それでもなお日産株が信託されただけで 本当の意味での独立ではない
日産は7日に発表した第2四半期決算で、主力の米国や中国の販売不振を理由に今期の利益計画を引き下げ、大規模なリストラ策も公表。
BIの吉田氏は、日産が示す計画を自身は「ちょっとどころかいつも信じていない」と語った上で、同社の部品サプライヤーも同様だと指摘。日産の示す台数を信じれば損をする可能性があるため「サプライヤーはみんな日産からくる内示台数を割り引いて」実際の対応をしている、と吉田氏は述べた。
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SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは、日産の販売計画の精度が近年「異様に低い」と断じる。計画が未達でリストラなどの対策を「泥縄式」に講じるのが「ずっと続いている感じがする」という。
日産自動車が今期(2025年3月期)業績見通しを大幅に引き下げたことを受け、当初計画の甘さに改めて厳しい視線が注がれている。年間の販売台数計画と実績がずれることは常態化しており、市場や部品サプライヤーとの信頼関係にも影を落としている。
背伸びした計画を立てるのはカルロス・ゴーン元会長の時代からの「日産の体質」だと、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の吉田達生シニアアナリストは指摘する。ゴーン氏が社長を退任してから約7年半が経つが、現経営陣はいまもなおゴーン式経営から脱却できていない。
各国の規制当局の承認を必要とするため、資本関係の見直しの完了は2024年3月末を予定する。それでもなお日産株が信託されただけで、本当の意味での独立ではない。日産は信託された株を買い戻す選択肢を持つが、EVシフトに巨額資金を要する状況でそこに資金を投じるべきか判断は難しい。
週刊ダイヤモンドによると、7月24日から9月17日に自動車メーカーの取引先企業に行ったアンケートで、大手自動車メーカーの「生産計画(内示)の具体性、確からしさ」を5段階評価してもらったところ、日産の得点はトヨタやホンダを下回った。
有言不実行の日産を、市場もサプライヤーも冷めた目で見ており、今後もこうした状況が続けば信頼関係にさらにひびが入る可能性もある。
両社の資本関係の始まりは、日産が2兆円超の有利子負債を抱え、経営危機に陥っていた1999年にさかのぼる。ルノーは当初、会社を危機から救ってくれた恩人だった。ただ、近年は水面下で、経営統合を迫ってくるなど「のどに刺さった骨」(幹部)でもあった。関係の見直しは経営の重要課題だった。
1999年に経営危機に陥った日産に出資した仏ルノーから最高執行責任者(COO)として送り込まれたゴーン氏は黒字回復など野心的な数値目標を「コミットメント(必達目標)」に掲げ、いずれかでも達成できなければ経営陣全員が辞任すると公約した。全てのコミットメントは前倒しで達成され、業績はV字回復した。
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