米国との関係が短期的な波乱要因
いよいよトランプ政権がスタートしたことで、この政権との付き合い方がメキシコ経済とペソにとって重要な材料になる。就任直後の関税発動が回避されたことでペソは1%ほど上昇した。しかしトランプ大統領が2月1日にカナダとメキシコからの輸入品に対して25%の関税を課すことを検討していると発言すると下落した。 トランプ大統領は不法移民と薬物流入を理由に関税を主張している。しかしこれはトランプ氏得意のディールであり、メキシコとの不法移民や薬物流入に関して何らかの合意が成立する可能性はある。その場合は関税回避や関税がかかったとしても小幅となる可能性がある。トランプ第一次政権の2019年も交渉の結果で関税賦課は回避された。
シェインバウム政権の取り組み
シェインバウム政権は1月13日にプラン・メキシコという経済計画を発表した。13項目からなり総額2770億ドルにのぼる2000件の国内投資計画をまとめた。主なものに現在は世界12位のメキシコのGDPを世界10位に押し上げる、GDPに占める投資の割合を25%以上に高める、150万の新規雇用を創出するなどがあげられる。 このほかに重点産業(繊維・履物・家具・玩具)のサプライヤーおよび国内消費の50%をメキシコ国内で自給するというものがある。これは中国からの輸入が多いものの比率を引き下げていくという計画になっている。
政権は12月に衣類や繊維製品など中国からの輸入のシェアが高い品目の輸入関税を引き上げた。また1月に入り宅配による小口貨物に対して関税を導入した。これは中国のEC大手のSheinやTemuなどをターゲットとした政策である。
これらはトランプ政権に対して中国からの輸入削減を行っているというアピールになっている。また米国への不法移民や薬物の流入の取り締まりも強化しており、メキシコ籍の移民の送還の受け入れも示している。
このようにトランプ政権に譲歩を示すことにより関税回避を狙っており、これにトランプ大統領が完全に満足するかどうかはわからないが、ある程度の譲歩は引き出せそうだ。
金融政策
メキシコ中銀は12月に0.25%利下げを行い政策金利を10%とした。これで4会合連続の利下げとなっている。
声明では今後の数会合で政策金利の大幅な下方への調整が決定される可能性があると利下げ継続の可能性に言及している。
12月のCPIが前年比4.55%から4.21%に低下したこと、30日に発表される10~12月期のGDP成長率速報値は前期比0.2%減少でマイナス成長になるという予想がある中で0.5%の大幅利下げの可能性も残っている。
メキシコペソの予想
ドルペソは1月17日に20.933付近の高値まで上昇後、1月24日に20.129付近まで下落し、これが今月のレンジになっている。昨年11月に20ペソを上抜けして以来20ペソがサポートとなり20~20.933のレンジが続いている。ドルの高値圏ペソの安値圏にいるが、トランプ大統領就任後も21ペソのレジスタンスは維持されており、ペソ安が加速しているわけではない。
トランプ氏との交渉がうまくいき関税回避、あるいは低い関税率であればペソが上昇する可能性もあるものと思われる。その場合は20ペソを下抜けする場合は19ペソ付近への下落を予想する。一方で交渉がうまくいかない場合は22ペソ付近への上昇を予想する。
1月のペソ円は7.42~7.79円のレンジで推移している。7.55~7.6円付近に25日移動平均線、75日移動平均線、一目均衡表の転換線、基準線などが集中し、このレベルを中心としたレンジが続いている。昨年10月以降7.3~7.8円のレンジが続いており、関税問題の決着がつくまではこのレンジが予想される。
【メキシコペソ/円 日足】
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新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。

YEN蔵 氏
株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。YouTubeなどで個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。
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メキシコペソ 月間為替予想 メキシコペソの重要局面トランプ関税問題の決着つくまで73-78円のレンジ継続か
こうしたことから、陳さんは、メキシコペソ円の今週のレンジについては、『9.00円~9.40円』と予想しています。
陳さんはまず、『メキシコペソ円は、日墨の金利差を背景に押し目買いが継続し、急落の後の値固め局面となろう』と述べています。
ドルメキシコペソは大統領選開票で付けた20.80ペソ前後が重くなっており、昨日海外市場は20.60台から20.40割れを付けた。その後格付け大手ムーディーズが同国の格付け見通しを安定的から引き下げたことで、いったん20.50超えまで買われた。
続けて、『先週末の東京時間に、イランの首都南部やシリア、イラクで同時多発的に爆発音が複数観測されたとの報道が流れ、イスラエルによる報復が開始されたと観測された。イランの核関連の事施施設が攻撃を受けた可能性もあるとの見方から、市場は一気にリスクオフに転じ、有事のドル買い、円買いが起こり、その影響でメキシコペソ円は9.0円から一気に8.38円まで、およそ1.2%も急落した』と伝えています。
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