
本日のNY時間のドル円は、155円台を挟んで方向感がなさそうだ。市場の注目が、通商問題でトランプ米大統領に標的にされている国の通貨に目が向いている。ドル円は通商摩擦悪化による米金利上昇のドル買いと、金利高を嫌気した株安による円買いに挟まれて、方向感が当面は出にくいだろう。
4日発動予定だったカナダとメキシコに対する25%の関税発動は、案の定発動が延期された。延期された理由は複数あるだろうが、関税強化を打ち出すと米株が大幅に売られ、米長期金利も上昇するなど、トランプ米大統領が求めているような結果が導き出せないことが大きな要因。更に第1次トランプ政権時はトランプ米大統領の脅し(ブラフ)が、多くの国に有効に使われたが、隣国(カナダ、メキシコ)ですら対抗策を打ち、脅しの効果が薄くなっている。トルドー・カナダ首相は、「カナダはフェンタニル担当の長官を任命する」という新たな約束をしたことで、トランプ米大統領にも一定の花を持たせたが、そもそも通商問題と全く関係のないフェンタニルを絡ませた交渉自体、トランプ米大統領に一定の成果を持たせる(関税強化を行わない逃げ道を作る)ためとの話も出ている。米国のエネルギー政策を見ても、原油輸入の6割をカナダ、1割をメキシコが担っていることを考えると、米国と両国との関係悪化が進んだ場合は、米国にも大きな痛手しか返ってこない。
本日も自己に注目が集まることを求めているトランプ米大統領が、欧州圏や中国に対して通商問題で過激な発言を発するかもしれない。ただ、本日は週末の米雇用統計の発表の前哨戦となる、12月の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数の結果にも注目したい。市場予想では800.0万件の求人件数という予想になっている。
・想定レンジ上限
ドル円の上値めどは、日足一目均衡表・基準線156.30円。
・想定レンジ下限
ドル円の下値は、昨日安値154.02円。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
見通し NY為替見通しトランプ米大統領のブラフ相場も一服 JOLTSに注目
ただ、トランプ氏の発言でドル円相場改めて円安に動いたことが象徴するように、ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、円安圧力も続きそうだ。日銀が24日に利上げを決めた場合でも、植田氏の記者会見でさらなる利上げについての慎重姿勢が感じられれば、「利上げ打ち止め」観測が円安材料になる可能性がある。またトランプ氏の経済政策が米国の経済活動を刺激することで結果的に物価上昇圧力が強まれば、FRBは利下げへの慎重姿勢を強めざるをえない。米国経済の強さが意識される経済指標が出るなどした場合にも、円安の流れが再燃することが想定されそうだ。
トランプ氏が就任初日の高関税発動を見送ったとみられることで、高関税が物価上昇圧力として働き、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが難しくなるとの見通しは後退した。FX市場では円以外の通貨もドルに対して大幅に強くなっており、ブルームバーグによると、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)は20日のニューヨーク市場の終値で前日比1.39%のユーロ高だった。ポンドの対ドル相場(GBP/USD)も同様に1.31%のポンド高、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)も1.32%の豪ドル高となった。
米国での物価上昇懸念の後退と同時に日銀が利上げに踏み切るとの見方は、日米の金利差が縮小する見通しを強める、ドル円相場での円高要因といえる。ブルームバーグによると、日米の長期金利(10年物国債利回り)の差は20日終値段階で3.437%ポイント。13日には3.586%ポイントまで高まっていたが、縮小方向に動いている。
こうしたFX市場の値動きは、日銀が24日までの決定会合で利上げに踏み切るとの見通しを強める方向に働いた。ブルームバーグによると、日銀の利上げ確率は日本時間21日午後8時台に100%に達する場面もあった。トランプ氏の大統領就任が金融市場の大きな混乱につながらない状況が続いていけば、日銀が利上げに踏み切る環境が整うとの見方があるようだ。
当初の円高進行のきっかけとなったのは、トランプ氏の就任直前、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が初日の高関税発動はないとの見通しを報じたことだ。WSJはトランプ氏が連邦政府に対して、通商政策や中国、カナダ、メキシコとの貿易関係について調査することは命じるが、「就任初日に新たな関税を課すには至らない」とした。
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