本日から欧州主要国の市場は再オープンする。ただし、重要な経済指標や当局者の講演も予定されておらず、年末を控えている中で欧州通貨の閑散取引は続きそうだ。ただし、対ドルでは月末、つまり年末がスポット応当日ということもあり、末に絡んだフローで右往左往させられる場面があるかもしれない。
材料難のなかで動意に繋がるかもしれないのが、欧州株や債券の動き。休場明けの時間外取引では、主要な欧州株先物指数は高寄り後に上げ幅を縮めている。債券市場も、(クリスマスムードが広がっていた)週初に報じられたラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁のインタビュー記事に対し、反応しきれていない部分があるか。ECB総裁は「インフレ目標達成に近づいているものの、サービス価格が要注意」とし、サービスインフレは3.9%で高止まりしていることを指摘した。
なお、来年最初のECB理事会は1月30日に予定されている。理事会決定に影響を与えるであろう12月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)は1月7日に速報値、同月17日にその改定値が発表予定。また理事会前には日銀会合が23-24日、米連邦公開市場委員会(FOMC)も28-29日に開催される。
ポンドについては、月末・年末に絡んだ対ユーロのフローに注意か。昨日は0.82ポンド後半から0.8320ポンド台までユーロ買いポンド売りが強まった。ニューヨーク勢が中心の時間帯ではあるものの、ロンドン16時(日本時間翌1時)のフィキシングは荒い値動きもあり得そうだ。
想定レンジ上限
・ユーロドル、日足一目均衡表・基準線1.0483ドル
・ユーロポンド、日足一目均衡表・雲の上限0.8362ポンド
想定レンジ下限
・ユーロドル、11月22日安値(年初来安値)1.0335ドル
・ユーロポンド、20日安値0.8271ポンド
(小針)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
ただ 各通貨の値動きの見通しには濃淡も見込まれる
ブルームバーグによると、ユーロ、ポンド、豪ドル、円の4通貨の対ドルレートの9月末から12月25日終値にかけての騰落率は、ユーロドル(EUR/USD)が5.97%のユーロ安、ポンドドル(GBP/USD)が5.46%のポンド安、豪ドルドル(AUD/USD)が9.36%の豪ドル安、円が8.71%の円安となった。このところのFX市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が18日に9月から3回連続の利下げを決めつつ、2025年の利下げ回数を2回に抑えるとの見通しを発表したことが意識されており、今後も主要通貨の中でドルの強さが目立ちそうだ。
こうした中、2025年のドル円相場(USD/JPY)は米国経済の底堅さによる円安圧力と日本政府による為替介入への警戒が拮抗する展開が想定される。ただ、日銀が利上げを見据えている円は、ユーロやポンド、豪ドルと比べて強くなる可能性もありそうだ。日銀の植田和男総裁は19日の金融政策決定会合後の記者会見で利上げ姿勢を後退させつつも、経済や物価が見通しに沿って進展すれば利上げするとの姿勢自体は崩していない。
オーストラリアでは中銀が2月理事会の議事録を公表。今後の段階的な引き締めは当面インフレを抑制するとの見通しを示したが、3―4月ごろに利上げが行われる可能性があるとの市場に見方に「あまり変化はない」(外銀)という。豪ドル/米ドルは発表前の0.89ドルを挟んだ水準で一進一退。ユーロ/豪ドルも1.5290豪ドル付近と、12日につけた10年ぶり安値の1.5263豪ドルから小幅上昇した水準でもみあいとなった。豪ドル/円も80.00円付近で小動き。
2024年のFX市場は秋以降にドルの強さが際立つ展開となった。9月末を基準として考えると、ユーロやポンド、豪ドル、円はいずれもドルに対して5-9%下落。アメリカ経済の底堅さがドル高を引き起こしている。こうした中、2025年の見通しをめぐっては、欧州中央銀行(ECB)の利下げ路線が鮮明になっているユーロの下落がみこまれる一方、イギリスの物価上昇の根強さから、ポンドは底堅さが感じられる可能性がありそうだ。また豪ドルは中国経済の見通し不安が値下がり要因としてくすぶる。こうした中、ドル円相場は日本政府の為替介入への警戒もあって膠着することが考えられるが、日本銀行の利上げが近づけば円高が急進する可能性も拭えない。
ただ、各通貨の値動きの見通しには濃淡も見込まれる。特にECBの利下げ見通しがはっきりしているユーロは、他通貨と比べて安くなりやすい可能性がありそうだ。ECBはFRBに先駆ける形で6月6日に4年9か月ぶりの利下げに踏み切り、その後も3度の利下げを実施。ブルームバーグによると、金融市場ではECBが2025年6月までの4回の理事会すべてで利下げするとみられており、FRBの慎重姿勢とは対照的な動きが見込まれている。ユーロ圏の11月の消費者物価指数(CPI)の伸び率は、総合指数で前年同月比2.2%、食品、エネルギー、酒類、タバコを除いたコア指数で2.7%となっており、ECBは2025年の物価上昇率は2.1%まで鎮静化するとの見通しを示している。
また、利下げに慎重なのは、オーストラリア準備銀行(RBA)も同じだ。RBAは2023年11月8日に政策金利を4.35%まで引き上げてから、9会合連続で金融政策を維持。オーストラリアの2024年10月の物価上昇率は、変動率が大きい品目を除外した刈り込み平均で前年同月比3.5%で、英国同様、物価上昇鎮静化が進んでいるとはいえない。しかしこのところは中国経済の見通しへの不安がオーストラリア経済を弱くする要因として意識されてきた。金融市場ではRBAが2025年2月の理事会で利下げする確率が70%程度あるとみられており、短期的には豪ドル安に動きやすい状況といえそうだ。
コメント