シカゴIMM通貨先物ポジションの推移から為替市場の全体的な状況と投資マインドを読み解きます。
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部 中村勉
目次
ドル/円
IMMポジション ドル/円
ポイント
【円ネットショート減少】
1月21日時点で円のポジションは、ドルに対して約1.5万枚の売り越し(ネットショート)。
ショートが大幅に取り崩されたことから、ネットショートは前週から約1.5万枚減少。
期間中のドル/円相場は、植田総裁が「来週の決定会合で利上げを議論」などと発言したことなどを材料に、一時154.75円前後まで下落。
23‐24日の日銀金融政策決定会合での追加利上げを急速に織り込む形となり、投機筋は円ショートポジションの調整に動いたようだ。
ユーロ/ドル
IMMポジション ユーロ/ドル
ポイント
【ユーロネットショート微増】
1月21日時点でユーロのポジションは、ドルに対して約6.2万枚の売り越し(ネットショート)。
ショートの積み増し度合いがやや大きかったことで、ネットショートは前週から約0.2万枚増加。
期間中のユーロ/ドル相場は、トランプ米大統領が就任直後に対欧州の関税政策を発表せず「検討中」としたことから、1.04ドル台前半まで買い戻された。
米国による即時の関税賦課は免れたものの依然として関税への警戒度は残っている。また、ドイツの景況感が低下したため、ユーロ/ドルが上昇したにもかかわらず、投機筋はユーロ先安観をいくぶん強めたようだ。
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IMMポジション
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外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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大口投資家の動向は ドル円 日銀利上げ観測で下落
まずメキシコやカナダといった隣国に対して、2月1日より25%の関税をかけるとトランプ大統領が発言しています。ただこれは初めて言われた内容ではなく既出だったので、ドル高や株安へのマーケットへの影響は小さいと思います。ただし2月1日と具体的な日付と本気度が伺えることで、交渉材料ではなかったのかというので、メキシコペソやカナダドルの下落につながっています。この関税に対し、カナダ大統領は「報復する考えがある」と強気な姿勢を示し、メキシコ大統領は「丁寧に対応していく」とカナダ大統領とは相対的な反応を示しています。
前週末24日のドル円は下落でクローズ。安値154.82をつけてから終値155.97と、2営業日連続で円買いののち週の取引を終えた。
24日に材料視される目立った経済イベントはなく、米時間には様子見の姿勢も見られた。米10年国債利回り(米長期金利)は上昇となり、これによる日米金利格差の拡大観測を背景にドル買い・円売りが出る面もあった。
シンガポールのオーバーシー・チャイニーズ銀行のFXストラテジスト、クリストファー・ウォン氏は「市場にとってのリスクは、ハト派的な利上げだ。ドル・円相場の下落がより抑制されることにつながる可能性があるからだ」と、リポートで分析した。
「黄金時代の幕開けだ」で始まったトランプ大統領のスピーチですが、これは大口を叩いているのではなく、リアルにこの4年間でアメリカ一強時代が到来する可能性は高まっています。それは現在の産業の強さだけでなく、豊富な資源や軍事力など、多くの点で優れています。現在は大インフレ金利時代が始まったかと思える環境で、米経済の強さが米金利を高止まりさせ、それが世界中の金利環境に歪みを与えており、「アメリカが利下げしたから私も利下げしやすい」と思わせている時点でリーダーでしょう。
日米金利差は2022年後半や2023年後半に4%をピークに金利差の拡大は落ち着いていますが、昨年7月に162円を付けて為替介入が行われたように、日芸金利差の乖離ではなく、日米金利差がドル円買いに影響していることが分かります。
1月25日(金)、日銀は0.25%の利上げを決定し、政策金利は17年ぶりの金利水準となる0.5%となりました。BOJは1月24日(木)から行われるはずですが、23日には”利上げが決定”との報道があり、日銀発表時には利上げを織り込んだ状態でBOJを迎えましたので、利上げが発表されても円安ムーブになる可能性が言われていました。しかし実際の動きとしては、利上げ発表直後は円安乏しく、2025年度の物価見通しが上振れたことで、さらなる利上げが観測され、一時は円高になりました。
では日本株はしばらくのレンジを大きく超え、今後も安定して上昇できるのかというと正直”怪しい”です。将来的な利上げや8月に予定される参院選の不確実性は買い意欲を低下させますので、あまりぱっとしない日本株を念頭に、上振れた日本株の上昇を祈っています。上昇可能性はありますが、お祈りです(笑)。今後ドル円上昇したり、米国株の上昇したりと、サポートされながら上昇していく可能性もありますが、楽観的にもなりきれないことは重要な視点だと思います。
利上げを理由にドル・円相場がさらに下落すると見込んでいた投資家にとっては、期待外れに終わるかもしれない。
そして昨年FOMC12月に利下げしましたが、2025年利下げが4回→2回に変更、また利下げの小休憩が想定されています。また、今回日銀が利上げしましたが、連続的な利上げは考えにくいことから、トレンドとして日米金利差の縮小が埋まりづらいと考えています。特に日本金利はある程度上昇していることから、米金利の低下が織り込まれた後はドル円のトレンドに戻りやすいので、そのタイミングでのドル円買いはチャンスではないでしょうか。
日本はインフレのタイミングによって世界とは異なる政策金利の方向性を持っています。米国は利下げ方向に対して日本は利上げの方向です。しかし、安定したインフレを誘導するという方向性は同じであり、日米ともにインフレが2%に近づきつつある状況においては、そろそろ日米ともに一旦の金利変動が落ち着くと考えています。今回日本が利上げして0.5%になりましたが、米国は未だ4.25~4.50%と高い水準にいます。ここで日米金利差の推移を見てみましょう(下図)。2022年の利上げ以降日米金利差は大きく開いており、これが慢性的なドル円買いに寄与していると考えられています。
日銀は昨年7月の利上げ後のショックから、市場とのコミュニケーションを大事にしており、特に慎重すぎるほど利上げを織り込ませ、利上げしても緩和的な状況だということも強く言及してきました。その結果日本株は利上げ後にも上昇しており、長く続くレンジの上限あたりに位置しています。
日銀当局者からの先週のタカ派的な発言を受けて、スワップ市場は24日の0.25ポイント利上げをほぼ確実視している。利上げ想定が織り込まれたことで、ドル・円の下落傾向は止まった。今週に入ってからは、50日移動平均付近のサポートラインを突破できていない。
トランプ政権は関税で財政逼迫を解消させ、減税をしやすい環境を作り、関税はアメリカ自国の生産も強くしようとしています。これらがもたらすいインフレリスクは原油価格でのコントロールしたいとみています。それならば、アメリカは生産して輸出量を増やすことになりますので、ドルは安い方が都合がいいのです。トランプ氏はFRBに対して利下げを要求するコメントをしていますが、FRBは政府とは独立しており、トランプの言いなりになってインフレがコントロールできなければ、後の祭りです。トランプ氏の発言で相場が動くことは多くても、それがトレンドに影響するかどうかは区別することが大事になっています。なんとなくトランプさんがしたいことが見えてきたのではないでしょうか。
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