執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年1月10日 14時00分
モメンタムはドル高だが、市場心理は下値警戒
米ドル/円、直近高値更新も
米ドル/円は高値圏で振幅。ワシントン・ポスト紙が、トランプ氏の関税策を巡り「すべての国に課すものの対象は重要品に絞る計画」と報じると、インフレ圧力が限定されるとの見方から、米ドル/円は156.236円まで急落しました。ただ、別のメディアが広範な関税導入のため、トランプ氏が経済緊急事態を宣言する可能性と報じたほか、米経済指標が概ね好調だったこともあり米ドル/円は昨年7月以来となる158.552円までレンジ上限を広げました。もっとも、本邦の円買い介入への警戒心もあり、その後は頭打ちとなりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
トランプ氏の言動に注意
来週は日本で氷見野日銀副総裁の発言や、米国で消費者物価指数や小売売上高など注目されるイベントが並んでいます。1月23日・24日の日銀会合を前に横浜市で行われる金融経済懇談会に出席する、氷見野日銀副総裁の発言については、25年度の春闘に向け多くの組合が強気な賃上げ要求方針を示す中で、1月利上げ実施に向け地ならしするのか注目されます。ただ、個人的には企業側の回答がほとんど出ていない段階での日銀の追加利上げは、いささか勇み足と感じます。そのため、1月追加利上げへの示唆は低いのではないでしょうか。また、米物価を巡っては、川上側となる卸売物価指数の上昇や、ISM(全米供給管理協会)調査による企業の仕入れ価格指数上昇などを踏まえると、川下側の消費者物価指数も上向き圧力が広がっていると見られ、米国のインフレ低下は足踏み状態になっているように考えます。これらの点を踏まえると、米ドル/円のメインシナリオは底堅い展開と見ています。
もっとも、足許の米ファンダメンタルズだけを単純に考えるなら、米長期金利が昨年来の高値4.703%を抜けてこのまま5.0%回復へ向かう自信が持てないほか、20日の米大統領就任に向け発信されるトランプ次期大統領の不規則発言など、不透明要因が多いことから積極的に上値を買い上げるのも勇気が必要と思いますので、慎重に押し目を拾う感じでしょうか。
引き続き160円到達を期待(テクニカル分析)
米ドル/円は、高値圏でもたついている感じから下方向への動きは警戒されますが、日足一目転換線の上側での推移が続き、底堅さは失っていません。少なくとも、156.65円(執筆時点)付近の21日移動平均線を下回るまでは、上目線を維持したいと考えています。心理的節目の160.00円トライを期待したいです。ただ、21日線を下回ってきた場合は、155.00円付近までの調整はあり得そうです。
【米ドル/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
予想レンジ:USD/JPY:155.000-161.000
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一言コメント
カレーライス1食当たりのトータルコストを示すカレーライス物価指数は、2024年11月時点で377円と1年前から61円増加で、物価高の流れは沈静化しづらいようです。単純な比較はできませんが、この値段より安く販売されているコンビニエンスストア○○のカレーライスは貴重な存在ですね。
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年末年始の為替予想 米ドル 円
また、海外投資家の日本株買いに伴う円売りポジションも考えられます。海外投資家が日本株に投資する際には、為替市場で円を買いその資金で日本株を買うことになりますが、そのままでは円の為替リスクを負うことになります。したがって円安が進展するなかでは、為替リスクを回避するための手段として、日本株を買い入れる際に為替市場で円売りの為替予約を行うことが考えられます。日銀の金融政策の緩やかな正常化を想定して、こうしたポジションを構築していた海外投資家にとって、今般の日銀のタカ派的な情報発信は想定外だったとみられ、円売りポジションの解消につながったと考えられます。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストも、目先はドル高進行のリスクがあっても、25年は円高になると予想する1人だ。トランプ政権下でもFRBや他の主要中央銀行は金融緩和を進めるとし、中国を主なターゲットとするトランプ氏の関税政策も他の通貨と比較した円相場の下支え要因になると読む。
2024年中に日銀が利上げに踏み切れば、ドル円は年末120円台も見込まれますが、日銀の利上げは弊社のメインシナリオではありません。なお、ドル円の年間の値幅に目を向けると、米利上げ開始の2022年以降、顕著に拡大していますが(図表2)、2024年は利下げに転じることで縮小に向かう動きが見込まれます。ただ、2024年10-12月期は、米大統領選挙が波乱要因となり得るため、ボラティリティ(変動率)の急上昇には注意が必要です。
このように、米国の長期金利が緩やかに低下する一方、日本の長期金利は一進一退が続くとの見通しのもとでは、日米の長期金利差はそれほど大きく縮小しない公算が大きいということになります(図表1)。この点を勘案すると、2024年のドル円は、緩やかなペースでのドル安・円高の進行が予想され、弊社は3月末の着地を141円、6月末は140円、9月末は139円、12月末は138円を予想しています(図表1)。
米労働省が13日に発表した10月の米消費者物価指数(CPI)は、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIが3カ月連続で同じ伸び率となった。過度の物価上昇が一服する中、オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場ではFRBが来年1月までに追加利下げを行う可能性を8割以上織り込んでおり、今後の円の支援材料になるかもしれない。
みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストと三原正義マーケットアナリストはリポートで、米国では25年末にかけてドットチャート通りの利下げが続くと見込まれる半面、日銀は半年に1回程度の利上げを続け、日米金利差は縮小に向かうと予想した。トランプ次期米大統領の政策全てがドル高につながるわけはないと言う。
午後5時時点の円相場は、年末の12月30日と比べて22銭円高ドル安の1ドル=157円66~68銭でした。一方、ユーロに対しては、1円78銭円高ユーロ安の1ユーロ=162円82~86銭でした。ユーロはドルに対しては1ユーロ=1.0327~28ドルでした。市場関係者は「年末年始の円相場は、アメリカで発表された経済指標が市場予想を下回ったことをきっかけに円を買う動きが出たあと、いくぶん円安に戻った。一方、きょうの東京市場は取り引きの材料に乏しく、値動きは限定的だった」と話しています。
野村証の後藤氏は、日本の通貨当局による円安けん制発言や円買い介入のリスクも今後ドルの上値を抑える可能性があると指摘する。三村淳財務官はトランプ氏が勝った米大統領選後の円安進行を受け、行き過ぎた動きに適切な対応を取ると語った。
シンガポールに拠点を置くRBCキャピタル・マーケッツのアジアFX戦略責任者、アルビン・タン氏は「米金利が徐々に低下するにつれ、円は反発するというのが基本シナリオ」だが、トランプ氏の米大統領選勝利が大きな不確定要素で、円が140円を抜けて上昇するのは難しいとみている。
「まだ先週の日米金融政策に関するビッグイベントを消化している段階だ」(ステート・ストリート銀行東京支店の貝田和重・金融市場部長)。米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀の金融政策決定会合を経て、24日の東京外国為替市場で円相場は一...
日銀がタカ派に転じたとの受け止めから、為替市場ではこれまで積み上がっていた海外投資家の円売りポジションの急激な解消(円の買戻し)が起こり、ドル円相場で大幅な円安修正が起きました。円売りポジションの背景として、円キャリー取引が指摘されています。 円キャリー取引とは、低金利の円建てで資金を借り入れ、その資金を外貨に転換し、米国のような高金利国の金融資産で運用し、その運用益に加えて金利差による収益も狙う取引です。こうした円キャリー取引の資金は、米国株の上昇をけん引してきたAI(人工知能)関連などハイテク銘柄にも向かっていたとみられます。
また、経済成長率の低い日本から、高い米国などへ資本が流出し続けている構造的な問題も円高が進みにくい要因と一部の市場関係者は受け止めている。7-9月の直接投資と証券投資の流出額は、同四半期に過去最高の8兆9700億円となった経常黒字額を上回った。
対ドルの円相場の先行きに不透明感が強まり、乱高下する展開が続きそうだ。年末予想は139円から155円まで見方が分かれる。日米の金融政策に加え、政治動向も見通しにくい。
2024年に入り為替相場は不安定な状況が続いています。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを開始した2022年初めは110円台だったドル円相場は大きく円安となり、この円安水準がいつまで続くのか見通し難いと感じている投資家の方も多いのではないでしょうか。 そこで、本記事では2024年から足元までのドル円相場を整理し、相場への影響が大きいと考える短期要因と長期要因を洗い出しながら、今後の動向を見通したいと思います。
2023年末に1ドル141円程度にあったドル円相場は、2024年に入り円安基調が続いていました。背景には、FRBが利下げに慎重姿勢をみせるなか、日銀の金融政策の正常化は緩やかに進むとの思惑から日米金利差は当面開いたままとの見方が強まったことが挙げられます。7月上旬に1ドル161円台と歴史的な円安水準にありました。しかしその後、米国の6月のCPI(消費者物価指数)下振れや、日本の金融当局による円買い為替介入、日銀の追加利上げ観測の高まりなどからドル安・円高方向の動きとなりました。 こうしたなか、日銀は7月末の金融政策決定会合で追加利上げを決めました。利上げは事前報道通りでしたが、植田総裁は会見で経済・物価見通しが想定通りに推移すれば、さらなる利上げを講じる姿勢を示しました。
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