午前の為替予想は… 日銀追加利上げへ、円は出尽くし売りを警戒
作成日時 :2025年1月24日8時00分
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也
ドル円予想レンジ
155.200-157.500円
前日の振り返りとドル円予想
昨日のドル/円は終値ベースで約0.3%下落した。日本株の上昇などを背景に円売り主導で156.76円前後まで強含んだが、海外市場ではドル売りに傾き1円近く反落。米新規失業保険申請件数が予想以上に増加したほか、トランプ米大統領が連邦準備制度理事会(FRB)に即時の利下げを要求する考えを示したことで155.74円前後まで下落した。トランプ大統領の利下げ要求に関しては、FRBの独立性を考慮すれば非現実的な内容であろう。実際に、米金利先物が利下げ加速を織り込む動きは全く見られない。為替市場への影響も一時的かつ限定的と見てよいだろう。
本日は日銀が政策金利を0.25%から0.50%に引き上げる公算で、市場の関心は今後の利上げの道筋に向かっている。7月に参院選が予定されていることから、現時点で次の利上げは9月以降になるとの見方が有力だ。今回の利上げは「織り込み済み」なだけに、植田総裁の会見などで利上げ前倒し観測が高まらない限り円が大幅に上昇することはないだろう。むしろ、利上げ後に「ひとまず材料出尽くし」として円が売られるリスクの方が大きいと見ている。
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株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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ドル円午前の為替予想 日銀追加利上げへ 円は出尽くし売りを警戒
主要通貨ペア(ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円)について前営業日の値動きをわかりやすく解説し、今後の見通しをお届けします。
日銀の植田総裁は、利上げの理由について「経済・物価がオントラック(見通しに沿っている)」であることを挙げ、「円安は必ずしも今回の利上げの最大の要因ではない」とした。ただ、「円安による想定以上の物価押し上げは、重要なリスクと認識している」と述べた。また、今後の追加利上げについて「経済・物価見通しに沿って動けば、引き続き金利上げていく」とした上で「0.5%という政策金利水準(を壁として)、特に意識しているわけではない」と述べた。総裁会見が追加利上げに前向きなタカ派的な内容だったとの見方が強まり円買いが優勢となった。
株式市場の値動きが荒くなっています。10/13(木)の米国株式市場では、この日発表された米消費者物価指数(9月)が強い数字だったことを受け、NYダウが一時前日比549ドル安水準まで下落しました。しかし、売り一巡後は上昇に転じ、この日のNYダウ高値は957ドル高と、高低差1,507ドルの動きとなりました。
一方、ドル円相場の動向に影響を及ぼす日米の長期金利(10年物国債利回り)の差はこのところ拡大傾向にある。ブルームバーグによると、日米金利差は6日には3.103%ポイントだったが、1週間後の13日には3.364%ポイントまで上昇した。米国で6日に発表された11月雇用統計が堅調な内容と受け止められるなど、経済の底堅さが意識されてきたためだ。米国金利の上昇はドル円相場の円安見通しを強める材料となる。
日銀は、前回の会合で予告していた国債買い入れの減額を決定。「原則として毎四半期4000億円程度ずつ減額し、2026年1-3月に3兆円とする」と、概ね市場の想定に沿った計画を発表した。さらに、政策金利を従来の「0~0.1%程度」から「0.25%程度」へと引き上げた。その上で、今後の金融政策運営については「現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、今回の「展望レポート」で示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」と表明。9名の委員のうち2名が利上げに反対したことも明らかになった。日銀の利上げを受けて初動は円買いに傾いたが、前日に3社の国内メディアが報じていた観測報道通りの決定だったことから、材料出尽くしとして円売りに反転するなど乱高下した。
為替に関しては、ドル高・円安の進行は現時点で止まる兆しがありません。ドル円相場は約32年ぶりの円安水準となり、1ドル149円台に突入しています。日銀の黒田総裁は、訪米中の現地時間10/12(水)に金融緩和継続の意向を改めて示しており、市場では次の節目は1ドル150円と言われています。決算発表シーズンの本格化で一定数以上の東証上場企業は、円安による恩恵が期待できそうです。ただ、過度な円安によるコスト増が企業業績にとって悪材料となり得ます。これから始まる決算発表で、見定めてゆく必要がありそうです。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はFOMC後の記者会見で「労働市場が冷え込むにつれてインフレが予想外に加速するリスクは低下した」としつつ「労働市場の下振れリスクは、今や現実のものとなっている」と述べた。金融政策に関しては「今後の会合について何も決めていない」としながらも「9月に利下げが検討される可能性がある」との認識を示した。また、「金利引き下げの段階に近づいている」「広い意味では近づいているが、まだその段階には達していない」とした。FOMCの政策金利発表後に151円台を回復していたドル/円は、パウエル議長の会見を受けて3月19日以来の安値となる149.61円前後まで下落した。
豪4-6月期消費者物価指数(CPI)は前年比+3.8%と、市場予想通りに1-3月期の+3.6%から伸びが加速した。一方で、コアCPIにあたるCPIトリム平均値は+3.9%と、1-3月期の+4.0%から横ばい予想に反して伸びが鈍化。同時に発表された豪6月小売売上高は前月比+0.5%と市場予想を上回ったが、コアインフレの鈍化を受けて僅かに残っていた豪中銀(RBA)による8月利上げの期待が消滅したため豪ドルは下落した。
昨日のドル/円は前日比-1.7%の大幅続落となった。日銀が政策金利を0.25%に引き上げた直後には材料出尽くしで153.88円前後まで上昇したが、植田日銀総裁が会見で追加利上げに前向きな見方を示すと急落。NY市場序盤には米7月ADP全国雇用者数の下振れを受けて150円台を割り込んだ。その後、米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利の据え置きを発表すると151円台に値を戻す場面もあったが、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が9月利下げを示唆したことで約4カ月半ぶりの安値となる149.61円前後まで下落した。151.60円台を通る200日移動平均線や心理的節目の150.00円を下抜けたことで一段安のリスクを意識せざるを得ないだろう。日銀が追加利上げへ向かい、FRBが利下げ開始に向かうとの見方が広がる中で、ドル買い・円売りポジションがさらに巻き戻される可能性がある。なお、FRBは昨日のFOMCで従来のインフレ上振れ警戒姿勢を弱め、雇用下振れを警戒する姿勢を示した。市場の関心は明日2日に発表される米7月雇用統計に向かうことになるだろう。
また、日銀の金融政策の方向性をめぐってはこのところ、日銀が2025年1月まで利上げを待つとの報道が相次ぎ、ドル円相場では16日までの6営業日連続での円安で、1ドル=150円程度から154円台まで円安が進んできた。ブルームバーグによると、投資家の動向から算出される利上げ確率は、日本時間18日午前11時45分段階で15%程度にとどまっている。こうした中で日銀が実際に利上げを見送り、金融政策の変更が1月まで行われないことが確実になれば、改めて円安が急進する可能性もありそうだ。
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