USスチール買収バイデン氏判断へ
それにもかかわらず、バイデン大統領が今回、買収に反対の姿勢を表明した背景には、CFIUSによる買収の是非の判断を、大統領選挙後まで先送りさせる、時間稼ぎの狙いがあるのではないか。
一方日本製鉄は、老朽化が進むUSスチールの製鉄所に14億ドルを投資し、2026年末までは時間給労働者を解雇しない方針を表明している。
全米鉄鋼労組(USW)は、クリーブランド・クリフスによるUSスチール買収案を支持していた。そして、USWは日本製鉄に買収されることに反対している。
CFIUSによる審査は、国家安全保障の観点から行われるものだ。USスチールは、米軍に製品を供給しておらず、日本は米国と緊密な関係にある同盟国であることから、日本製鉄によるUSスチールの買収は、米国の安全保障に問題を生じさせる訳ではない。この点から、CFIUSが最終的に買収を阻止する決定をする可能性は低いとの見方が多くなされている。
米国内で日本製鉄によるUSスチール買収に否定的な意見があることは、1980年代に三菱地所がロックフェラーセンタービルを買収した際に生じたことと共通しているようにも見える。しかし現在では、日本は米国経済を脅かす存在ではなく、協力して中国に対抗することを目指す構図である。
日本製鉄によるアメリカの大手鉄鋼メーカー、USスチールの買収計画について安全保障上の観点から審査を続けてきたアメリカ政府の委員会が買収を認めるかどうかの判断を示さず、大統領に判断を委ねることを決めたとアメリカの複数のメディアが報じました。バイデン大統領はこれまでに繰り返し買収計画に否定的な考えを示していて、判断の行方が注目されます。
他方、CFIUSによる審査が行われる委員会は、財務省が主導するものだ。ホワイトハウス当局者は同委員会のオブザーバーにとどまっており、政治がその決定に直接影響を与えることはできない。
つい数日前、トランプ氏はこうした買収を禁止すると繰り返し語り、財政的にも技術的にも苦境に立たされているUSスチールを 「再び強くする」ために関税と税制優遇措置に頼るとしている。ブルームバーグの報道が正しい場合、買収が成功する道筋は見えにくい。
以前、輸出攻勢で米国の鉄鋼産業を苦しめた日本の大手企業が米国内で鉄鋼を製造すること、米鉄鋼産業の象徴から既に色あせた存在になったUSスチールに資本と技術を供給して、日米が世界の鉄鋼市場で優位を誇る中国に共同で対抗することは、バイデン政権にとっても好ましいことのはずだ。
クリーブランド・クリフスは共和党と民主党の議員との会合で、USスチールがペンシルベニア州やインディアナ州などに持つ工場の労働者を日本製鉄が解雇する可能性について、労働組合が懸念していることを強調している。日本製鉄によるUSスチール買収を阻止するため、ゲリラ的なロビー活動を展開しているようだ。
買収計画を巡っては、米政府の省庁横断組織「対米外国投資委員会(CFIUS)」が買収に安全保障上の懸念があるかについて審査していた。23...
買収阻止に向けたロビー活動を積極的に行っているのが、米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスとされる。同社は2020年に鉄鋼大手アルセロール・ミタルの米国事業買収などによって、米国第2位の鉄鋼会社に浮上した。同社は昨年、USスチール買収で日本製鉄が提示した買収額に競り負けた。そもそも、米国の大手鉄鋼企業によるUSスチール買収は、反トラスト法(独占禁止法)に照らして当局がその計画を阻止する可能性が高かったのである。
日本製鉄によるUSスチールの買収は、大統領選挙という政治イベントにすっかり巻き込まれてしまった。また、このテーマは、4月の岸田首相の米国訪問を前に、日米政府の関係を悪化させかねない火種ともなってきた。
【ワシントン=八十島綾平】日本製鉄によるUSスチールの買収計画を審査していた米政府は23日、省庁間での協議がまとまらなかったとバイデン大統領に報告した。米紙ワシントン・ポストが報じた。今後はバイデン氏が買収への中止命令を出すかどうかの最終判断を15日以内に下す。
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