ポンド/円・豪ドル/円の1月見通し「円安基調は25年も継続へ」

ポンド/円・豪ドル/円の1月見通し「円安基調は25年も継続へ」

【外為総研 House View】

House View

執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

目次

▼ポンド/円
・ポンド/円の基調と予想レンジ
・ポンド/円 12月の推移
・12月の各市場
・12月のポンド/円ポジション動向
・1月の英国注目イベント
・ポンド/円 1月の見通し

▼豪ドル/円
・豪ドル/円の基調と予想レンジ
・豪ドル/円 12月の推移
・12月の各市場
・12月の豪ドル/円ポジション動向
・1月の豪州・中国注目イベント
・豪ドル/円 1月の見通し

ポンド/円

ポンド/円の基調と予想レンジ

ポンド/円 12月の推移

12月のポンド/円相場は188.087~198.953円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約3.2%上昇(ポンド高・円安)。ポンドは対ドルで約1.7%下落したが、円がそれ以上に対ドルで下落したため、ポンド/円は上昇した。19日には日銀が追加利上げを見送ったことで円売りが強まると199円目前まで上昇したが、英中銀(BOE)の利下げ見送りに反対意見(利下げ支持)が少なくなかったことからポンド売りが入り伸び悩んだ。

その後、年末にかけてもポンド/ドルは上値の重い展開となった一方、ドル/円が強含んだためポンド/円もじり高で推移。30日には19日の高値を僅かに更新して11月7日以来のポンド高・円安水準を付けた。ただ、年末を前にした持ち高調整と見られる動きで196円台にやや水準を下げて2024年の取引を終えた。

始値 高値 安値 終値
190.478 198.953 188.087 196.747

出所:外為どっとコム

13日
英10月国内総生産(GDP)は前月比-0.1%と予想(+0.1%)に反して減少。同鉱工業生産も前月比-0.6%と予想外の落ち込みとなった(予想+0.3%)。同貿易収支は189.69億ポンドの赤字で、赤字額は市場予想(160.00億ポンド)より大きかった。

16日
英12月PMI・速報値は製造業47.3、サービス業51.4(予想48.5、51.0)であった。ドイツやユーロ圏と同様に、製造業が冴えなかった一方、サービス業の景況感は改善した。

17日
英11月失業率は4.6%(前回4.6%)、同失業保険申請件数は0.03万件増(前回1.09万件減)だった。8-10月の国際労働機関(ILO)基準失業率は予想通りの4.3%で7-9月から変わらず。8-10月の週平均賃金(除賞与)は前年比+5.2%と市場予想(+5.0%)を上回り、7-9月(+4.9%)から伸びが加速した。

18日
英11月消費者物価指数(CPI)は市場予想通りに前月比+0.1%、前年比+2.6%となり、前年比では前月(+2.3%)から伸びが加速した。また、エネルギーや食品を除いたコアCPIは前年比+3.5%と予想(+3.6%)を下回ったものの前月(+3.3%)から加速。BOEが注目するサービスCPIは前年比+5.0%と市場予想(+5.1%)に反して前月から横ばいだった。

19日
BOEは予想通りに政策金利を4.75%で据え置いた。据え置きは6対3の賛成多数で決定。ラムスデン副総裁、ディングラMPC委員、テイラーMPC委員の3人が25bp(0.25%ポイント)の利下げを主張した。ベイリー総裁は「今後の利下げについては段階的なアプローチが依然として正しいと考えている」と指摘。経済の不確実性が高まっていることから、いつ、どの程度利下げを行うかを確約することはできないと述べた。

20日
英11月小売売上高は前月比+0.2%と市場予想(+0.5%)を大幅に下回った。自動車燃料を除いた売上高も前月比+0.3%と予想(+0.5%)を下回った。

12月の各市場

12月のポンド/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
  • ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
  • ※ 尚、このポジション比率情報は情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。

 

1月の英国注目イベント

ポンド/円 1月の見通し

 英金利先物が織り込む2025年の英中銀(BOE)の利下げ幅は60bp(0.60%ポイント)程度で、25bp刻みなら2.4回程度にとどまる。これは、米連邦準備制度理事会(FRB)の約40bp(1.6回)ほどではないにせよ、欧州中銀(ECB)の約105bp(4.1回)よりは大幅に少なく、豪中銀(RBA)の約72bp(2.9回)より少ない。相対的に利下げ期待が低いポンドは1月も一定の強さを維持する公算が大きいと見る。

ただし、英7-9月期国内総生産(GDP)が前期比±0.0%にとどまるなど英景気に息切れ感が出ているだけに、1月15日に発表される英12月消費者物価指数(CPI)が予想以上に鈍化するようなら2月利下げの観測が高まることも考えられる。中でも、BOEが重視しており、高止まりが続くサービスCPIに注目だ。同様に、21日に発表される英9-11月週平均賃金にも注目したい。

一方、円については日銀の利上げ観測がくすぶってはいるものの、インフレ率を大幅に下回る水準での小幅な利上げ期待だけに、実質金利がプラス圏で推移する英国のポンドを凌ぐ上昇を示現することは考えにくい。仮に1月24日に日銀が利上げに踏み切ってもポンド/円の下値は限定的だろう。むしろ、利上げした場合は打ち止め感が広がりポンド高・円安に振れてもおかしくないだろう。1月のポンド/円相場は、BOEの利下げ観測が高まらない限り上昇すると考えられる。
(予想レンジ:192.500円~202.500円)

豪ドル/円

豪ドル/円の基調と予想レンジ

豪ドル/円 12月の推移

12月の豪ドル/円相場は95.521~98.737円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.3%下落(豪ドル安・円高)した。豪ドル/米ドルが下落した一方、ドル/円が上昇したため、豪ドル/円は95円台に差し込むと底堅かった半面、98円台では伸び悩んだ。

象徴的だったのは18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と19日の日銀金融政策決定会合に対する動きであった。FOMCが利下げのペースダウンを表明したことで豪ドル安・米ドル高に振れると、豪ドル/円も下落したが、日銀が利上げを見送ったことでドル/円が上伸すると豪ドル/円もつれ高した。その後は、クリスマス休暇と年末年始の休暇に向けて動意が鈍り、月初とほぼ同水準の97円台前半で2024年の取引を終えた。

始値 高値 安値 終値
97.366 98.737 95.521 97.297

出所:外為どっとコム

2日
豪10月小売売上高は前月比+0.6%と市場予想(+0.4%)を上回った。中国11月財新製造業PMIは51.5と市場予想(50.6)を上回り5カ月ぶりの水準に上昇した。

4日
豪7-9月期国内総生産(GDP)は前期比+0.3%と市場予想(+0.5%)を下回った。前年比では+0.8%と、予想(+1.1%)に反して前期(+1.0%)から減速。コロナ禍だった2020年10-12月期以来の低成長となった。

5日
豪10月貿易収支は59.53億豪ドルの黒字となり、黒字額は市場予想(45.00億豪ドル)を大幅に上回った。鉱物性燃料などの輸出が予想以上に伸びた。

9日
中国共産党は中央政治局会議を開催。2025年の金融政策をこれまでの「穏健」から「適度に緩和的」に変更した。また財政政策に関しても、従来の「積極的」から「より積極的」へ変更し財政支出拡大の方針を示した。トランプ次期米大統領との第2次貿易戦争に備える動きとみられる。中国の財政拡大や積極的な利下げにつながるとの見方からリスクオンの動きとなり、豪ドルが買われた。

10日
RBAは予想通りに政策金利を4.35%に据え置いた。声明で「インフレ率が目標に向かって持続的に動いているとの確信を得つつある」と表明。前回までの「インフレ率が目標レンジに向かって持続的に推移していると確信するまで政策は十分に制限的である必要がある」との文言を削除し、タカ派姿勢を後退させた。その後、ブロック総裁は会見で経済指標の軟化を受けて声明文の文言を変更することを意図的に決定したと説明した。来年2月(次回会合)にも利下げに踏み切る可能性について聞かれると「分からない」「私が言えるのは、データを注視しているということだ」と回答した。

12日
豪11月雇用統計は、新規雇用者数が3.56万人増と市場予想(2.50万人増)を上回った上に、失業率が3.9%と予想外に改善(予想4.2%、前回4.1%)した。RBAが10日にタカ派スタンスを修正したことから浮上していた早期利下げ観測がやや後退した。

24日
RBAは12月理事会の議事要旨を公表。インフレ上昇リスクは減少した一方で、経済下振れリスクは高まったと表明。インフレについては目標に向かっていると「ある程度確信している」としたものの、「インフレが目標に向かって持続的に進んでいると確信が持てるまで、金融政策は十分に引き締め的である必要がある」と指摘した。

12月の各市場

12月の豪ドル/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
  • ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
  • ※ 尚、このポジション比率情報は情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。

 

1月の豪州・中国注目イベント

豪ドル/円 1月の見通し

豪中銀(RBA)は長らく、利下げに転じるのはかなり先になるとのメッセージを発し続けていたが、昨年12月の理事会でこれを改めたと見られている。RBAのスタンスの変化を感じ取った市場は、早ければ2月にも利下げが行われるとの見方に傾きつつある。1月7日時点で豪金利先物が織り込む2月利下げの確率は68%程度へと上昇。もっとも、ブロックRBA総裁は2月利下げの可能性について「わからない」「データを注視する」と述べている。

そうした中で1月の豪ドル相場は、RBAの利下げの確度が焦点となりそうだ。2月利下げを巡っては、8日に発表される豪11月消費者物価指数(CPI)、16日の豪12月雇用統計、そして29日の豪10-12月期CPIなどがカギとなる。コアCPIにあたるCPIトリム平均値(前年比)がRBAのインフレ目標レンジである2-3%にどこまで接近するか注目したい(10月CPIトリム平均値+3.5%、7-9月CPIトリム平均値+3.5%)。雇用統計については、前回11月に3.9%と予想外に反して8カ月ぶりの水準に改善した失業率が注目される。インフレ鈍化と失業率の上昇が揃って確認できない限り、RBAは利下げに動きにくいと考えられる。

一方、円については日銀の利上げ観測がくすぶってはいるものの、インフレ率を大幅に下回る水準での小幅な利上げ期待だけに、仮に利上げしても大幅な円高が進むことは考えにくい。RBAの2月利下げ観測が後退すれば、1月は豪ドル高・円安が進む公算が大きいだろう。
(予想レンジ:95.500円-102.500円)

 
kanda.jpg

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。

●免責事項
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。
[紹介元] 外為どっとコム マネ育チャンネル ポンド/円・豪ドル/円の1月見通し「円安基調は25年も継続へ」

ドルやポンド ユーロと比べると 豪ドルの底堅さが目立つ

四大通貨の一つで、世界全体の外国為替市場でドル、ユーロ、日本円に次ぐ取引量を誇っている。1992年のポンド危機でユーロの準備段階から離脱したこともあり、EU加盟国でありながら、ユーロに未参加となったが、経済的な結びつきは深い。 そのため、ユーロと同調して動くケースが多い。 もっとも、2016年6月の国民投票でEUからの離脱(ブレグジット)が決まった際には、ポンド単独で大きく売りが出るなど、英国独自の材料で動くケースも多い。特にブレグジットがらみの材料でポンド単体の動きになるケースがよく見られる。 金融政策が比較的柔軟なことでも知られている。米FRB、日銀、ECBなどは、名目上は多数決で金融政策を決定するが、実際には議長や総裁などトップの決定が否決されるケースはない。しかし、英中銀では議長提案が否決されるケースが過去何度も生じている。

ただし豪ドルが売られる度合いは、ドルやユーロ、ポンドに比べると小さい。25日のドル円相場(USD/JPY)は1ドル=142円台前半で推移し、11月末比で3.9%安の水準。また、ポンド円相場(GBP/JPY)は11月末比3.4%程度のポンド安、ユーロ円相場(EUR/JPY)は2.8%程度のユーロ安だ。ドルやポンド、ユーロと比べると、豪ドルの底堅さが目立つ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました