2025年の日銀 追加利上げ焦点に
日本銀行は、当面のところは「金利政策」の正常化に注力し、「バランスシート政策」の本格的な正常化に着手するのは、2025年後半以降になると見ておきたい。
他方で対外公表文では「現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」として、追加の政策金利の引き上げ、急速な政策金利の引き上げを行わない考えを示し、金融市場の安定確保を狙っている。これが新たなフォワードガイダンスである。
関税の引き上げは、多くの消費財を輸入に頼る米国にとって物価押し上げ要因となる。移民対策強化による安価な労働力の減少も同様で、いずれも個人消費にはマイナスだ。インフレが再燃すれば連邦準備制度理事会(FRB)による追加利下げの足取りは鈍り、金利高止まりが景気を抑える事態が想定される。
ただし、政策金利は従来の政策金利(政策金利残高への付利金利)から、2016年にマイナス金利政策が導入する前の無担保コールレート翌日物の誘導目標に戻し、その水準を0~0.1%程度とした。無担保コールレート翌日物の誘導目標で見れば、今回の利上げ幅は0.1%程度とより小幅にとどまる。
日本銀行は、当座預金制度の見直しを行ったうえで、2025年前半に政策金利を0~+0.1%から+0.2%~+0.3%まで引き上げると見ておきたい。
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そのため日本銀行は、バランスシート政策のうち、最初に国債保有残高の削減に着手し、その後に、ETFを外部の受け皿機関に移すなどのオフバランス化に踏み切ると見ておきたい。その時期は2026年と予想する。
1987年に野村総合研究所に入社後、経済研究部・日本経済調査室(東京)に配属され、それ以降、エコノミストとして職歴を重ねた。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年には野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍し、2007年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして、グローバルリサーチ体制下で日本経済予測を担当。2012年に内閣の任命により、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員に就任し、金融政策及びその他の業務を5年間担った。2017年7月より現職。
そこで次の焦点となるのは、日本銀行が政策金利の追加引き上げにいつ踏み切るかであるが、その時期は2025年前半までずれ込むと見ておきたい。2024年後半に見込まれる米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ、インフレ率の低下、内外景気の軟化などが、追加利上げの障害となるだろう。
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