JR東日本からドクターイエローは姿を消すことになります
東海道・山陽新幹線の黄色い新幹線「ドクターイエロー」。正式には「新幹線電気軌道総合試験車」というこの車両は、東海道・山陽新幹線の電気設備や軌道(線路)の状態を走りながら確認できる、「新幹線のお医者さん」のような存在です。
ドクターイエローの歴史は、1962(昭和37)年10月、まだ東海道新幹線が鴨宮モデル線で走行試験を行っていた時代に製造された「4000形新幹線用軌道試験車」に始まります。丸みを帯びた箱のような形をした車両で、911形電気機関車などに牽引されて、最高時速160キロで軌道の狂いや動揺などを検測できました。全長18メートルの車体に3つの台車を履き、それぞれの台車の物理的な変位を計測することで、軌道の状態をチェックしていました。
そして、東海道新幹線が開業30周年を迎えた直後の1994(平成6)年12月、JR東海が発行するビジネス雑誌「Wedge」に、PR記事「トロリ線・軌道を見つめる試験車『ドクターイエロー』」が掲載。この時から、「ドクターイエロー」はJR公認の愛称となりました。
ドクターイエローはJR東海とJR西日本が1編成ずつ所有し、東京―博多駅間を約10日に1回の頻度で往復している。車両の老朽化などを理由に、JR西も27年以降をメドに引退する方向。JR東海の車両は引退後、同社が運営する鉄道車両の博物館「リニア・鉄道館」(名古屋市)に展示される予定となっている。
なお、東北・上越新幹線で使用された925形は、1996(平成8)年、50-60ヘルツ両対応や30パーミル勾配対応といった長野新幹線向けの改造を受け、1997(平成9)年の高崎~長野間開業後は同区間の検測も担当しました。しかし、2001年に新型のE926形「East i」が登場すると、S1編成は2002年、S2編成は2003年に相次いで引退。JR東日本からドクターイエローは姿を消すことになります。
現代の新幹線のイメージから離れたシンプルなデザインの車両でしたが、事業用車両であることが一目でわかるよう、車体を国鉄指定の塗色である黄5号で塗装し、青15号の帯を配置しました。これが、現在に至る「ドクターイエロー色」のルーツとなります。黄5号は、首都圏の中央・総武緩行線の路線カラーである「カナリアイエロー」と同じ色。また青15号は、20系特急型寝台客車をはじめ当時の最新型車両に多く使われた色でした。
また、この年は東北・上越新幹線向けの電気軌道総合試験車として925形S1編成が新製されました。東北・上越新幹線初の営業用車両である200系の試作車に当たる962形をベースに設計された車両で、検測機器の配置は922形20番代とほぼ同一ながら、アルミ車体と、雪対策で床下までを覆うボディマウント構造を採用しました。ただし、軌道検測車の5号車921-41だけは従来と同様普通鋼製。これは、柔らかいアルミ車体は走行中に車体がわずかに変形してしまい、3つの台車の位置を正確に検測できないためです。また、S1編成は200系などと同じクリーム色10号と緑14号の東北新幹線色で登場しており、当初は「ドクターイエロー」ではありませんでした。東北・上越新幹線開業後の1983(昭和58)年には、962形を改造した925形10番代S2編成が登場。この時、S1編成を含めて黄5号+緑14号の配色が採用されました。
こうしてスター的存在となったドクターイエローですが、T4編成は製造から約25年が経過し、惜しまれながら引退することになりました。JR西日本所有のT5編成は2027年頃まで使用される予定で、まだもうしばらくはその活躍を見ることができますが、T5編成の引退後は営業用車両のN700Sに搭載された機器で営業運転を行いながら検測する方式に変わります。
ドクターイエローの廃止を惜しむ声は多い。しかし営業車両で線路を常時監視する新しいシステムにより、新幹線の安全性はさらに向上するなどメリットは大きい。既存サービスの刷新や新しい観光列車の運行、そしてリニアなど、JR東海をめぐる話題はたくさんある。これからも同社の取り組みに注目していきたい。
名古屋市中村区の河川敷には、ドクターイエローを見送ろうと多くの人が集まっていました。
1月29日午後4時頃、JR名古屋駅の新幹線ホームには、人だかりができていました。カメラを構え待ち受ける中、「ドクターイエロー」が現れました。
JR東海が所有するドクターイエローの引退が迫った1月19日、福岡市博多区のJR博多駅山陽新幹線ホームには多くのファンが集まっていた。スマートフォンで写真を撮る人や、子供を抱く親の姿もあった。
1998(平成10)年8月、JR東海は、新型ドクターイエローの開発に着手することを表明します。T2編成はJR東海が、T3編成はJR西日本が承継していましたが、どちらも老朽化が進んでいたうえ、1992(平成4)年に時速270キロ運転を行う300系〔のぞみ〕が登場し、922形はダイヤに合わなくなっていたからです。新しいドクターイエローは、当時先行試作車が試運転を行っていた700系をベースとし、時速270キロでの検測に対応。高速走行に対応するため軌道検測車は全長25メートルの2台車方式となり、軌道の変位測定は台車の物理的な位置ではなくレーザーによる測定に変更されました。トロリ線(架線)の摩耗測定装置も、922形では毎秒1000回行っていたレーザー照射を毎秒1500回に引上げ、従来は58ミリごとだった測定精度を50ミリに高めています。
いよいよ2025年1月にT4編成が引退する、東海道・山陽新幹線の923形新幹線電気軌道総合試験車、通称「ドクターイエロー」。その歴史は、日本の新幹線の歴史とも重なります。ここで、改めてその歩みを振り返ってみましょう。
当然ながら一般人は乗ることができない。検測は東京~博多間を一括して行い、「のぞみ」が走行する線路の検測が10日に1回程度、「こだま」が走行する線路の検測が数カ月に1度程度行われているが、いつ走るかは公開されていない。そのためドクターイエローを見たら幸せになるという「伝説」が生まれた。
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