しました。一巡後はビックイベントを控えた調整売りで153.162円まで下げる局面はありましたが、FOMCの来年の利下げ回数が9月時点の4回(1回の利下げ幅は0.25%)から2回へ低下したほか、日銀会合が追加利上げについての確度を高めなかったため、米ドル/円は157.928円と4カ月ぶりに高値を塗り替えました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
FX実践解説、日銀12月会合「ハト派会見でスケベショートを一掃」 (2024年12月19日)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ネガティブイベント発生は、ロング勢には好都合か
9月時点では4回ほど織り込まれていた来年の米利下げ回数が、たった3カ月で2回まで低下した点を見ると、米FRBの見通しは大幅に修正されたと見て良いのかもしれません。また、9月時点ではFF金利は25年末に3.4%へ達する見通しでしたが、今回はその水準に達するのが26年末と1年先送りされている点もこの考えを補強しています。FRBの来年の利下げ回数が2回減らし、日銀が2回利上げするとした場合、足し引きゼロで日米金利差に与える影響は限定されることが見通せます。このように考えれば、円のキャリー通貨としての魅力は変わらず、米ドル/円は底堅い推移が続きやすいように考えています。
ただ、25日の植田日銀総裁の講演や、27日公表の12月会合における主な意見には注意が必要と思われます。12月会合後の植田総裁会見ではハト派な部分が目立ったものの、市場へのメッセージが誤って伝わっていたとすれば、市場の受け止め方を修正してくるかもしれません。また、12月に入って5%超も円安が進行しているため、政府の口先介入がどのレベルで強まるかも気にかけたいです。その他、米国時間20日深夜に期限が切れる米国のつなぎ予算を巡る協議の行き詰まりから、早ければ21日から連邦政府の一部が閉鎖される恐れがあるとのことです(執筆時点)。実際にそうなった場合、影響がどこまで及ぶのか判然としませんが、週明けのマーケットがリスク回避の動きとなる可能性もあります。ただ、これらが影響して下げたところは、絶好の押し目買いポイントになるのではないかと、考えています。
153.00円付近が下値目途か(テクニカル分析)
米ドル/円は、一目均衡表での三役好転から158.00円手前まで上昇幅を拡大するなど、底堅い展開が続いています。足許の上昇ペースが速かったこともあり、やや調整の圧力が強まっているように感じます。12月17日安値153.162円からの半値押しレベルとなる155.545円までに調整を留め、再度、上方向を試すかどうかがポイントになりそうです。このレベルでの値固めに失敗すれば、153.00円付近まで調整して、値固めするのではないかと、考えています。焦らず、じっくり押し目買いポイントを摸索したいです。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:154.500-160.500
12/23 週のイベント:
一言コメント
植田総裁の会見内容を踏まえれば、円安進行で、そして政府のけん制発言と一連の流れは容易に想像がつき、実際にそうなっています。自作自演の円安・口先介入のようにも感じられ、こうして招いた円安の付けを支払うのが、市場参加者ってところがどうもすっきりしないです。
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来週の為替予想 米ドル 円
12/9の8円29銭を安値に、南ア最大の貿易相手国中国の積極的財政政策や金融緩和政策の方針が示されたことが好感され8円53銭へ反発。さらに、日銀の追加利上げ観測の後退を背景に円売りが進む中、12/10発表の10月製造業生産や12/11発表の10月小売売上高が市場予想を上回ったことに加え、12/11発表の11月CPIの下振れを受けた南ア中銀の追加利下げ観測を背景に南ア経済の下支えにつながるとの思惑とともに12/12に8円65銭へ上伸。ただ、日足・雲の上限が上値抑制につながったほか、中国の景気対策が具体性に欠け、その効果に懐疑的な見方が広がったことから12/13の上海株が1週間ぶりの安値まで下落したことも嫌気され8円55銭へ反落し8円58銭で取引を終えました。日足・転換線や基準線(8円42銭/8円52銭)を雲の上限(8円66銭)の回復を目指して一段高となるか、基準線/転換線を下抜け、8/9の安値(8円29銭)を目指して反落するか、南アの主要経済指標がない中、日米金融政策会合での決定やパウエル議長/植田総裁の会見内容に対する反応に加え、12/16発表の中国11月鉱工業生産や小売売上高などの指標が中国経済の先行き不透明感を示唆する結果となるか、上海株の反応とともにその結果と反応が注目されます。
来週は以下のようなイベントが予定されています。
細かく見ていくと、まず12月16日の米国市場ではハイテク株への物色が強まり、ナスダック総合指数は史上最高値を更新。これを受けた17日の日経平均株価でもハイテク株の一角が買われて一時3万9796.22円まで上昇する場面も見られましたが、FOMCを控えた様子見ムードから結局は下落に転じました。
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A.日本政府・日銀がドル売り円買いの市場介入に踏み切るかどうかです。ここニューヨークではいまの円安の水準は投機筋などが円売りをしかけていると見られていて、日銀の会合の結果が発表される前は1ドル=155円台半ば程度だった円相場は3円近くも値下がりしました。市場介入への警戒感はこれまでになく高まっていますが、介入を行って一時的に円高に振れても、日米の金利差が根本的な要因となっている以上、円安の流れを変えられるかは不透明です。また、来週にはFRBのパウエル議長が金融政策を決める会合のあと、記者会見を開きます。パウエル議長が利下げの時期が遅れることを示唆する発言をすれば、円安がさらに進む可能性もあります。日本政府と日銀の動向を含め、市場は緊張した状態が続きそうです。
A.最大の要因は、日銀がただちに円安に歯止めをかけるつもりが無さそう、と市場が受け止めたことです。会合の前は日銀が円安への対策を示すのではないかという見方が市場にはありました。それだけに、植田総裁の会合の後の発言は為替の動きを、今は“傍観している”とも捉えられ、東京市場に続きニューヨーク市場でも円売りがさらに加速した形です。さらに、アメリカのインフレのしつこさを示す指標の発表もあり円安に拍車がかかりました。
今週(12月16〜20日)の日経平均株価は下落し、最終的に先週末と比べて768.54円(1.95%)安い3万8701.90円で終えました。
【記者解説】円安さらに加速の要因は?
値上がり率2位は大阪油化工業(4124)。ダイセキ(9793)が12月13日、大阪油化工業に対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社化を目指すと発表しました。TOB価格は1株3201円で、これにサヤ寄せする値動きとなりました。
12月18日の米国市場の影響を受けた翌19日の日経平均株価は、一時3万8355.52円まで急落。ただし、日銀の金融政策決定会合で予想通り利上げが見送られたことで、結果判明後は下げ幅を縮めました。
12月19日の夜にはNYダウが11営業日ぶりに反発したことで、翌20日の日経平均株価も節目の3万9000円を回復する場面も見られましたが、積極的にリバウンドを狙った買いは限られ、結局は6営業日続落となりました。
26日のニューヨーク外国為替市場では日銀の金融政策決定会合の結果などを受けて円安が一段と加速し、円相場は1ドル=158円台まで値下がりしました。1990年5月以来、およそ34年ぶりの円安ドル高水準となりました。
ドル・円は、フシ目の160円が上値メド。下値メドは25日移動平均線が控える152円75銭。
来週(12月23〜27日)の日経平均株価は、個人投資家が売買の中心になりそうです。
来週のドル・円は160円に向けて上昇し、約34年ぶりの高値に迫ると予想されている。米国で弱い経済指標が続く中でも連邦準備制度理事会(FRB)は早期利下げに慎重で、低金利の円を売って高金利のドルを買うキャリー取引の需要が根強い。日本の通貨当局による円買い介入のタイミングが焦点で、介入を警戒しつつも緩やかにドル高・円安が進むとの見方が出ている。
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