「失敗の本質」の本質を深く認識することで修正可能だと考えます
武田 私は『失敗の本質』を読んで以来、野中先生にお会いしたいとずっと思っていたので、今日はとても緊張しています。あの本は、1996年に手さぐりで学生ベンチャーを立ち上げた私にとって、市場の荒波の中で生き残るためのバイブルのようなものだったんです。
このような日本社会の問題点は、ただただ「合理的判断を行え」と主張するだけでは解消しないと思います。「失敗の本質」の本質を深く認識することで修正可能だと考えます。是非、このような「不確実性と多様性の下で合理的判断を行う技術」を今後、教育の中心に置いてほしいものです。しかし、「直感と情緒」で判断する戦略が実は閉鎖的な日本社会では有利である事も認識すべきです。私は、この二つの戦略の使い分けることが現実的な戦略だと思います。前者は「深刻な問題」に対し、後者は「それほど深刻ではない問題」に対し有効です。例は、前者は戦争や医療、後者は娯楽や恋愛です。
『失敗の本質』は日本軍の大東亜戦争(注:『失敗の本質』では、戦場が太平洋地域にのみ限定されていなかったという意味でこの呼称が用いられている)における敗因について研究された本ですが、その内容が驚くほど企業組織の問題にも当てはまりますね。
野中郁次郎(のなか いくじろう) 1935年東京都生まれ。1958年早稲田大学政治経済学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校経営大学院にてPh.D,取得。現在、一橋大学名誉教授、日本学士院会員、中小企業大学校総長。2017年カリフォルニア大学バークレー校経営大学院より「生涯功労賞」を受賞。ピーター・F・ドラッカー伊藤雅俊経営大学院で特別スカラーも務めた。知識創造理論を世界に広めたナレッジマネジメントの権威として世界中のビジネスリーダーに多大な影響を与え、知識創造理論は多くの組織経営に応用されている。主な著書に『失敗の本質』(共著、ダイヤモンド社)、『知識創造企業』『ワイズカンパニー』(いずれも共著、東洋経済新報社)、『野性の経営』(共著、KADOKAWA)など多数。
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