羽田衝突 なぜ最悪の事態免れたか
羽田空港で昨年1月、日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した事故は、旅客機の乗員乗客379人が全員脱出に成功した。運輸安全委員会が昨年末に公表した経過報告は「安全設計の想定を大きく超える」事故だったと分析した。2日で事故発生から1年。なぜ旅客機の乗員乗客は全員脱出できたのか。背景を報告書から読み解く。
羽田空港は1時間当たりの発着回数が最大90回に上り、年末年始の帰省客らの利用で混雑していた。旅客便に加えて海保など他の利用もあり、安全最優先の観点から世界有数とされる過密状態の見直しも課題だろう。
羽田空港は事故を受け4本ある全ての滑走路を一時閉鎖した。国土交通省は復旧を急ぎ、同日午後9時半に事故発生地点以外の3本の滑走路の使用を再開した。
C滑走路は安全確認に時間がかかるため、滑走路の使用再開のめどは立っていない。再開されるまでは羽田空港の発着回数に影響が及ぶとみられる。
羽田空港で2日夕、日本航空機が着陸直後に海上保安庁の航空機と衝突し炎上した。幼児8人を含む乗客367人と乗員12人の計379人は全員機体から脱出し、いずれも命に別条はない。海保機に搭乗していた職員6人のうち機長は脱出して負傷、ほかの5人が死亡した。運輸安全委員会が航空事故として調査を始めた。
事故は2日午後5時50分ごろC滑走路で起きた。札幌(新千歳)発―羽田行きのJAL516便が着陸し滑走路上を減速中、海保の航空機と衝突した。機体はエアバスA350型機で、衝突後に激しく炎上した。乗客乗員は脱出シューターを使い14人が負傷した。
2022年度の乗降客数が約5987万人に上り世界有数の規模を誇る羽田空港で、航空機同士が滑走路上で衝突するという異例の事故が起きた。炎上した日航機の乗客乗員の脱出が遅れれば、人的被害はさらに拡大する恐れがあった。
それから、海保機の機体。これに関しては、管制塔からの指示を正しく復唱していました。ただ、それなのにどうして滑走路に入ったのか。これは今後、ボイスレコーダーが解析されてくれば、内容が徐々に明らかになってくると思います。管制の指示を復唱して、2人の操縦士で相互確認をしたうえで、なおかつ滑走路に入る前に滑走路の状態、それから進入着陸してくる航空機の有無等も確認をしていたはずですので、こういういくつもの、先ほどのチーズの穴をくぐり抜けてしまったのはなぜなのか、というのは大きな疑問として残ります。
今回はなぜこんな現象が発生してしまうのか、どうすれば「大失敗」を回避できるのかについてお話ししたいと思います。
山下哲平 記者(社会部): 担当の管制官は、別の航空機の調整などがあったため、海保機のことを意識していなかったと話しています。システムは正常に作動していたのですが、管制官はこれを見ていなかった可能性というのが指摘されています。国土交通省は、このシステムは補助的なものだとしているのですが、せっかく導入した安全対策というのが生かされていませんでした。 また、関係者に取材をしていますと、羽田の航空機の混雑というのが管制官の余裕をなくしているのではないかという声も多く聞かれました。ピーク時の離着陸は、1分間で1.5回にも上る計算になります。今のままで安全を担保できているのか、いま一度考えるタイミングだと思います。
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