元外銀ディーラーで現在はマーケットについて幅広い投資情報を発信する和田仁志氏による為替相場の解説です。2月7日予定の日米首脳会談を前に、マーケットの最新情報や注目点を解説頂きました。
最新のマーケット情報まとめ
1. トランプ大統領関連
– 2025年は年間を通してトランプ色が強い相場になる見通し
– 予測不可能な発言がリスク要因
– 関税政策に注目が集中、しばらく続く
2. 為替政策について
– トランプ大統領は就任後、為替に関する発言を控えている
– 大統領選挙候補のときは「円安批判」などの発言があった
– 大統領2期目で経験を積み、不用意な発言を避けている様子
– 米国の為替政策はベッセント財務長官が担当
– ベッセント氏は「強いドルはアメリカの利益」という基本的立場を維持
– 具体的な為替レベルへの言及は少ないのでは
3. 今後の注目点
– 日米首脳会談での為替に関する発言の可能性
– 仮に円安についての発言があった場合は、相場は瞬間的に大きく動く可能性あり。
-しかし、為替の方向性を大きく変える可能性は低い
<結論>
2025年の市場は「トランプで始まり、トランプで終わる」可能性が高い。日本の政治的影響力は限定的で、米国の政治動向が市場を主導する見通し。特にトランプ大統領の発言や政策が、引き続き市場の主要な変動要因となることが予想される。
お知らせ
2/5に開催した和田氏セミナーはコチラで録画を視聴できます。
『最新のドル/円相場を解説』
経済指標・イベントの結果について
主要な経済指標・重要イベントの結果について、最新情報は外為どっとコムサイトの「経済指標カレンダー」で確認できます。
お知らせ:FX初心者向けに12時からライブ解説を配信
外為どっとコム総合研究所の調査部に所属する外国為替市場の研究員が、FX初心者向けに平日毎日12時ごろからライブ配信を行っています。前日の振り返り、今日の相場ポイントなどをわかりやすく解説しています。YouTubeの「外為どっとコム公式FX初心者ch」でご覧いただけます。

1968年長野県生まれ。立命館大学卒業後、米シティバンク・英スタンダードチャータード銀行で十数年間に渡りインターバンクディーラーとして一線で活躍。その後は、証券会社などで外国為替証拠金業務を立ち上げるなど、当業界にも精通している。2006年8月からはニューヨークからホットな金融情報を提供する。グローバルインフォ代表取締役社長を経て、2017年8月よりDZHフィナンシャルリサーチ常務執行役員に就任。
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ドル円予想 トランプ 口先介入
そして、米連邦公開市場委員会(FOMC)が終わってパウエル議長の会見も終了した5月2日の木曜日、日本時間の午前5時過ぎに再びドル円は急速な円高・ドル安が進行し、153円ちょうどのレベルにまで一気に水準訂正が起こった。この時刻はいわば薄商いの時間帯であり為替の値動きはほとんど見られない。それを狙いすましたかのように3.5兆円規模の円買いの為替介入を起こしたのだ。本当に誰も予測していない、市場の虚を突く早朝の為替介入だった。もちろん、神田財務官は記者の質問に対しては「ノーコメント」である。
日本政府が2度にわたる不意打ちの為替介入、ドル円は160円から153円に―。
円を買うためには元手となるドルが必要だ。政府保有の外貨準備は今年3月末時点で1兆2900億ドル(約200兆円)ある。もちろんすべてをすぐに介入原資として使えるわけではない。この中で実際に使える規模は3000億ドル程度(約47兆円)と推測される。今回の為替介入で使われた9兆円はその約2割程度に該当する。無尽蔵には使えないが、まだ余力はかなりあるとの見方が妥当だと思う。
米トランプ政権は、カナダとメキシコからの輸入品の大半に25%の追加関税を課し、中国からの輸入品すべてに10%の追加関税を課す大統領令に署名した。
もっとも当面の為替相場の方向感は定まっていない。2024年末時点の円ドル相場予想について聞いたところ、調査期間の相場と同水準の「1㌦=150~155円」が38%と最も多く、「145~150円」が34%で続いた。トランプ氏の優勢や勝利を受けてすでに円安・ドル高が急速に進行したこともあり、一段の円安余地は限定的と考える向きが優勢なようだ。一方、さらなる円安進行を予想する専門家もいる。「155~160円」との回答は26%だった。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、外為市場の予想について「トランプ氏の政策は財政悪化をもたらすため、悪い金利上昇につながるという見方がある」と指摘する。日銀の金融引き締め方向の政策姿勢も相まって、中長期的には現状のドル高・円安圧力は弱まっていくとの見立てだ。また年末にかけてドル安・円高が進みやすい季節性も意識されている可能性があるという。
しかし、それは一瞬の出来事だった。急激な円高・ドル安が起こり14時には155.04円と一気に5円もの円高となった。米国の高い経済成長率、高インフレ、高金利という揺るぎなき「3高」の状況に加えて、植田総裁による円安容認発言で投機的な円安が演出されたのも束の間、いや、むしろそれを狙いすましたかのように日本市場が休場という薄商いの時間帯を狙って政府による為替介入が行われた。為替介入の指示を出すのは財務省であり、その実行役を担うのが財務官だ。その要職にあるのが神田真人氏である。突然の円高・ドル安により、神田財務官の元には多くの報道陣が駆け付けた。
7日の東京外国為替市場で、円相場が一時1ドル=150円台をつけ、2024年12月以来約2カ月ぶりの円高水準となった。日本銀行の利上げが今後さらに進み、日本と米国の金利差が縮小するとの観測が高まり、円買いドル売りの動きにつながった。
ほかにも、①トランプ減税、②化石燃料使用に寛容なところ、③イスラエル支持で中東情勢が緊迫化しそうな側面、④移民の強制送還、などなどいずれもインフレ要因と見られる。インフレになると、FRBは利下げが進めにくくなる。この思惑が中長期金利の高止まりを招き、ドル高を引き起こしている。
筆者は、1月のトランプ就任前後にさらに米長期金利が上がって、ドル高・円安が進むと警戒している。ドル円レートは、2024年7月上旬につけた1ドル161円台にまで接近する可能性があるとみる。そこに至るまでに、おそらくは通貨当局による口先介入があって、一時的な膠着状態が起こるだろう。それでも、トランプ要因でのドル高圧力の方が大きな作用なので、円安への流れは止まらないとみる。
どうして政府は追撃の為替介入を行ったのか? それはFOMC後に開かれたパウエル議長の記者会見での問答にヒントがある。昨今の米国の経済好調&インフレ継続を受けて「利下げは急がない」「とは言え、利上げをする可能性も低い」とパウエル氏が強調したことで「日米金利差が拡大して再び円安・ドル高が加速するのでは…」という市場のコンセンサスが形成されつつあるところに、「そうじゃない!」という否定の爆弾を投げ入れた格好となった。これまで政府は鈴木俊一財務大臣による度重なる口先介入で円安・ドル高を牽制していたが、その本気度を測りかねていたところに植田日銀総裁による円安容認発言が飛び出したために、政府の口先介入が軽々しくあしらわれている感があった。それを一気に覆す動きをゴールデンウィーク中に起こしたのである。
トランプ氏はドル高を問題視する姿勢を鮮明にしている。しかし関税引き上げをはじめ、トランプ氏の掲げる政策はインフレ圧力につながるとの見方が多い。トランプ氏の優勢が伝わるにつれて進んだ「トランプ・トレード」では、米金利の上昇に伴いむしろ円安・ドル高が進んだ。外為市場では、トランプ氏のドル安志向よりも、実際の政策が為替相場に大きな影響を及ぼすとみている。
午後5時点では1ドル=151円83~85銭で、前日から74銭の円高水準となっている。
とは言え、今回の市場の虚を突いた政府の為替介入は円安牽制には効果的な演出だったと私は思う。歴史的円安、しかも投機的に作り出された円安に警告を与えた。この原稿を執筆しているのは5月3日(金)22時であるが、ドル円は152円ちょうどのレベルまで円高が進んでいる。今後の方向性は「米連邦準備理事会(FRB)は利下げ、日銀は利上げ」になるのは間違いなく、日米金利差は縮小することが予想される。要するに円高・ドル安の力学が働く。それを事前に強制的に市場に促したのが今回の為替介入ではないだろうか? 160円もの円安が続けば、せっかくいい形におこなわれた企業の賃上げ効果は帳消しになり、日本経済にコスト高となりマイナス面が大きい。それを修正してくれたのが今回の為替介入である。
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