8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが一時4.7280%まで上昇したことで158.55円まで上昇した。ユーロドルは米長期金利の上昇を受けて1.0273ドルまで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、米長期債利回りの上昇を背景に堅調推移が予想される中、11月の実質賃金や日銀支店長会議での賃上げ動向などを見極めて行く展開が予想される。
昨日は、トランプ次期米大統領が導入を目指す関税に法的根拠を与えるため、国家経済緊急事態の宣言を検討しているという報道を受けて、米長期債利回りが上昇したことで、ドルは全面高の展開となっている。
12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、トランプ次期政権下で政策が変わる可能性を考慮して、仮定としての予測が盛り込まれたことが明らかになり、ドット・プロット(金利予測分布図)での今年の利下げ見通しが2回に減った背景が説明されている。
植田日銀総裁は、12月の日銀金融政策決定会合の後の会見で、第2次トランプ米政権の関税政策や春闘での賃上げのモメンタムという「ワンノッチの情報」を見極めるスタンスを示していた。
今年の日米金融政策は、第2次トランプ米政権での経済政策を見極めるスタンスとなっており、現状のドル高トレンドが続く公算が高いことになる。
ドル高に歯止めをかける要因として、トランプ次期米大統領のドル高牽制発言や本邦通貨当局による円買い介入の可能性には引き続き警戒しておきたい。
本日は、8時30分の11月毎月勤労統計で実質賃金を確認し、日銀支店長会議で賃上げの動向を見極めることになる。10月の実質賃金は前年比-0.4%、9月は同比-0.4%、8月は同比-0.8%だった。
9時30分に発表される11月豪小売売上高は前月比+1.0%と予想されており、10月の同比+0.6%に続き、4カ月連続の増加が見込まれている。昨日発表された豪11月消費者物価指数(CPI)は前年比+2.3%と予想の+2.2%を上回ったものの、豪準備銀行(RBA)が注視しているコアインフレ率(トリム平均値)は同比+3.2%となり、10月の+3.5%から低下していた。しかし、今年5月に豪連邦議会選挙が予定されており、それまではRBAは利下げに踏み切らないとの見方があり、堅調な小売売上高が利下げ時期の先送り要因となるのかもしれない。
10時30分に発表される12月中国CPIは前年比+0.1%と予想されており、11月の同比+0.2%から鈍化が見込まれ、12月中国生産者物価指数(PPI)は同比-2.4%と予想されており、11月の同比-2.5%からの上昇が見込まれている。第2次トランプ米政権による対中関税引き上げが見込まれる中、中国経済のディスインフレ化が強まる可能性に警戒しておきたい。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通しドル円 11月実質賃金と日銀支店長会議での賃上げ動向に要注目か
1974年日本銀行に入行後、秘書室兼政策委員会調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長・同参事などを歴任。日本経済研究センター主任研究員を経て、1999年JPモルガン証券入社(チーフエコノミスト・経済調査部長・マネジングディレクター)。2017年4月より現職。総務省「統計審議会」委員ほか財務省・内閣府・厚生労働省などで専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「経済教室」など執筆多数。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBC「昼エクスプレス」コメンテーター。1974年東京大学経済学部卒、1979年シカゴ大学大学院経済学修士号取得。
2009年にみずほ総合研究所に入社。エコノミストとしてアジア・日本経済、不動産・五輪・観光等を担当。2011年~2013年は内閣府(経済財政分析担当)へ出向。官庁エコノミストとして『経済財政白書』、『月例経済報告』等を担当。2021年4月より現職。主な著書(全て共著)は『TPP-日台加盟の影響と展望』(国立台湾大学出版中心)、『キーワードで読み解く地方創生』(岩波書店)、『図解ASEANを読み解く』(東洋経済新報社)、『激震 原油安経済』(日経BP)。
1999年に大和総研に入社し、経済調査部にてエコノミストとしてのキャリアをスタート。2006年~2008年は内閣府政策統括官室(経済財政分析・総括担当)へ出向し、『経済財政白書』等の執筆を行う。2011年からはSMBC日興証券金融経済調査部および株式調査部にて機関投資家向けの経済分析・情報発信に従事。2017年1月より現職。内外のマクロ経済についての調査・分析業務を担当。ロジカルかつデータの裏付けを重視した分析を行っている。
みずほフィナンシャルグループにて企画業務、法人営業などを経験した後、2019年8月より現職。外国為替市場の調査・分析業務、中でも主にユーロなどの欧州通貨に関するレポートを担当している。また、新型コロナウイルスの感染状況と金融市場の関連に特化したレポートを執筆するなど、幅広い観点から金融市場の分析を行っている。
ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン・チェース銀行などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析を担当。2016年8月より現職。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、日経CNBCなどにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。主な著書に『〈最新版〉本当にわかる為替相場(2023年日本実業出版社)』、『ビジネスパーソンなら知っておきたい仮想通貨の本当のところ(2018年朝日新聞出版社』などがある。ソニー・ライフケア取締役、ウェルスナビ株式会社取締役。
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