【外為総研 House View】
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
目次
▼ユーロ/円
・ユーロ/円の基調と予想レンジ
・ユーロ/円 12月の推移
・12月の各市場
・12月のユーロ/円ポジション動向
・1月のユーロ圏注目イベント
・ユーロ/円 1月の見通し
ユーロ/円
ユーロ/円の基調と予想レンジ
ユーロ/円 12月の推移
12月のユーロ/円相場は156.170~164.900円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約2.9%上昇した(ユーロ高・円安)。フランスの政局不透明感や韓国の戒厳司令を受けたリスク回避の動きでユーロ売り・円買いが先行したものの、3日の156.71円前後で下げ止まると、その後は一転して上昇。欧州中銀(ECB)の利下げは織り込み済みでユーロの下押し材料にはならなかった。一方、日銀が12月も追加利上げを見送るとの観測報道が相次ぐ中で円売りが優勢となり、実際に日銀が利上げ見送りを決めた19日には、ほぼ1カ月ぶりに163円台後半へ上昇。クリスマス休暇明けの26日には164円台を回復し、30日には11月15日以来の164.90円前後まで上値を伸ばした。ただ、2025年1月に発足する米国のトランプ政権は、ユーロ圏に対し関税を強化するとの懸念が根強く、月末に向けてユーロ売り・ドル買いに傾くと162.85円前後で2024年の取引を終えた。
始値 | 高値 | 安値 | 終値 |
158.193 | 164.900 | 156.170 | 162.849 |
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
2日
フランスのバルニエ首相は25年度予算案の一部を採決なしで国民議会(下院)を通過させる憲法第49条3項の特例条項を発動した。これに対して左派政党が内閣不信任動議を提出すると発表。議会内最大勢力で極右政党の国民連合(RN)を実質的に率いるルペン氏も不信任動議を支持することを表明した。なお、4日には不信任決議が行われ賛成多数で可決。バルニエ内閣はわずか2カ月半で総辞職に追い込まれた。
12日
ECBは大方の予想通りに政策金利である預金ファシリティ金利を3.25%から3.00%に引き下げた。声明では「ECBはデータに依存し、会合ごとに適切な金融政策スタンスを決定するアプローチに従う」「特定の金利経路を事前にコミットしない」と表明した。また、インフレ率が2025年に2.1%、2026年に1.9%、2027年に2.1%になるとの予測を公表。成長率予測については2025年を1.1%、2026年を1.4%、2027年を1.3%とした。ラガルドECB総裁はその後の記者会見で「基調的なインフレ率は2%へ回帰する軌道にある」とした上で、先行きの利下げについては「データ次第」と強調。金融政策は「会合ごとに決定する」方針をあらためて示した。
13日
13日の取引終了後(日本時間14日午前)、大手格付け会社ムーディーズは財政悪化懸念を理由にフランスの格付けを「Aa3」に一段階引き下げた。フランスでは財政赤字削減を巡る対立で政局が混迷。この日は過去1年で4人目の首相にバイル氏が就任した。
16日
独12月購買担当者景気指数(PMI)・速報値は製造業が42.5と市場予想(43.1)を下回った一方、サービス業が51.0と予想(49.3)を上回った。その後に発表されたユーロ圏12月PMI・速報値は製造業45.2、サービス業51.4(予想45.3、49.5)だった。ドイツ連邦議会はショルツ首相に対する信任投票を実施。大方の予想通りに不信任票多数で否決された。今後、首相はシュタインマイヤー大統領に議会解散を要請し、総選挙の日程を正式に決めることになる。
17日
独12月IFO企業景況感指数は84.7と市場予想(85.5)を下回った。一方、独12月ZEW景気期待指数は15.7と市場予想(6.9)に反して11月(7.4)から上昇した。市場関係者よりもドイツ企業のほうが、同国経済の先行きを悲観的に見ていることがわかった。
19日
日銀が政策金利を据え置き、追加利上げに慎重な姿勢を示すと円売りが活発化。植田総裁は会見で、追加利上げのタイミングについて「さまざまなデータや情報を丹念に点検したうえで判断していく必要がある。賃金と物価の好循環の強まりを確認するという視点から今後の賃金動向についてもう少し情報が必要だと考えている」などと発言した。
12月の各市場
12月のユーロ/円ポジション動向
【情報提供:外為どっとコム】
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1月のユーロ圏注目イベント
ユーロ/円 1月の見通し
ユーロは年始2日に売りが強まった。対ドルでは2022年11月以来の安値となる1.0224ドル前後まで下値を切り下げる場面があった。米国で1月に発足するトランプ政権が宣言通りに関税を強化すればユーロ圏の打撃になるとの懸念がくすぶっている。その上に、ドイツやフランスで政治的な不透明感が高まっており、今年2025年は欧州中銀(ECB)が他の中銀よりも積極的に利下げに動くとの思惑も根強い。そうした中での年始からのユーロ売りは、投資家の強い先安観を反映したものと考えられる。1月中にも1ユーロ=1ドルのパリティ(等価)を意識した展開になってもおかしくないだろう。つまり、ドル/円とユーロ/円のレートが同じになる可能性もあるということだ。1月6日時点でドル/円よりも約5円高い水準で推移しているユーロ/円にも下落余地があると考えられる。24日に発表される仏・独・ユーロ圏の1月購買担当者景気指数(PMI)が上昇し、景況感に改善が見られない限りユーロは売られやすい地合いが続きそうだ。
(予想レンジ:156.000~165.000円)
お知らせ:FX初心者向けに12時からライブ解説を配信
外為どっとコム総合研究所の調査部に所属する外国為替市場の研究員が、FX初心者向けに平日毎日12時ごろからライブ配信を行っています。前日の振り返り、今日の相場ポイントなどをわかりやすく解説しています。YouTubeの「外為どっとコム公式FX初心者ch」でご覧いただけます。
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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